特集巻頭言:再生可能エネルギー
中国科学技術月報2009年4月号(第30号) 2009.4.1発行
はじめに
地球のエネルギー資源は限られている。資源を枯渇させずに効率よく利用することが社会の持続的発展には不可欠である。近年、中国は、経済の高度成長に伴ってエネルギー消費が急増し、世界第二位の石油消費国になった。エネルギー資源の開拓は中国経済発展の重要な要素である。日本も、エネルギー資源のほとんどを輸入に依存しており、エネルギー自給率の向上は長年の懸案である。原油高や地球温暖化の問題を論ずるまでもなく、再生可能エネルギーの利用拡大やクリーンエネルギーの開発はまさに人類に課せられた今世紀最大の課題の一つである。
再生可能エネルギーは太陽光発電、風力発電のような自然エネルギー、バイオマス発電、水素燃料製造のようなリサイクルエネルギー、クリーン燃料電池のような従来型エネルギーの新利用形態などを含む。今年1月、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの利用拡大、促進を目指す国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が75ヶ国の署名によって発足した。欧州太陽エネルギー協会のヘルマン・シェア会長はこの会議で「IRENAは、先進国と発展途上国の双方に、再生可能エネルギーの早期導入を助言し、支援する。IRENAは、IAEA(国際原子力機関)やIEA(国際エネルギー機関)と同等の役割を果たすだろう。」と述べた。今後、地球温暖化や化石燃料の枯渇に対応するため、再生可能エネルギーに関する技術移転や資金調達、情報交換はさらに活発になるだろう。
このような状況の下、今月号(第30号)の中国科学技術月報では、中国と日本の資源エネルギー研究の専門家、とりわけ再生可能エネルギーの利用やクリーンエネルギーの開発に携わっている先生方に、日中におけるエネルギー問題への取り組みの最前線をご紹介いただいた。この特集では、両国の再生可能エネルギー利用の状況を俯瞰するほか、中国の太陽光発電、風力発電研究および水素エネルギーの利用拡大の実状および動向、日本のバイオマスエネルギーの開発状況や両国の次世代燃料電池など従来型エネルギーの新利用形態などの研究、および日中太陽光発電産業界の実態などさまざまな記事をまとめてお届けすることにした。
本特集が日中両国のエネルギー資源についての研究交流の更なる発展のきっかけとなり、再生可能エネルギー開発、利用の緊急性に関する読者の皆様のご理解を深める一助となれば幸いである。
中国総合研究センター