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第28回CRCC研究会「低炭素社会の構築に向けて」/講師:小宮山宏 (2010年4月2日開催)

 科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター(CRC)主催により、4月2日(金)「低炭素社会の構築に向けて」をテーマとする第28回研究会が開催されました。

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 昨年12月コペンハーゲンで開催された気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)は大変な注目を集めました。気候変動、石油資源枯渇などの環境危機の克服は地球全体の課題になっています。今 回は株式会社三菱総合研究所小宮山宏理事長をお招きし、「これらの問題に直面する日本はこれからどうすべきか?」「発展途上の中国とどう協力していくか?」についてご講演いただきました。

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 小宮山氏は1967年東京大学工学部化学工学科を卒業、72年同大大学院工学系研究科化学工学専攻博士過程を修了。博士博士。1988年東京大学工学部教授、2000年工学部長、大学院工学系研究科長、2 003年副学長などを経て、2005年4月に東京大学第28代総長に就任。2009年3月に総長退任後、同年4月から三菱総合研究所理事長、東京大学総長顧問に就任されました。また、2009年12月、科 学技術振興機構(JST)低炭素社会戦略センター長にも就任されました。専門分野は化学システム工学、地球環境工学。主な著書に「地球持続の技術」(99年、岩波書店)、「東大のこと教えます」(2007年、プ レジデント社)、「『課題先進国』日本―キャッチアップからフロントランナーへ」(2007年、中央公論新社)などがあります。

 講演において、小宮山氏は、まず普及型需要と創造型需要について説明されました。車や家、テレビなどの普及型需要は普及し始めると5年から10年で飽和状態に至ります。飽 和状態に至った先進国は途上国に需要を求めますが、途上国でもいつかは飽和に至ります。先進国では内需拡大のために創造型需要の創出が必要になること、日 本は技術のある国だから創造的需要を生み出すべきであること、イノベーションとは現実と理論間のギャップを埋めることであることなど非常に興味深い示唆がなされました。また、有限の地球、高齢化する社会、爆 発する知識という3つのキーワードで代表される21世紀のパラダイムにおいては、新しいニーズに応じた新産業の創出が重要だというお考えを示されました。有限の地球に対しては、エネルギー効率を上げること、つ まり、現在の生活を維持または向上しつつも使用するエネルギーを削減することに努めるべきだという考えを示され、その方法論について説明されました。日本企業は既に開発努力を重ね、日本の製品や製造業、いわゆる「 ものづくり」におけるエネルギー削減はほぼ限界に近いが、一方で、人々の意識や考え方が変わり低エネルギー商品を導入することによって「日々のくらし」におけるエネルギー削減はあと13%可能であること、こ れと他分野での削減を合わせれば、昨年鳩山首相が提唱した25%削減は可能だというお考えを示されました。最後に、小宮山氏が現在取り組んでいるプラチナ構想ネットワーク(プラチナ社会研究会: http://platinum.mri.co.jp/#ie)に ついても説明をされました。

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 講演後の質疑応答では活発な意見交換が行われました。中国総合研究センター角南副センター長の挨拶により閉会いたしました。

 今回の研究会には、民間企業、大学、官公庁、報道機関から200名以上というかつてないほどたくさんの方々にご聴講いただきました。今後とも皆様のお役に立てるような各種研究会を企画、開 催して参りますので、引き続き温かいご支援、ご協力をお願い申し上げます。

(中国総合研究センター フェロー シンジャワ 記)