第39号:中国の高等教育改革の現状および動向
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中国高等教育の評価と質の保障

2009年12月23日

張彦通

張彦通(Zhang YanTong):北京航空宇宙大学校長補佐兼人文社会科学学院および公共管理学院院長

1963年生まれ、博士、博士課程指導教授。長きにわたって高等教育の経営および管理、高等教育政策研究、教育の品質評価および認証、高等工程教育などの領域の学術研究と教育および人材育成活動に携わる。前後して世界銀行借款援助プロジェクトや国家自然科学基金、国家社会科学基金、国家教育科学計画、航空科学基金および国家教育部、北京市人民政府、中国工程院、国防科学技術工業委員会などの重要部門の40以上の重点科学研究プロジェクトの責任者・担当者となる。そのうち国家レベルの教育科学研究奨励を得たプロジェクトは3件、省部レベルの奨励は5件であり、全国的な各級学術論文賞は5件受賞した。『教育研究』、『高等教育研究』、『外国教育研究』、『比較教育研究』、『中国管理科学』、『高等工程教育研究』などの刊行物において90余りの論文を発表してきたが、もっぱら上記刊行物掲載分を出版した。多くの教育政策文書や教育計画、重大教育改革工程および計画方案の起草業務に参加し、また普通大学学部教育業務水準評価、国家工程教育専門認証、大学合格評価新規設定などの評価方案および指標体系の研究制定業務に参加した。現在、中国工程院教育委員会委員、中国高等教育学会理事、中国高等教育評価研究会会員、教育部本科教育評価専門委員会会員、国家工程専門認証専門家委員会秘書処副秘書長である。

摘要

 30年にわたる改革開放にともない、中国の高等教育には大きな変化が現れてきた。特にここ10年で高等教育の規模が急速に拡大し、歴史的な飛躍のもとにエリート教育から大衆教育に転換したのである。これとともに教育の質に関する問題が幅広く社会の関心を集め、高等教育への評価が静かに始まった。高等教育の急速な発展のなかで、教育の質を保障し高めるという重要な使命が与えられることとなったのである。本稿では中国高等教育の評価の模索と発展への道のりを簡単に振り返り、学部教育活動評価を代表的な中国高等教育評価モデルとして整理し詳述する。そして、学部教育活動評価の特徴と問題を総括的に分析した後、中国高等教育評価の発展の方向について暫定的な展望を行う。

 20世紀中葉以来、世界の高等教育には大きな変化が起こっている。その最大の特徴は規模の拡張であり、非常に多くの国において相次いで高等教育が大衆化したのである。ところで、高等教育が急速に変化発展する時代は高等教育の質が注目を集める時期でもある。また、高等教育の規模の拡大にともなう大衆化と普及が進むにつれ、質の問題が必然的に高等教育発展の重要課題となってきた。教育の質について注目されてきた結果、世界規模の教育品質運動が起こり、教育評価と質の保障に関する体系を確立することが、世界高等教育発展のための共通の選択となってきている。品質こそが高等教育発展のかなめであり生命線である!これが中国高等教育がここ30年の発展で明確に会得してきたことであり、中国が高等教育の評価と質の保障の体系を確立しようと根本的に追及してきたことでもある。

1.中国高等教育評価の模索の道のり

 中国高等教育の品質保障体系の重要な構成部分である中国高等教育評価は、概ね三つの発展段階を経てきた。第一段階は評価に関する啓蒙と理論研究の段階である。第二段階は高等教育評価の試行と模索の段階である。第三段階は教育活動評価の制度化の段階である。

1. 評価に関する啓蒙と理論研究の段階(1985-1994年)

 広義の高等教育評価は中国の長い歴史のなかにすでに存在してはいたものの、教育界では中国の高等教育評価は1980年代半ばに始まったとみなすのが一般的である。学術活動としては、1985年6月に黒竜江省鏡泊湖で開かれた「高等工程教育評価問題専門研究討論会」が高等教育評価研究の最初の一里塚と考えられている。

