第169号
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黄河のほとりで進展する節水技術の高度化

2020年10月22日 張文麗、杜 英

中国の節水の新たな手段のために専門家が知恵を絞る

「甘粛省蘭州市で朝に窓を開けると、山の下を川が流れる景色が見え、帰るのを忘れるほど魅了される。しかし、こうした都市の水源がなくなったら、いったいどうなってしまうのだろう?」。中国中央テレビ(CCTV)の司会者・古兵氏はそんな質問を投げかけて、フォーラムのテーマ「節水と社会」に人々の注意を向けた― 10月10日、第2回中国節水フォーラムが中国で唯一の黄河が流れる省都・蘭州市で開幕した。

甘粛省 GDP1万元当たりの水使用量が2010年比で60%減に

「水資源の安全をしっかり守ることは、今後の国の食糧安全を確保するための根本的保障となる。テクノロジーイノベーションが農業節水の根本的な道」。中国農業大学の孫其信学長がそのように述べるように、中国の食糧総生産量は1949年の1億1,300万トンから、現在は約6億5,000万トンに増えた。灌漑技術の食糧増加に対する寄与率は40%に達している。節水事業は、持続可能で、高い品質で発展するテクノロジー農業発展の道を歩んでいる。

 中国農業エコ発展研究会の余欣栄理事長によると、黄河流域の重要な水源涵養区と補給区としての甘粛省は近年、農業のエコな発展を非常に重視しており、使用済み農業用マルチシートの回收率は81%と、中国全土で1位だ。「踏み込んだ節水、極限まで節水」のアプローチで、2013年以降、甘粛省の高効率節水面積は累計で55万7,333ヘクタールに達し、国内総生産(GDP)1万元当たりの水使用量は2010年に比べて60%減少した。そして、現代化されたスマート利水モデルを構築すると同時に、大禹節水集団公司のような国家級重点ハイテク企業を育成してきた。

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中国国家企業技術センターとしての大禹節水集団は、農業節水灌漑、農村汚水処理、農民の飲料水の安全、スマート水道事業などの分野における研究・開発を行い、サービスを提供することで、中国の節水の新方式にテクノロジー面でサポートを行っている。画像は大禹節水の点滴灌漑用排水管生産集中フィードシステム。撮影:張文麗

 大禹節水はモノのインターネットやビッグデータなどの現代情報技術を、農業や利水の分野に活用し、「水ネットワーク+情報ネットワーク+サービスネットワーク」の一体化を推進している。同社の王浩宇会長は、「当社は、甘粛省酒泉市から全国へと進出し、灌漑プロジェクト、貧困者支援プロジェクトが約200万ヘクタール、農業用水の節水量は500億立方メートルに達した」と説明する。

協力・ウィンウィン、専門家を専門分野に従事させる

 共同建設、共同ガバナンス、共有という節水事業を実現するためには、テクノロジーの下支えのほか、政府、市場、一般社会の資源の統一した計画を強化しなければならない。水利部の党組織メンバーである魏山忠副部長は、「水の状況を見て供給を決定し、節水を重視し、踏み込んだ節水、水の抑制を全面的に実施し、使用する水の基準量の管理、節水評価制度、水を使用する重点機関のモニタリング、県域での節水基準値クリア確立などの面に取り組まなければならない」と語る。

 中国財政部(省)PPPセンターの焦小平センター長は、節水イノベーションの発展により富をもたらした成功例を使って、いかにPPPモデルを規範的に活用し、農業節水化投資保障メカニズムを形成するかを読み解いた。節水・生産の問題について、西北農林科技大学の呉普特学長は、「実体水とバーチャルウォーターの『2次元3元素カップリング』システムにおける流れの法則を研究することで、質の高い発展の足かせとなる水の制限という難題解決に一役買うことができる」との見方を示す。

 新疆ウイグル自治区科学技術協会の副会長を務める鄧銘江院士が提案する胡煥庸線、陽関線、奇策線からなる「西北水三線」という空間構造構築構想は熱い議論を巻き起こした。同構想は、胡煥庸線、陽関線、奇策線の足かせを打破し、国土空間のバランスの取れた発展を実現し、中国西部地域の環境を改善して、美しい中国を建設するためにイノベーション的思考を提供している。

根気強く生態を改善し「幸福の川」を実現へ

 中国人民政治協商会議全国委員会の副主席で、中国農工民主党の中央常務副主席である何維氏は、「節水をレバレッジとすることで初めて、生産と生活用水の無駄の多い粗放型から、節約集約型への舵きりを推進することができる。そして、水資源の最大の硬直的制限強化を水資源規制のボーダーラインとすることで初めて、社会全体の科学的で、高効率かつ合理的な水の使用を推進することができる」と、新時代の治水方針、中国の節水事業の今後の方向性を解説している。これがまさに中国の節水事業の進む方向だ。

「幸福の川」とは何か、どのようにそれを評価し、実現するのだろう? 中国水利水電科学研究院の匡尚富院長は、黄河の幸福指数の総合的な分析過程を示し、「ウォーターガバナンスのためには、主だった問題点を的確に把握し、テクノロジーイノベーションとメカニズム改革を強化し、川ごとに対策を講じ、みんなで知恵を出し合い、力を合わせなければならない」と指摘する。

 甘粛省党委員会の副書記を務める、唐仁健省長は、「黄河の西部は水を制限し、南部は保水し、隴山の東部は水の調整を行い、中部の水の質を向上させるという全体的構想に基づき、給水を守る、水を節約する、配水を改善する、きれいな水を増やす、洪水を防ぐという5つの対策を同時に進める。甘粛省の党委員会、省政府は、質の高い水資源、健全な水生態、生活に適した水環境を構築することを目標に、新時代における節水事業を促進し、イノベーションの局面を切り開いていく」と語る。


※本稿は、科技日報「節水技術的更新迭代,従黄河之畔説起」(2020年10月15日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。