第2節 関連政策

 国家ハイテク産業開発区に関連する主な政策については、開発区の環境整備、入居中企業への多様なサポート、及び入居する国家ハイテク企業の認定などが存在するが、国家ハイテク産業開発区の中には、国家ソフトウェアパークや、国家インキュベータなどが設けられているところが多く、これらに関連する政策も多数存在する。しかし、本報告書ではあくまでもサイエンスパーク・ハイテクパークの制度ごとに説明することとし、例えば国家ソフトウェアパークなどに関する内容は後掲する個別の章に取りまとめた。

図3.1 国家ハイテク産業開発区に関する主な政策

図3.1 国家ハイテク産業開発区に関する主な政策

出典:技術経営創研

 総論で述べたように、国家ハイテク産業開発区の設立は中国「タイマツ計画」と言う重大政策の基幹的な内容の一つである。1999年8月11日、中国科学技術部は「国家ハイテク産業開発区の発展の加速に関する若干の意見」を発表し、①新たな時期における発展の戦略目標と任務、②創業環境の更なる整備、③創業サービス体系の更なる改善、④人的なリソースの開発、⑤オリジナルの知的財産権を持つ技術型中小企業への支援、⑥国際交流や国際連携の推進、⑦マネジメントの強化について論及した。

 このような考え方の下で、「中関村サイエンスパーク条例」[1]のように、各開発区が該当地域の条例などを制定し、国家ハイテク産業開発区の運営に当たった事例もある。中関村サイエンスパーク条例は、国家ハイテク産業開発区の建設と持続的発展を促進するための地方法規としては中国初の立法であり、以下の3点について規定している。

 ①中関村地区でのベンチャー投資やイノベーション資金の確保、人材の誘致、知的財産権の保護、環境整備や建設計画の制定など、さまざまな形で同開発区の健全な発展を促進する、②国際的な経済協力や技術協力を促進し、政府による業務を規範化することにより、開発区の管理システムを整備する、③市場の主体と競争メカニズムについて規定する、といった内容である。

 この中関村サイエンスパークの発展を目的とした立法は、北京市人民代表大会の代表らの呼びかけにより検討が開始された。2000年に開催された第11期北京市人民代表大会・第3回会議の席上、代表79人が関連法規の速やかな制定を要求する4つの議案を提出した。同条例(草案)の制定作業に当たり、北京市政府は55の部門から意見を求めた他、さまざまな形の座談会を41回開催した。2000年12月8日に「中関村サイエンスパーク条例」は第11期北京市人民代表大会常務委員会第23回会議の審議を通過した。2001年1月1日に、「中関村サイエンスパーク条例」が施行され、北京市にとっては新世紀第1番目の施行法規となった。

 国家ハイテク産業開発区に関連する主な政策を述べるに当たり、同開発区の主体的な存在の「国家ハイテク企業」の認定に関する政策に触れる。1996年には、中国「国家ハイテク産業開発区外ハイテク企業認定条件及び弁法」、2000年には、中国「国家ハイテク産業開発区ハイテク企業認定条件及び弁法」が策定された。2007年現在、その認定を受けた国家ハイテク企業は2万1517社に上り、前年同期に比べ2356社の増加となった[2]

 どのような企業が「ハイテク企業」として認定されるかについては、中国外資政策の転換やイノベーション政策の策定に伴い、中国科学技術部、中国財政部、中国国家税務総局が2008年4月14日に共同で発表した「ハイテク企業認定管理弁法」に重要な変化が現れ始めている。その最も重要な特徴は「企業自らの研究開発及びイノベーション能力」を中心として認定されることにある。

 具体的には、①その企業が従事している研究開発や生産経営活動は国が重点的にサポートするハイテク分野[3]に属する範囲内であること、②自らの持続的な研究開発力を有し、核となる知的財産権を有すること、③企業の主要事業が前述した研究開発及び成果の転化と密接な関係にあること、である。単純にハイテク製品の生産に従事し、研究開発機能を持たない企業は、今後、ハイテク企業として認定されることはないであろう。

 ハイテク企業認定管理弁法はOECD、アメリカ、韓国などの経験を参考にしながら、中国の現状を踏まえて関連の評価指標や判断基準の明確化を図ったものであり、同弁法の施行によって「ハイテク製品目録」が廃止されることになった。これは、ハイテク製品を生産していることによって「ハイテク企業」と認定された時代は終わり、自ら研究開発などを行い、その上で関連の評価指標などの基準を満たしている企業であって、はじめて「ハイテク企業」として認定されうる、と言う時代に入ったことを意味している。


[1] 2008年9月、北京市政府の公式HP「首都之窓」は「中関村サイエンスパーク条例」の修正草案を公開し、各界から意見を募った。この条例では、優秀な人材を確保するため北京市の「常住戸籍」の取得制限を大幅に緩和することや、中関村で働く人の子供について、義務教育では国家や同市の規定する費用以外は徴収しないこと等を規定した。その他、銀行からの融資を受けられない中小企業に対する援助策として、米シリコンバレーを参考に小額ローン等を扱うインキュベータを設立し、中小規模のハイテク企業やベンチャー投資機関向けの金融サービスを提供するとしている。

[2] 中国科学技術部「科技統計報告」No.21(2008年12月16日)。

[3] 中国が国として重点的にサポートするハイテク分野」は以下に述べる8分野である。すなわち、①電子情報/IT分野、②バイオ及び新薬分野、③航空宇宙産業、④新材料分野、⑤ハイテクサービス分野、⑥新エネルギー及び省エネルギー分野、⑦資源と環境分野、⑧ハイテクを用いた伝統的な産業の改造等の分野である。詳細については、http://www.jctbf.org/jp/CHBW/link.0.04.1.20.htm


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