 1985年の《中共中央の教育体制改革に関する決定》によって、政府とその教育管理部門は高等教育に対して指導と管理を幅広く強化すべきこと、教育管理部門は教育界、知識人を組織すべきことが初めて提示された。また、雇用部門は大学の学校運営水準に対して定期的に評価を行い、成績の卓越した学校には栄誉と物質上の支援を重点的に与え、成績不良の学校には整備から活動停止にいたる措置をとることも提示された。

 1987年において、前国家教育委員会は課程、専攻、学校段階別に分けられていたが、大学に対して品質評価を試行した。1989年には、前国家教育委員会は全国普通大学優秀教育成果奨励制度を設立し、以後の優秀評価制度確立のために一定の経験を積んだ。そして、中国の高等教育改革が引き続き深まるにつれ、前国家教育委員会の統一的な統率と指導のもとに海外の高等教育評価理論と経験が系統的に輸入され、モデルとして学習された。これを土台として全方位的、多次元的、多類型的高等教育評価の実験と実践活動が繰り広げられ、高等教育評価研究の中国内外の交流活動はさらに強化された。こうして、中国的な特色を持った高等教育評価理論と方法体系の構築において有益な模索が進められた。

 これらの研究と実践に基づいて、1990年、前国家教育委員会は《普通大学教育評価の暫定規定》を公布し、中国高等教育評価制度の基本的な雛型を初めて明確にした。また、中国高等教育評価研究会が正式に設立され、中国全国で高等教育評価の研究と交流を進めるための組織的な保証が提供された。

 1993年、《中国教育の改革および発展の概要》は「各地の教育部門は学校教育の質を検査評価することをもって日常の任務としなければならない」と強調した。また、《〈中国教育の改革および発展の概要〉に関する国務院の実施意見》はさらに「社会仲介組織を設立、健全化し、社会各界を教育政策の決定と管理に参加させる役割を果たさなければならない。」と指摘した。

2. 教育活動評価の試行と模索の段階(1994-2002年)

 中国は1994年から比較的系統的で計画的な大学教育評価を模索し始めた。この年、前国家教育委員会は二つの影響力のある教育評価活動を全国レベルで展開したのである。その一つは基礎科学教育の質の測定を強化したことであり、基礎課程の問題集を利用して100余りの大学の大学物理と基礎数学の教育の質に関して検査測定を行った。もう一つは《普通工業大学学部教育活動評価方案(試行)》を公布し、大学4校に評価の試行と試験的測定を行ったことである。これらは学部教育活動評価を主な特徴とする中国現代評価制度が実践的模索の段階に入り始めたことを示すものである。

 さらに、1995年から2001年にかけて、政府は学部教育活動評価に関する一連の法文書を相次いで公布した。例えば1995年には教育部が《普通大学学部教育活動評価実施法(1)》を公布した。1997年には総合大学や工業、農林、医薬、政治法律、財政経済、外国語、教員養成の単科大学の学部教育活動合格評価と優秀評価に関する方案が相次いで公布された。また、1998年には《よりよい普通大学学部教育活動評価に関する若干の意見》が公布された。これらの政策文書は学部教育活動評価に対して良質の指導および標準の役割を果たし、教育評価活動の健全な発展を促進および保証した。

 さて、この時期の学部教育活動評価は主に三つの類型に分けることができる。まず、1976年以降に新設された単科大学の学部に対する「合格評価」であり、次に学校運営の歴史が比較的長く、水準も比較的高い重点大学に対する「優秀評価」であり、三つめにこれらの大学の中間に位置する大学に対する「ランダム水準評価」である。2001年までに178の大学に合格評価が、16の大学に優秀評価が、26の大学に水準評価が行われた。また、これと同時にその他の形式の高等教育評価活動も勃興し始めた。例えば大学院生教育評価には主に大学院評価、博士修士学位課程評価、第一学科分類全体水準評価、優秀博士学位論文選考などの活動が挙げられる。その後中国は普通大学大学院評価、新設学部の単科大学の学校運営水準に関する評価、そして「211工程」専門教育品質評価などを相次いで実施した。

