中国のハイブリッド稲、世界に進出

2024年12月11日

　湖南ハイブリッド稲研究センターの検査室に入ると、アツアツの白米が炊きあがっていた。歯ごたえがあり、粒張りがよく甘い後味が広がるこの米が、より多くの発展途上国の食卓にのぼるようになっている。中国新聞社が伝えた。

　ハイブリッド稲栽培は中国で開発が進む農業技術で、国連食糧農業機関（FAO）から発展途上国の食糧不足問題を解決するための最優先技術の一つとして挙げられている。ハイブリッド稲は1979年より五大陸の約70カ国に広がり、海外での栽培面積が約800万ヘクタールにのぼっている。

　ハイブリッド稲は中国以外では、多くが東南アジアや南アジア、アフリカなどの「一帯一路」共同建設国で栽培されている。袁隆平農業ハイテク股份有限公司の紀紹勤副総裁は「稲は生態適応性が低い。中国の高収量品種を熱帯の多雨地帯で直接栽培すれば、深刻な病虫害に見舞われ収穫できない可能性が高い。そのためハイブリッド稲の海外進出では、研究開発を先に行い、現地化育種に注力するべきだ」と語った。

　同社は「ハイブリッド稲の父」と呼ばれる袁隆平院士（アカデミー会員）が1999年に主要創設者となって設立した。商業化育種システムやスマート育種プラットフォームなどを中核とする独自イノベーションシステムを持ち、ハイブリッド稲の市場シェアで世界1位になっている。

　2004年に同社は海南熱帯ハイブリッド稲研究センターを設立。07年よりフィリピンやパキスタン、インド、ベトナムで相次いで研究開発センターを設立し、各国の優良遺伝資源との交配により世界的な「シャトル育種」を実現した。同社のハイブリッド稲34品種が海外での審査に合格しており、フィリピンとパキスタンのハイブリッド稲市場ではシェア1位を獲得している。

「中国種業10人の傑出した人物」に選ばれた隆平ハイテクの楊遠柱首席専門家は「パキスタンは今夏、稀に見る高温に見舞われた。現地の多くの輸入ハイブリッド稲の結実率は5～10％にとどまったが、我々が現地で選び育てた高温に強い品種の結実率は50～60％に達した」と述べた。

　1984年、袁隆平院士は湖南ハイブリッド稲研究センターを創立し、初代センター長に就任した。同センターは現在まで30期以上のハイブリッド稲技術研修コースを実施。80以上の国・地域から2000人以上の専門家・学者・政府関係者が訪れ、交流や研修、学習を行っている。

　湖南省農業科学院副院長で、湖南ハイブリッド稲研究センター党委員会書記の許靖波氏は「センターは近年、マダガスカルと共同で4つの新品種を開発し、2.5～3倍の増産を実現した。現地の額面が最大の紙幣にはハイブリッド稲の模様が印刷されている」と紹介した。

　中国・マダガスカルハイブリッド稲「一帯一路」共同実験室は今年10月に設立が承認され、建設が始まった。袁隆平院士の教え子で、湖南ハイブリッド稲研究センター副主任の李莉氏は「年末には技術チームがマダガスカルに行き、現地の大学と作業を実施する。これはアフリカ向けのハイブリッド稲技術イノベーションセンターになるだろう」と述べた。

　袁隆平院士は生前、しばしば「高く成長したイネの下で涼む」と「ハイブリッド稲を全世界に普及させる」という2つの夢を持っていた。全世界の稲田の半分でハイブリッド稲を栽培すれば、1ヘクタール当たり2トンの増産が可能になり、4億～5億人をさらに養うことができるという。