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1万年前に酒造が行われていた!? 研究者らが謎に迫る

2024年12月18日

 酒造技術の起源と発展の歴史はこれまで解明されていなかったが、中国科学院地質・地球物理研究所や浙江省文物考古研究所、米スタンフォード大学などの研究者が、1万年前の上山遺跡で稲酒造技術が存在した可能性を見出だした。関連成果は「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」にオンライン掲載された。科技日報が伝えた。

 研究者は浙江省浦江県の上山遺跡の出土品に焦点を当て、複数の微化石分析法を利用して東アジア最古の酒造の証拠を発見した。

 研究者は同遺跡で12点の陶器の欠片を採集した。これらの陶器は、発酵や貯蔵、調理などに使われていた。論文の筆頭著者で、米スタンフォード大学教授の劉莉氏は「サンプルの採集後、陶器の機能や食物の加工方法を特定するために、すべての陶器の内側の残留物、陶胎、文化層の堆積物などの微化石抽出・分析を行った」と説明した。

 植物珪酸体分析によると、陶器の残留物と陶胎には大量の栽培化された稲の植物珪酸体が含まれていた。これは上山の人々にとって米が重要な植物資源であったことを意味する。また籾殻と稲葉が陶器作りに用いられており、米が上山文化で中心的な役割を果たしていたことも実証された。

 研究者は陶器の残留物から稲や稗など複数の植物のデンプン粒を発見した。劉氏は「多くのデンプン粒が酵素加水分解と糊化を示していることから、これらの植物が発酵されたことが分かる。さらなる研究により、モナスカス属や酵母細胞など大量の真菌成分を発見した。そのうち一部は典型的な成長・発育段階を示した。これらの真菌は伝統的な醸造酒に用いられる真菌の種類に関連している。例えばモナスカス属は中国の伝統的な紅麹酒の醸造に使われる主要なカビだ」と紹介した。

 研究者がその後、モナスカス属と酵母遺物の異なるタイプの陶器における分布を分析した結果、口の小さい壺に含まれるモナスカス属と酵母の量が、調理器として用いられる壺や一般的な食物の加工に用いられる口の大きい鉢を大幅に上回ることが分かった。これは陶器のタイプと機能が関連しており、口の小さい壺が酒の醸造と発酵に特化していた可能性を物語っている。

 劉氏は「今回の研究は早期の稲酒造の複雑性と革新性を解明しただけでなく、東アジアの稲作農業の起源、早期の社会構造、技術の伝播を理解するための重要な科学的根拠を提供している」と語った。

(画像提供:人民網)

地質地球物理研究所(中国科学院傘下の研究所)
 
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