中国研究会開催報告&資料
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第31回CRCC研究会「中国の海洋開発および大型科学技術インフラ、中国全体のインフラ整備」/講師:工藤君明(2010年4月22日開催)

 科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター(CRC)主催による全4回シリーズの研究会「中国の科学技術力について」の最終回「中国の海洋開発および大型科学技術インフラ、中国全体のインフラ整備」をテーマとする第31回研究会が4月22日(木)JSTにおいて開催されました。

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 人口、および、資源、環境問題は中国が直面している大きな問題です。それらを解決するために、海洋資源の持続的利用、海洋生態環境の保護、気候変動への対応等を目的に中国政府は積極的に海洋調査、海洋開発を進めています。JST中国総合研究センターの2009年度中国科学技術力調査では宇宙開発を重点調査分野の1つとしており、「中国の科学技術力について(ビッグ・プロジェクト編)」にその調査結果をまとめております。今回の研究会では、本調査に携わった工藤君明氏をお招きし、中国の宇宙開発について講演して頂きました。また、中国の科学技術力を築く基礎として、政府の人材政策、科学技術インフラ整備について、当研究センターのフェロー、秦舟と西野可奈がご紹介いたします。

 工藤君明氏は東京大学工学部船舶工学科卒業、1979年同大学院博士課程工学系専攻科卒業。海洋科学技術センターに入所後は、海洋工学・海洋環境技術や海洋生態系野の研究に従事、管理部門では観測技術員の育成、科学掘削船「ちきゅう」の運航体制の立ち上げ、安全管理に携わりました。現在は(独)海洋研究開発機構のシニアスタッフとして日本における科学技術と文化の観点から科学技術継承の課題に取り組んでいます。

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 講演では、まず工藤氏が海洋開発について講演されました。中国の海洋開発計画の概要および日本との比較、中国の海洋調査船・探査機、造船技術等について説明されました。例えば、自立型海中ロボット(AUV)や有人潜水船(HOV)については世界最先端レベルの機器を中国は有しています。造船業も盛んで、韓国、日本と並ぶ造船大国であり、自国貨物は自国船で運び、自国船には自国製品を用いて製造することになっています。講演では割愛されましたが、講演資料には海洋油ガス田開発に関する話も含まれております。

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 続いて、秦氏が、まず中国の留学人材政策の変遷および大学卒業生の就職について説明しました。政府の海外人材政策により、2000年代以降、海外留学生も留学帰国者もどちらも急増していることが特徴です。また、海外留学生対象に実施したアンケートの興味深い調査結果についても紹介しました。

 西野氏は、中国の科学技術インフラと基盤整備について説明しました。政府による科学技術イノベーション推進政策により、日本やアメリカに匹敵する最先端レベルの実験設備・実験施設が国内に作られ、近年様々な成果を上げています。また、急速な経済成長に伴い、先進国に比べてまだ脆弱とされている社会基盤の急速な整備も進められている現状を報告しました。

 本研究会の司会進行は、「中国の科学技術力について」調査を行った中国科学技術力研究会の主査の林幸秀氏が行いました。最後に林氏の挨拶をもって閉会致しました。

 今回の研究会には、民間企業、研究機関を中心に多くの方々にご聴講いただきました。今後とも皆様のお役に立てるような各種研究会を企画、開催して参りますので、引き続き温かいご支援、ご協力をお願い申し上げます。

(中国総合研究センター フェロー 邢 嘉驊 記)