無錫IoTビレッジ―スマホ片手にブドウを栽培する農家
2019年9月27日 過国忠(科技日報記者)、許加彬(科技日報特派員)
画像提供:取材対応者
新たなテクノロジー革命と産業変革の実施が続くにつれて、抽象的な概念だったIoT(モノのインターネット)が実験室を出て、実際に応用され、人々の暮らしの中でますます身近な存在になってきている。
9月8日、江蘇省無錫市錫山区で開催された「2019世界IoT博覧会工業インターネット発展サミットフォーラム」を取材すると、第5世代移動通信システム通信(5G)、エッジコンピューティング、人工知能、ビッグデータなどが各分野に急速に浸透し、伝統的な生産や生活の形態に大きな変化をもたらしていることが分かった。
なかでも、IoTは農業に応用されて発展し、これまでの常識を覆す大きな変化をもたらして、新業態を形成していた。
無錫市は近年、先頭に立ってスマート農業の急速な発展を促進し、農業IoT応用ポイントを約400ヶ所設置し、農業の高い品質の発展を支援している。
今は、ブドウは既に市場に出回っている時期だが、今年、建設中の無錫鴻山IoTビレッジのブドウ栽培農家はこれまでとは違うブドウ栽培を体験している。鴻山阿偉ブドウ園を取材すると、IoT情報技術を応用したマイクロ気象ステーションが設置されており、それが伝統的なブドウ栽培の方法に大きな変化をもたらし、「スマート栽培」を実現していることが分かった。
ブドウ栽培に従事して20年以上になる徐偉法さんは、取材に対して「この気象ステーションはとても小さいが、非常に役に立つ。気圧や日光、気温、湿度などをリアルタイムでモニタリングできる。以前は経験に基づいて、水や肥料をやっていたが、今はスマホがいつ水をやればいいか自動で教えてくれる」と話した。
今年のブドウ栽培期間中、徐さんは、スマホのアプリをタップするだけで、ブドウ園全体の灌漑システムの状況をチェックできたため、たくさんの手間や時間を省けたという。そしてそのようなシステムを、他のブドウ栽培農家たちは羨望のまなざしで見ていたという。阿偉ブドウ園は最近、1ヶ月かけてスマートシステムのアップグレードを実施した。これにより、無錫市鴻山5Gスマート農業モデルプロジェクトの実施がスタートした。
徐さんは取材に対して、「以前は、ホースを使って手動で肥料をやっていたが、今は水肥一体マシンを導入している。水肥混合溶液はフィルターを通るため、ホースが詰まることはない。チューブやエミッタ、弁などを通るため、均等にまくことができ、その量も最小限に抑えることができるし、スマホやパソコンを使って、その数値を簡単に設定することができる。そして、環境などのデータが設定数値を超えると、自動でシステムが作動する。システムが水や肥料が足りないと判断すると、ショートメッセージなどが送られてきて、肥料や水をまくようにと注意を促してくれる」と説明した。
無錫市錫山区厚橋街道は、現代施設農業モデルエリアだ。オムロンスマート農業パークに並んでいるビニールハウスの中に入ってみると、農作業をする人の姿は見当たらなかったが、農作物はすくすくと育っていた。いったいどのように栽培が行われているのだろうか?
案内してくれた厚橋街道の関係者は、「近年、力を入れて構築している農業情報化スマートモニタリングシステムを通して、精度の高いデータをリアルタイムにチェックすることができるようになっている。農家はスイッチを押して、選択したり、提案に従ったりするだけで、野菜や果物の栽培を行うことができる」と説明してくれた。
この農業情報化スマートモニタリングシステムは、環境のコントロールとモニタリングが一体となり、段階に合わせた最適な生長環境を計算して導き出し、それを完全自動で制御してくれる。そして、各種センサーをさまざまな場所に設置して、気温や湿度、土壤の水分量、光の強さ、二酸化炭素、降雨量などをモニタリングし、サービスコントローラーが電波を送受信し、コントロールキャビネットにインプットして、リアルタイムデータの分析処理を行う。そのデータは、どこにいてもスマホを通してチェックすることができる。
現在、労働力不足や気候、汚染などの不確定要素に悩まされている中国の農業生産について、揚州大学機械工程学院の張瑞宏教授は、「スマート農業の発展を加速させ、農機と技術を結合しなければならない。そして、IoT新世代情報技術を活用し、農業の栽培、生産量を最大限増やし、農民が煩瑣な農作業から解放されるようにしなければならない」と指摘する。
※本稿は、科技日報「無錫物聯网小鎮,農民捧着手機"種葡萄"」(2019年9月12日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。