第4章 国家バイオ産業基地の現状
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第1節 概要

 2005年10月、広東省深セン市にて開催された「第7回中国ハイテク成果博覧会」において、国家発展改革委員会は第1次国家バイオ産業基地として石家庄、深セン、長春に対する承認式を行った。続いて、2 006年6月、河北省石家庄市で開かれた「第1回中国バイオ産業大会」において、同委員会は北京、上海、広州、長沙、重慶、青島、成都、昆明と武漢の9つの国家バイオ産業基地の設立申請に対し承認書を授与した。2 008年12月現在、同委員会が認定した「国家バイオ産業基地」は延べ22カ所に達した。

図5.1 中国ハイテク産業におけるバイオ産業の位置づけ [1]

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 前掲の図の通り、中国におけるバイオ産業は、中国で言う「ハイテク産業」の重点的な分野の一つである。国家バイオ産業基地は研究開発、生産製造、人材育成の提携を促進する措置を採り、そ れぞれのメリットを十分に発揮し、自主的なイノベーションを高め、人材、資金、業界交流を強化し、国際提携を大きく展開し、バイオ製薬、バイオ農業、バイオエネルギー、バイオ製造(バイオ関連製品の製造)、バ イオ環境保護(バイオ技術を生かした環境保護)などを兼ね備えたバイオ産業を発展させるシステムを徐々に構築することを目的としている [2]

 2008年6月、湖南省長沙市にて第2回中国バイオ産業大会が開かれ、次節で述べる中国「国家バイオ産業発展5カ年計画」で示された基本方針や関連アクションが再確認された。中 国政府がこれまで以上に積極的にバイオ産業に取り組む背景は、バイオが先進産業・先端技術であり、国の産業競争力と技術力の向上に相当な貢献が見込まれることである。また、後述する5カ年計画は「 バイオ産業が発展すれば、医薬面では感染症対策、環境面ではバイオマス(生物資源)活用による環境汚染改善など、各種の社会的効果も期待できる」としている。

 この他、同計画が「世界のバイオ産業は成長段階にあり、まだ少数の多国籍企業による寡占はみられない」と指摘している通り、今、注力すれば、世界の最先端に躍り出ることも可能である。従って、同計画は、全 体的に国産自主技術・自主ブランド育成の色彩が強くなっているとの指摘もある。このような背景で発足した国家バイオ産業基地は、各地の優位性を生かしながら本格的な展開に入り始めている。

 2008年8月5日、国家発展改革委員会は北京で「国家バイオ産業発展専門家諮詢委員会設立大会」を開き、国家バイオ産業発展5カ年計画の効果的な実施、中 国バイオ産業に関連する重大な問題点についての研究強化、政策立案の科学的な信憑性の向上などに資するよう同専門家諮詢委員会を発足させた。


[1] 張輝「中国における創薬特許流通」(文部科学省平成18年度教育推進プログラムの一環として、大 阪工業大学主催で開催された知的財産流通シンポジウム講演レジュメより、2007年12月19日)。

[2] 東方ネット&浦東ネット(2006年6月20日)。尚、国家級のバイオ産業基地ではないが、関連する動きとして、以 下の報道も関係者の関心を集めている。バイオ産業のインキュベータ基地としてはアジア最大となる「中国バイオテクノロジー学術センター」が2006年5月29日、北京で着工した。同センターは、北 京市西部の五輪広場北側に位置し、市中心部を東西に走る長安街沿いにある。延床面積は25万㎡。北京国際信託投資有限公司と科学技術部中国生物技術発展センターが共同で建設する(人民網日本語版」2 006年5月30日)。