第1章 中国ハイテクパーク・サイエンスパークの全体像
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第3節 基盤的なパークから多様な関連パーク等の誕生への発展

 中国における国家級のサイエンスパーク・ハイテクパークの設立は、各地での国家ハイテク産業開発区の設置によって始まった。その後、前述した政策の下に、地域的な優位性を生かしながら、国家ハイテク産業開発区の地域内、あるいは、地域を別にしても密接な関係を持ちながら、国家ハイテク産業開発区と言う基盤的なパークから多様なサブパークまたは関連パークへと発展してきた。

 中国政府は「改革・開放」策を打ち出してから、深センや珠海などを「経済特区」に指定し、従来の計画経済の体制下では不可能であったさまざまな実験を行った。そして、そこで成功した経験を他の地域へと広げていくことにより、経済発展が点から線、線から面へと漸進的に拡大していった。設立の目的や取り組む分野などは異なるが、中国における国家級のサイエンスパーク・ハイテクパークの設立、拡大、発展の経緯にも同様の形態が見られる。

 後述するように、これらパークは、必ずしも同一の政府機関により認定または承認され運営されているとは限らない、と言う点に留意が必要である。

表2.5 サイエンスパーク・ハイテクパークの誕生時期
時期 名称 備考
1991年 国家ハイテク産業開発区  
1995年 国家特色産業基地  
1995年 国家ソフトウェアパーク  
1999年 国家インキュベータ  
2000年 国家帰国留学人員創業パーク 認定方法は非公開
2001年 国家大学サイエンスパーク  
2005年 国家バイオ産業基地 認定方法は非公開
2005年 国家知的財産実証パーク  
2006年 国家イノベーションパーク 特定の制度はない
出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(2008年12月)

 ここで言う多様なサブパークとしては、まず、国家ハイテク産業開発区自身がサブパーク化して作られたものがある。国家ハイテク産業開発区のほとんどは、その中に「子園」(サブパーク)を設けている。例えば、情報産業サブパーク、バイオ製薬サブパーク、研究開発サブパーク、生産販売サブパークといった名称であり、あるいは、「子園」と明記がなくても実質的にそのように設置されている。一方、多様な関連パークは、異なる認定機関により新たに設立されたパークである。例えば、国家発展改革委員会の認定を得て設立された国家バイオ産業基地、国家人事部などの認定により設立された国家帰国留学人員創業パーク、国家知識産権局により認定された国家知的財産実証パークなどである。

 国家ハイテク産業開発区によっては、無錫国家ハイテク産業開発区のように、設立された後、中国科学技術部の認定手続や地方政府のルールに従って、その面積が拡大されたものも存在する。このような場合、現地では「無錫国家ハイテク産業開発区」の外に「無錫新区」と言う表現が用いられる場合も多い。また、拡大の方法は、同一の地域を原点とした拡大と、上海張江国家ハイテク産業開発区のように、張江地域と直接繋がっていない異なる地域に新たに設けられると言う事例も実在する[1]

 下表に、2008年12月現在で確認された類型別のパーク数を取りまとめた。基盤的なパークと関連パークとの関係で見れば、例えば、次章から説明するように、国家ソフトウェアパークのほとんどが国家ハイテク産業開発区の中に設けられており、国家知的財産実証パークの多くは国家ハイテク産業開発区そのものである。他方、国家特色産業基地と国家インキュベータは国家ハイテク産業開発区の外に設けられるケースが多い。

表2.6 中国におけるサイエンスパーク・ハイテクパークの類型
No 名称 基地数 資料参照先
1 国家ハイテク産業開発区 54 個表
2 国家大学サイエンスパーク 62
3 国家バイオ産業基地 22
4 国家イノベーションパーク
5 中外共同運営国家ハイテクパーク
6 国家特色産業基地 172 リスト
7 国家ソフトウェアパーク 29
8 国家インキュベータ 198
9 国家帰国留学人員創業パーク 21
10 国家知的財産実証パーク 27
出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(2008年12月)

[1] 本報告書の調査対象である10種のサイエンスパーク・ハイテクパークの具体的な構成や面積、または立地については、把握した範囲内での参考情報として、後掲資料に取りまとめた。