 また、このころ教育の質の評価と研究に関する機構が相次いで登場した。すなわち、北京大学教育品質評議センター(1993年)、大学および科学研究院の学位および大学院生教育評価所(1994年)、上海市高等教育評価事務所(1996年、2000年に「上海市教育評価院」と改名)、江蘇教育評価院(1997年)、遼寧省教育評価事務所(1999年)、広東省教育発展研究および評価センター(2000年)、教育部学位および大学院生教育発展センター(2003年)など10以上の機構が現れたのである。これらの事業性評価機構は教育部または省教育庁の委託を受け、一連の高等教育評価活動を展開した。このほかに、民間評価機構のなかで比較的強い影響力を持つ広東管理科学院研究院の武書連は「中国大学評価」を行い、網大は1999年から「中国大学ランキングリスト」を発表した。

 以上から、中国の現代高等教育評価の体系およびモデルはある程度目鼻がついてきたと言うことができるであろう。その過程において、高等教育の規模が急速に拡大発展した結果質の問題が提議され、評価がますます重要な役割を果たすことが明らかになってきた。これに関して言うと、2001年は中国高等教育の質が最も注目された年である。1998年からの3年連続の入学者数大増加のため、中国高等教育の全体規模が3年間で2倍になり、質の問題が社会的に憂慮されることになったからである。そこで、「5年1期制」の教育活動水準評価制度が実施されることになった。

3. 教育活動評価の制度化の段階(2003年以後)

 2002年、高等教育総合化の趨勢はさらに強まり、教育部は合格評価、優秀評価、ランダム性水準評価という3種類の方案を一つの方案、すなわち《普通大学学部教育活動水準評価方案》に統合した。2003年、教育部は《2003-2007年教育振興行動計画》において「5年1期制」の普通大学学部教育活動水準評価制度の実施を明確に示した。5年という期間内に普通大学に対して統一的な評価を一度行うことを要求したのである。

 2004年にこの方案は改訂され、5年1期制評価方案が正式に作成された。そして2004年8月、教育部は高等教育評価センターを正式に設立し、全国大学教育評価の組織的活動を専門的に担当させた。これは中国の大学学部教育活動評価が制度化と専門化の発展段階を歩み始めたことを示すものである。

 2008年に第1期の評価活動が終了し、全部で592の普通大学学部が評価を受けた。評価に参加した学校は「評価により建設と改革を促進し、評価と建設を結合して、さらなる建設を行う」という方針の下、教育部制定の評価方案基準に基づいて自らの実際の状況の中で、教育に関する思想観念を変化させた。また、教育の基本建設を強化し、教育改革を深め、教育管理を標準化した。これらは学校教育改革に肯定的な変化をもたらし、顕著な成果を収めさせた。教育評価の結果、大学は学校運営に関する思想を正しく持つようになり、学校運営構想を整理し、発展目標と学校運営を明確に位置づけるようになったのである。そして、大学の教育活動の地位が強化され、教育活動は多くの大学において大いに重視されるようになった。さらに、教育への投資が大きく促進され、大学の学校運営条件が顕著に改善された。また、大学の教育管理の基準性が明白に強化されて学校内部の教育の質の基準と監視制御体系の第一歩が設立され、教育と管理活動の基準を高めて効率的な運営を行うための制度的な保証がもたらされた。そして、さらに重要なことには、教育評価は教育の質の生命線であるという認識を高め、人心を集め、先進的な教育思想や観念を広め、広い範囲で教育と管理の経験を交流させた。

