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華人研究者、敏感度の高い人工皮膚を開発

中国科技日報     2011年12月28日

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 一羽の蝶々がそっと顔にとまれば、誰もがその感覚に気付くことだろう。人工皮膚が同様の敏感度を備えることはできるか。華僑で女性科学者の鮑哲楠氏は3年の期間を費やして、その回答を出した。

 このほど、人工皮膚の研究で画期的な成果をあげた鮑氏は、有名な中国語メディア・機構により審査される「世界的影響力を持つ華人大賞」にノミネートされた。

 41歳の鮑氏は南京市出身で、米国スタンフォード大学化学工学科の准教授だ。2010年9月、世界的に有名な学術誌『Natural Materials』は、鮑氏とその研究グループの最新の成果、微 小の圧力を感知する人工皮膚に関する文論文を発表した。鮑氏はポリジメチルシロキサン(PDMS)と呼ばれる弾性物質を利用し、敏感度の高い人工皮膚を作り出した。テスト結果によると、同 材料は蝶々が表面にとまった時の「触覚」を感知することができ、かつ感応速度が非常に速いという。

 「始めは、ロボットに触覚を持たせることだけを考えていました。例えばロボットが人を支える時に、どのくらいの強さで手を握ればよいかを分かるようにです。日常生活において、触 覚のセンサーには幅広い実用化が期待されます。例えば人工皮膚の敏感なセンサーは、携帯電話やディスプレイに使用できます。またやけどを負った患者も、皮膚を移植すれば触覚を回復できます。ま た車両のハンドルに触覚センサーを使用すれば、ドライバーが疲労のためにしっかり握っていなかった場合、ハンドルがそれを察知し警告を発し、事故の減少につなげることができます」

 鮑氏によると、人間の皮膚を真似た柔軟性の高いプラスチック電子センサー(人工電子皮膚)は、義手、義足、ロボット、携帯電話とパソコンのディスプレイ、自動車安全、医療機器等、さ まざまな面での応用が期待される。

 鮑氏と研究グループは、軟性・柔性の電子機器と材料の研究を長期間継続してきた。鮑氏の同僚は、現在行っているロボットの研究について触れた際、「今のロボットは壁をよじ登ることができますが、触 覚がないため、登り切ってつかむものがなくなると落ちてしまいます」と語った。

 これを聞いた鮑氏に閃きが走った。「ロボットの体に人工皮膚としてセンサーを取り付け、感知能力を備えさせればと思いつきました。同僚との会話により新たな考えが芽生え、研究を開始しました」

 米国の研究者によると、鮑氏が開発した敏感度の高い電子皮膚は、ロボット研究にとって大きな前進であり、かつ人間の皮膚移植手術および義手・義足の感知の改善にも役立つという。しかし研究者らは、「 人工皮膚は本物の皮膚と同じ機能を持たねばならず、大きな課題が存在する」と指摘している。鮑氏はそれに対して、「人工皮膚を本物の皮膚に近づける、もしくはまったく同じものにすることは、非 常に複雑なプロセスを経ることが必要です。人工皮膚は感知する力を持ち、さらに感知した情報を大脳に伝達する電子部品を持たなければなりません。これにより人もしくはロボットが信号をキャッチし、反 応を行うのです。開発に成功した電子皮膚はその一部分に過ぎず、その他の研究と結びつけていく必要があります」と語った。

 このほど、鮑氏と研究グループは伸縮性を持つ太陽光電池の開発に成功した。同技術は、人工電子皮膚に自己発電の機能を持たせることができる。