第163号
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さまざまなシーンで「忙しい」ロボットたち

2020年4月17日 劉艶(科技日報記者)

感染症の予防・抑制、「新インフラ建設」への貢献

 巡回検査、清掃、温度測定、クラウド看護、無人配送など、さまざまなロボットが新型コロナウイルス感染の予防・抑制に大活躍している。企業活動の再開が加速し、「新インフラ建設」ブームが起こるにつれて、ロボットの主戦場にも戦略的な変化が起きている。

 いったいどれだけのロボットが第一線に立ったのだろうか。これに関する公式の統計はない。

 しかし中国電子学会によると、2月初旬、世界ロボット大会(World Robot Conference)組織委員会事務局は「力を結集し、科学技術で感染症と闘おう 共に感染症拡大阻止の闘いで勝利しよう」と提唱し、130社以上のロボット企業と人工知能(AI)企業から反応があったという。

 2月28日、達闥科技(Cloud Minds)が武漢市に設置された臨時医療施設である武昌方艙医院に入り、6日間で独自の知的財産権を持つインテリジェントオペレーションブレインやサービスロボット、サードパーティーIoTデバイスを納入した。

 達闥科技副総裁兼最高マーケティング責任者(CMO)の葛頎氏は取材に対し、「我々はすでに湖北方面からの受注を受けており、スマート方艙医院プロジェクトをさらにモジュール化・システム化していきたい。今回の緊急事態における配置は、ロボット業界全体へのプレッシャーを試すことになったと同時に、スマート病院建設の成功を模索する下調べにもなった。システム化されたソリューションを計画と目的をもって導入して初めて、病院が公衆衛生上の緊急事態や自然災害に対応する科学技術力と運営レベルを高め、いざとなった時に他力本願になるような事態を避けられる」と述べた。

 優必選科技(UBTECH)の最高ブランド責任者(CBO)の譚旻氏は、「今回の感染症拡大で、大衆のロボット業界に対する認知が3~5年早まり、公共事務や医療看護などのロボットが役割を発揮する重点分野が明確になり、大波が砂を洗うかのように各ロボット企業の実力が検証され、今後2~3年間引き続き伸びる資格があるのはどの企業かが決まった」とする。

 上海鈦米ロボット科技(TMiRob)有限公司のマーケティングマネージャーを務める陳惟褀氏によると、「SARSが過ぎた後に、どの病院にも発熱問診窓口が設置されたように、今回の感染症が収束した後、ロボットなどの新技術や新製品が病院の力強い助っ人になっていくだろう」とした。

 ロボット業界はほかにどのような価値ある使用シーンを見据えているのだろうか?

 業界として比較的共通認識となっている使用シーンは、やはり労働集約型重複産業だ。中信重工開誠スマート装備有限公司総経理助理(補佐)の張樹生氏は、「ロボットは人に代わって無接触サービスを提供し、感染症予防・抑制において重要な役割を発揮し、危険な環境や都市共同溝、辺境無人工場エリアなどで日常的に巡回検査をするロボットを配置するうえで最良のモデルケースとなった」と指摘する。

 北京推想科技(Beijing Infervision)有限公司戦略発展副総裁の陳万鈞氏の言葉通り、「感染症拡大によって、特定のシーンにおいてロボットが人に変わる趨勢がこれまでになく値段の影響を受けにくい需要となった」。しかし、この業界の繁栄は特定シーンに限ったニーズなのか、それとも市場の足掛かりになるのか?ロボットは「新インフラ建設」に有力な貢献ができるだろうか?

 上海仙知ロボット科技有限公司市場総監の楊麗氏は、「今後2~3年間は、データ共有と各方面のインターフェースプロトコルの策定が最大の挑戦になるだろう。これは企業を横断するロボットの共用化、プラットフォーム化、モジュール化に関わるとともに、ロボットがより大きな価値を発揮できるかにも関わってくる」とみている。

 ロボットが室内や室外で動き回っていたら、あなたはそれを車だと思うだろうか、それとも人だとみなすだろうか。もし車であれば、自動車か、軽車両か。伝統的な交通手段と責任上どう区別するのか。複数メーカーのさまざまなロボットが使用されるシーンがあった場合、それらは混在できるのか、それとも秩序良く混在を避けるのか?

 こうした問題について、九号ロボット有限公司商務総監の修陶鈞氏は、「ロボット業界にはまだ業界共通標準とフォロー評価体系がなく、業界監督管理もあいまいな状態からより規範化されることを待たなければならない」とした。

 ロボットを残すことが有益かどうかについて、ユーザーの思いは自ずと決まっている。

 修氏は、「ロボットはスーパーマンではない。一時的な活況の要素を差し引き、本来の価値に立ち戻って初めて、本当の意味で新インフラの一部になることができる」と強調した。


※本稿は、科技日報「機器人最近有点忙」(2020年3月24日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。