2024年07月08日-07月12日
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中国海洋大、16年かけて1333ヘクタールの「海底草原」を栽培

2024年07月12日

 海草は陸上植物から進化して海洋環境に適応した高等植物であり、海洋生態系の保護に重要な役割を果たしている。一種あるいは複数種類の海草がまとまって生えており、広大で柔らかい「海底草原」、すなわち海草藻場を形成している。中国山東省威海市栄成市の天鵝湖では、中国海洋大学水産学院の張沛東教授とチームメンバーが16年かけて、黄海・渤海海域で1333ヘクタール余りの海草藻場を修復・保護し、温帯海草藻場生態修復技術メカニズムを構築した。人民日報が伝えた。

 張氏は「草を栽培するためには、事前に大量の調査と試験を行い、海草の生育特性を把握することで、初めて的確な対策を講じることができる。この過程だけで10年間かかった」と述べた。

 天鵝湖畔には小さな中庭があり、その門柱の看板には「山東栄成鰻草科技小院」(以下、「科技小院」)と書かれている。建物内のテーブルには各種試験装置が並び、数人の学生が天鵝湖で採取した植物サンプルを整理していた。教員と学生は海からサンプルを採取するとここに戻り、直ちに試験を行うことができる。

 科技小院にはモーターボートのような形をした長さ約67センチの白いボードがある。よく見ると角に8つの小さな穴が開いていた。

 これは張氏が学生の彭立業さんを指導して開発した「無人播種船」だ。彭さんは「以前は海まで種まきに行っていたが、効率が低く不均等で、種も粘りつきやすく、利用率と活着率が低かった。先生に相談すると、先生は空からの散布を思いついた。人々は砂漠で飛行機を使って木を播種しているのだから、海に種をまく機械も開発できないだろうかと考えた」と振り返った。

 このアイデアが認められると、彭さんは無人播種船の開発に着手した。「粘着を避けるため種に材料をコーティングし、重量を増やすことで波にさらわれるのを防いだ。自動フィーダーを参考にし、8つの穴から種を噴出するようにした。使用の際に人が海に入る必要はなく、岸辺に立って機械を操縦するだけで均等に播種できる」と彭さんは説明した。

 チームの教員は「草を植える」効率を高めるため、学生に対して大胆な模索とイノベーションを奨励している。教員と学生は無人播種機の他にも、独自の知的財産権を持つ複数の海草藻場修復補助装置を開発。作業効率が数倍上がった。

 張氏は「将来的に海草藻場の生態修復と炭素固定・吸収源の増加、グリーン生態牧場、高価値生態製品、漁業・観光・文化などの有機的な組み合わせを試み、生態効果と経済効果のウィンウィンを実現する。炭素固定・吸収源の増加以外にも、一部の修復海域でナマコやカキの養殖を試みている」と述べた。

 中国海洋大学の教員と学生のチームはこれまで、中国国内で10件以上の海底生態修復プロジェクトに参加し、黄海・渤海海域で1333ヘクタール余りの海草藻場を修復・保護してきた。天鵝湖海域の4割以上の海草藻場がすでに修復されており、越冬のために毎年飛来するオオハクチョウの数は最大8000羽以上に達している。

中国海洋大学
 
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