第4節 蘇州ナノテク国際イノベーションパーク
2007年11月、蘇州工業パークにて、中国科学技術部、中国商務部、及び江蘇省政府の支持の下で、中国科学院と江蘇省科学技術庁が「共同で国家ナノテク国際イノベーションパークを建設する」計画を公表し、中国科学技術部部長も臨席する中で、「ナノテク国際イノベーションパーク」の除幕式が行われた。
2006年に蘇州に設立した中国科学院ナノテク及びナノ生体工学研究所は蘇州において唯一の国家級の研究開発機関である。設立の1年後には、蘇州ナノテク研究所は10余りの特許を出願し、20の科学技術プロジェクトを申請し採用され、多様な研究開発費4000万元を獲得した。もともと中国科学院ナノテク及びナノ生体工学研究所を起点に始まった「国家ナノテク国際イノベーションパーク」は、現在、蘇州工業パークにあるバイオナノテク・サイエンスパークを中心に構想された国家級のイノベーションパークであり、ナノ材料及び機器、ナノバイオ技術とナノ医学、ナノバイオ安全技術などを重要な研究領域にしている。バイオナノテク・サイエンスパークは、86.3万平方mで、研究開発、ベンチャー創業、産業化促進サービスを提供することを目的としている。
ナノテク新材料国際イノベーションパークは5年以内に、3つの世界レベルの産業技術イノベーション連盟、3つの国際連合の重点実験室、3つの国際的エンジニア研究センターを建設し、国内外の上級専門人材300名、一般専門人材3000名を集め、年間生産高が100億元を超えるナノテク産業群を形成し、中国最大のナノテク研究開発及び産業化基地になることを目指している。
2008年7月2日、ロシアのナノテクグループ[1]の社長Melamedが率いるロシア代表団が北京で、中国科学技術部部長の万鋼と中国科学院副院長の白春礼と会見した。両国はナノテク製品生産の共同出資、ナノテクリスクファンドの設立、ナノテク認証と安全基準の問題などについて討論し、両国のナノテク分野での交流と協力を積極的に進めることで一致した後、上海と蘇州のナノテク研究センターとナノテク工業パークを見学し、中国側の科学技術者と広く交流を行った。
蘇州工業パークは、現在、フィンランドをはじめとする複数の国・地域と協力して、ナノテクに関する共同研究や産業化を推進している。ナノテクに関する中国の強さについて、前中国科学院副院長、現国家自然科学基金委員会主任の陳は次のように述べている。
中国におけるナノテクノロジーは、過去10年間にわたり、学際的な研究を展開したことが現在の強みに繋がっている。ナノテクには物理学も化学も材料研究も含まれており、マネジャーとして、スタート当初から共同研究、学際研究の促進を図る必要があると判断し、それが総合的な発展につながった。具体的には、いくつかの研究機関の壁を破ってナノテク研究センターを設立したことが特に大きな効果をあげたと考える。尚、この研究センターには、北京大学や中国科学院などの中国有数の大学も所属している。また、産学協力に成功した例として、中国科学院蘇州産業化研究センターが挙げられる[2]。
このような背景と基盤の上で創設された蘇州国家ナノテク国際イノベーションパークの動向については、引き続き注目すべきである。
[1] グループは、2007年7月、国有企業のロシア・ナノテクノロジーグループとして設立された。目的は、ロシア政府のナノテク政策を実行するためであり、ナノテクの革新的インフラの発展、将来性のあるナノテクとナノテク産業プロジェクトを実施していく。グループの登記資本金は約1300億ルーブル(約55億米ドル相当)である。新華社「ロシア、中国とのナノテクにおける協力拡大を希望」2008年7月3日。
[2] 馬場錬成「中国国家自然科学基金委員会陳宜瑜主任が語った中国基礎研究の展望(上)」JST中国総合研究センターマンスリーレポート、2006年10月20日。