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書籍紹介:『中国デジタル・イノベーション:ネット飽和時代の競争地図』(日本経済新聞出版、2020年9月)

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書籍名:中国デジタル・イノベーション:ネット飽和時代の競争地図

  • 著 者: 岡野 寿彦
  • 発 行: 日本経済新聞出版
  • ISBN: 978-4-532-32358-5
  • 定 価: 2,500円+税
  • 頁 数: 430
  • 判 型: 四六判
  • 発行日: 2020年9月25日

書評:中国デジタル・イノベーション:ネット飽和時代の競争地図

(日中投資促進機構、みずほ銀行理事 岡豊樹)

 米中対立が貿易から安全保障やイデオロギーのステージとなり、世界中で中国系テック企業への関心が高まっている。本書は、中国デジタル実務分野の第一人者である岡野氏の経験と最新の知識に裏付けされた集大成の著作であろう。

 北京や新疆での駐在経験、政府や企業相手に交渉された実績、トップマネジメントとして培われた洞察に留まらず、個々に生じる「違和感」が脚踏実査によって丁寧に潰しこまれている。膨大な知識や情報量を、過去、コロナに直面する現在、そして将来展望という時間軸と、ネットとリアル(あるいはソフトとハード)いう戦略分析の軸を融合させたアプローチに加えて、市場と戦略のわかりやすい俯瞰地図で補うことで理解が深まるように丁寧に工夫がなされている。

 また、話題のBAT(Baidu〔百度〕、Alibaba〔阿里巴巴〕、Tencent〔騰訊〕)からTMD(Toutiao〔今日頭条〕、Meituan〔美団〕、Didi〔滴滴〕)まで個別プレーヤーの戦略がケーススタディとして紹介されているため、特定ビジネスを目的とする企業家や研究者にも役立つであろう。

 特筆すべきは、日本企業が抱える悩みにエールを込めてインプリケーションを示されている点にある。中国プラットフォーマーの成長のジレンマ、戦略第2ステージを模索する彼らの危機感を絶好の機会と捉え、ニューノーマルの今こそ日本企業がもつ優位性、即ち、リアルの強みや品質・組織といったオペレーショナルエクセレンスという武器にこそ光が当たるポジショニングであると言う。

 日中デジタル競争と協業の世界から当分目が離せそうにない。

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