北京知的財産権保護センター ワンストップ式サービスで「大衆による起業・革新」をサポート
2020年1月17日 操秀英(科技日報記者)
小米、北汽新能源、シーメンス......北京の四環路北側にある中国技術交易大廈2階にある北京市知的財産権保護センターに足を踏み入れると、こうした有名企業のロゴマークがとりわけ目を引く。
同センターの郝青センター長は取材に対して、「こうした企業はいずれも、当センターで登録している企業であり、今年4月にセンターが運営をスタートしてからこれまでの間に、すでに1,000社近い企業がここで登録を行った」と述べた。
周知のように、知的財産権保護はすでに国家戦略となっている。このほど注目を集めた米中貿易協議の「第1段階」合意の中心的な内容にも知的財産権が含まれていた。先頃、中国共産党中央委員会弁公庁と国務院弁公庁が共同で「知的財産権保護の強化に関する意見」を通達し、当面の中国における知的財産権発展の方向性と計画を打ち出した。
一連の計画では、同センターの設立が重要な着手点となった。「知的財産権保護の強化に関する意見」は、「知的財産権保護機関の設置を強化し、優勢産業の集積エリアに一連の知的財産権保護センターを展開・建設し、案件の迅速な受理と科学的仕分けのメカニズムを構築する」ことを打ち出した。
実際、国家知的財産権局(知財局)は2016年に知的財産権の迅速な協同保護の取り組みをスタートし、地方政府が主体となり知的財産権保護センターを建設し、特許の事前審査、迅速な権利保護、知的財産権保護をめぐる連携、特許の運営などの取り組みを進め、イノベーションの主体、市場の主体に「ワンストップ式」の知的財産権総合サービスを提供してきた。現在、全国には25ヶ所の知的財産権保護センターが上部機関からの批准を受けて設立されている。
北京にはこのうちの2つのセンターがある。郝氏は、「各地の知的財産権保護センターはいずれも現地の重点産業の発展へのサービスを手がけている。北京保護センターは次世代情報技術と先端設備製造業に関する知的財産権の迅速な協同保護の取り組みの展開をサポートし、一方、中関村知的財産権保護センターは主に新材料、バイオ医薬産業を対象としている」と説明した。
知的財産権保護センターでは、登録企業が便利で迅速な特許申請事前審査サービスを受けられる。郝氏は、「保護センターの事前審査に合格した特許の出願は、国家知的財産権局の特許迅速審査ルートを通ることができ、質の高い特許出願で審査にかかる時間を大幅に短縮できる」と述べた。
郝氏は次のような例を挙げて説明した。「今年初め、北京のある研究院が出資して設立したセンサー開発企業はデモンストレーションや資金募集コミュニケーション会議で投資機関に自社の重要製品を説明しようとしたが、同製品は特許を出願しておらず、特許取得の可否に不確定性が存在することから、投資機関の製品に対する評価に影響が出かねず、企業の時価総額評価や最終的な資金募集の結果にも影響を与える」。
郝氏はまた、「これを受けて、設立されたたばかりの北京保護センターは一連の事前審査業務の研修を行った。研修で強調された『高い品質』、『高い価値』の特許出願の要求を踏まえ、同研究院と同企業は入念な準備をして事前審査申請書類を提出。最終的に、この申請は北京保護センターの事前審査をスムーズに通過し、それに続く国家知的財産権局の審査で特許を取得することができた」と続けた。
特許の事前審査、迅速な権利保護などをめぐるこうした事例はほかにもたくさんある。知的財産権の「迅速な保護」を強化するだけでなく、北京保護センターがより重要なこととして取り組むのは、各方面の資源を集中させ、知的財産権の「大々的な保護」の体制づくりを推進することだ。
「大々的な保護」の体制を構築するには、行政、司法、調停、仲裁など各機関の連携が必要だ。北京保護センターは北京仲裁委員会との間で「戦略的協力枠組合意」に署名し、仲裁調整協力メカニズムを構築し、仲裁調停の研修および課題研究を行い、多様な紛争解決メカニズムのPRと普及を進めている。
このほか北京保護センターは電子情報、スマート製造、先端設備などの分野の検査機関25ヶ所、知的財産権保護の司法鑑定機関からなる知的財産権侵害検査鑑定技術支援連盟を指導・設立した。特許、商標の行政法執行、司法機関、イノベーションの主体に向けて専門的、中立的で、権威ある、規範的な知的財産権検査鑑定技術サービスを提供することが目的だ。
また北京保護センターは集積回路、中国鉱業、スマート製造業、北京自動車産業、北京先端精密機器産業など7つの産業知的財産権連盟や業界団体との間で迅速な協同保護連絡メカニズムを構築しており、知的財産権の迅速な協同保護の取り組みを共同で進めている。
イノベーションと起業においては、知的財産権が先行する。優位性をもつ特許の開拓では、北京保護センターは北京市が重点的に発展させる10大ハイレベル・精密・先端的産業を踏まえ、人工知能(AI)、5G技術、スマート製造、集積回路およびソフトウェア・情報サービスの5分野を選択し、企業の分析を中心とし、産業の分析で補完する特許のためのナビゲーション活動を展開している。
※本稿は、科技日報「北京知識産権保護中心:一站式服務護航双創」(2019年12月23日付1面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。