第2節 関連政策
2007年4月、中国初の国家「バイオ産業発展5カ年計画」(中国国家発展改革委員会)により、第11次5カ年計画期間(2006~2010年)中のバイオテクノロジー産業発展計画が発表された。ワ クチンと診断試薬、革新的な新薬、漢方薬の現代化、バイオ育種、バイオエネルギーなど9大分野でブレークスルーを遂げ、中国バイオ産業の全体的な優位性と競争力の向上を図ると言うものである。
同5カ年計画では、バイオ産業で次の4大目標の実現を図ることを目指している。
第1に、バイオ産業の発展にプラスとなる政策、法規、技術革新、技術標準、バイオ安全保障、産業組織、産業サービスの各体系をほぼ構築する。
第2に、自主開発能力を著しく高め、産業生産額(付加価値ベース)に占める研究開発費の割合を大幅に引き上げ、独自の知的財産権を持ち、年間売上10億元以上のバイオ技術製品を数多く打ち出す。
第3に、産業構造を最適化し、イノベーション力を持つ中小のバイオ企業を数多く育成し、売上高100億元以上の大型バイオ企業を10社前後育成し、北京・天津・河北省、長江デルタ、珠 江デルタでの総合的バイオ産業基地の建設を重点的に進め、生産額500億元以上のバイオ産業基地を8カ所形成する。
第4に、産業規模を急速に増大させ、2010年にバイオ産業の生産額(付加価値ベース)を5000億元以上とし、輸出額も顕著に増加させる。
これらを基礎とし、2020年には生産額(付加価値ベース)2兆元を突破するとともに、重要なバイオ技術で独自の知的財産権を保持し、バイオ産業をハイテク分野の基幹産業、国民経済の主導産業とする。こ れは先進産業・先進技術の代表とも言えるバイオ、具体的には、①バイオ医薬 [1] 、②バイオ農業、③バイオエネルギー、④バイオによる新素材のなどの製造、及び⑤バイオ利用の環境保護を戦略的に育成することにより、産 業の高度化を図るとともに、同 分野の技術において世界トップレベルの地位となることを狙う戦略である。
また、同5カ年計画は、バイオ産業の対国内総生産(GDP)比の目標を10年で2%、20年で4%以上にすると設定し、国産ブランド育成の国策に沿って、中 国自身が知的財産権を持つバイオ製品の年間売上高を10億元超に高めるとともに、年間売上高が100億元を超える大型バイオ企業を全国で10社育成し、バイオ産業基地を8カ所設けて開発を重点的に推進するなど、同 産業の発展に関していくつもの具体的数値目標や方針を掲げた。
また、政策的な支援としては、バイオ産業を育成するために有効な法令、技術革新体系及び技術標準体系の整備などを実施し、国家機関として、バイオ産業の専門家による諮問委員会も設置した。資 金面での支援については、新たなバイオ産業向け優遇税制の検討に入る他、海外を含む株式市場や債券市場でのバイオ企業の資金調達を後押しし、金融機関に対しても融資を積極的に行うよう求めている。
更に、研究開発と人材についても、大手企業によるバイオR&D機関設置の推進や、各研究機関への支援、産学提携の推進などを謳っている。外国企業が中国本土内にR&Dセンターを設けることも奨励・支 援するとした。
2007年6月26日、中国科学技術部部長・万鋼は「2007年国際バイオ経済会議」(北京)の席上、「中国のバイオ経済振興戦略」は「三歩走(3段階を踏む)」になると述べた(下図参照)。
図5.2 中国におけるバイオ産業振興のための「3つのステップ戦略」
出典:張輝「中国バイオ産業の現状及び日中ビジネスのポイント」(2007年8月7日) [2]
この「三歩走」=「3つのステップ」戦略は具体的に次のような段階を示した。第1段階は「技術蓄積」の段階とし、2010年までに5000~8000億元規模のバイオ技術産業を形成する。第2段階は「 産業振興」または「産業確立」の段階とし、2015年までにバイオ産業の生産高を約1兆6000億元にする。第3段階は「持続的発展」の段階とし、2020年前後に達成させるものとして、バ イオ産業の総生産高を2~3兆元にし、GDPの4%以上を占めるようにするとしている。
[1] 例えば、2006年4月現在、中国食品及び薬品監督管理局は35種の遺伝子組み換え蛋白、治 療性抗体または遺伝子治療用の医薬品の市場投入を承認し、2004年末現在、50種余りのバイオ新薬が臨床前の動物実験または臨床試験の段階にある。胡顕文等「中国バイオ製薬産業概要」国 家発展和改革委員会高技術産業司等編著『中国バイオ産業発展報告』(2006年)。
[2] 張輝「中国バイオ産業の現状及び日中ビジネスのポイント」(経済産業省北海道経済産業局主催セミナー講演レジュメより、2 007年8月7日)。