第26回CRCC研究会「中国の知的財産権制度と運用および技術移転の現状」/講師:羊建中、馬場錬成(2010年3月11日開催)
科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター(CRC)主催の第26回研究会「中国の知的財産権制度と運用および技術移転の現状」が、3月11日(木)にJSTにおいて開催されました。
近年の著しい経済発展の過程で、中国政府による知的財産制度の整備も急速に推し進められています。2008年には国務院常務委員会で「国家知的財産権戦略大綱」が策定され、同年、中国特許法の第三回改定も行われました。このような状況を踏まえて、今回は、中国専利代理(香港)有限公司駐日本代表処首席代表 羊建中氏と、東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科(ベンチャー知財戦略・科学技術政策論)馬場錬成教授をお招きし、「中国の知的財産権制度と運用および技術移転の現状」というタイトルでご講演いただきました。
第1部の講師、馬場錬成氏は東京理科大学理学部卒業後、読売新聞社を経て、現在、東京理科大学知財専門職大学院教授。他に特定非営利活動法人21世紀構想研究会理事長、知的財産国家戦略フォーラム副代表、日本弁理士会アドバイザリボード委員、千葉県、埼玉県の知財戦略に関する委員などを務められています。著書に「中国ニセモノ商品」(中公新書ラクレ、2004年)「変貌する中国の知財現場」(日刊工業新聞社、2006年)、「知財立国 日本再生の切り札100の提言」(共著、日刊工業新聞社、2002年)、「知的財産権入門」(法学書院、2004年)、「大丈夫か 日本の産業競争力」(プレジデント社、2003年)など多数あります。第2部の講師、羊建中氏は北京外国語大学日本語学部卒業後、中国人民大学大学院法学部を修了。1998年に商標弁理士の資格取得、2000年に弁護士の資格を取得されました。現在は、中国政府で最も早く特許・商標の渉外代理機構の1つとして指定されたである中国専利代理(香港)有限公司代表処首席代表を務められ、海外と中国大陸での知的財産権全般にわたる法律業務を担当されています。
講演ではまず馬場講師から両講師の紹介をしていただきました。第1部では馬場講師により、まず、中国の技術革新の現状についてご説明いただきました。中国は1990年代から始まったIT産業革命の恩恵を最大に受け、国内の研究人材が飛躍的に厚くなり、それとともに国家の研究投資も継続的に増えています。高まった技術力によるニセモノ製造の精巧化、拡大という弊害もあるものの、新技術の開発や発明に伴なって知財活動が急速に高まり、先進諸国と肩を並べるようになりました。中国における特許、実用新案、意匠、商標などの産業財産権の出願数・登録数は飛躍的な増加傾向にあり、国別では前記いずれの出願数も世界のトップ3に入りました。知財戦略の強い企業として華為と海爾(ハイアール)が紹介されました。また講演後半では、中国の実用新案の特徴について詳しく説明していただきました。外国企業が中国の実用新案権について理解し、対策と有効な活用ができるようにとアドバイスをされました。
続いて第2部では、実務に長年携わる羊講師から、中国における知財制度の運用に関してご説明いただきました。中国では特許と商標を扱う政府機関が異なること、また、商標権をめぐる問題に関して事例を挙げて説明いただきました。商標を先取り出願された際の交渉方法についても詳しく解説してくださいました。
講演後の質疑応答では活発な意見交換が行われました。最後に中国総合研究センター細川参事役の挨拶により閉会いたしました。
今回の研究会には、民間企業大学、官公庁をはじめ、研究機関、大学、報道機関から約180名というたくさんの方々にご聴講いただきました。今後とも皆様のお役に立てるような各種研究会を企画、開催して参りますので、引き続き温かいご支援、ご協力をお願い申し上げます。
(中国総合研究センター フェロー シンジャワ 記)
講演資料
- 「中国の知財制度の概要と商標権をめぐる日中間の紛争について」 ( 228KB )
- 「中国の知財活動の現状と動向」 ( 3.22MB )