2.中国の大学教育評価の主な特徴

 世界の多くの国々と同様、中国の高等教育評価の誕生と発展は高等教育の急速な発展の結果である。すなわち、規模の拡大がまず質の問題への注目をもたらしたのである。特に規模が拡大しつつも経費の投入が不十分な条件の下では質の低下が憂慮されるものである。具体的に言うとハード面での不足、教員の人材不足、教員経験の不足などは高等教育の質の低下をもたらす可能性がある。このことから、高等教育評価の誕生と発展は切迫した現実的需要を背景としていたと言うことができる。

 さて、中国高等教育の発展は規模拡大の時間が短く、速度が速く、振幅が大きかったために、最も直接的には巨大な教育投資が求められることとなった。この結果不可避的にハード面での設備不足、教員の人材不足などの問題に直面することになり、これは教育の質の低下をもたらした。大きく言うと、中国の高等教育評価の出発点は、規模を急速に拡大すると同時にいかにして各方面から高等教育への投資の増加を促し、教育の基本的な質をいかにして保証するかという点にあったのである。

 2004年に公布された《普通大学学部教育活動水準評価方案》は、「評価により改革・建設・管理を促進し、評価と建設を結合して、さらなる建設を行う」という原則を貫徹しなければならないと明確に規定している。水準評価を通して各級教育主管部門に一層大学の教育活動を重視、援助するよう促したのである。また、学校には学校運営の思想を明確にし、学校運営条件を改善して教育の基本的建設や教育管理を強化するよう促した。さらに、教育改革を深化させ、教育の質と学校運営の効率を全面的に高めるよう促した。

 長年の実践を経て、中国の大学教育活動評価は暫定的ながら以下のような特徴を示すようになった。

1. 政府の主導を堅持し、学校の自己評価を主とすることを最優先し、全学の教員と学生を共同参加させる。

 まず、政府主導について述べたい。中国が1978年に開始した改革開放は、根本的には計画経済体制から社会主義市場経済体制に変革するプロセスである。このプロセスにおいてはほとんどすべての改革と発展が政府の主導で進められたわけだが、高等教育評価も例外ではなく、大学学部教育活動評価はこの点を集中的に体現している。この評価は国家教育部が直接に指導および実施し、教育部は「高等教育評価センター」を設立して、中国全国の大学学部教育評価活動の組織と実施を専門的に担当させたのである。こうして政府は全国普通大学学部教育活動評価専門家委員会を組織し、統一的な評価活動文書を研究および制定した。また、膨大な評価専門家人材データバンクを構築し、評価手順と評価基準を標準化した。

 すなわち、評価の改善と調整の一つ一つが政府の教育の発展および改革の推進方針と意図を体現したものであったのである。例えば、大学の学校運営基本要件に関連して、《普通大学基本学校運営条件指標合格標準》[教育部教発[2004]2号文書]と完全に同一の手順が採択され、これが学部教育活動評価の合格標準要件となった。また、2001年8月に国家教育部が印刷および発行した《大学学部教育活動の強化に関して 教育の質を高めるための若干の意見》(教高[2001]4号文書)は、教授が教壇に上がり学部生のために授業しなければならないことを強調しているが、これは要求されるやいなや評価指標体系に組み込まれた。さらに、2003年には入学者急増後の大学生の就職という新しい問題に関連して、教育部は大学卒業生の就職率を指標に入れて評価を進めることを求めた。

 長年の実践から考えると、学部教育活動評価はすでに政府が法に基づいて大学を管理する一種の職能となった。これは評価の検査および督促機能を発揮することによって、各級教育主管部門に高等教育への投資と支援をさらに増加し、大学の学校運営条件を改善しするよう促している。また、教育の質を高める主要な手段として、学校に教育活動により力を入れ、人材育成を重視するよう促している。さらに、教育の中心的地位を確固として確立し、教育活動に対する重要な措置の管理を保証するよう促している。これは明白に中国的な特色である。

 次に、自己評価を主とする点について述べるものとする。大学が行った自己評価活動は学部教育評価の基礎であり、評価において重要な役割を果たす。学部教育評価の「評価により建設・改革・管理を促進し、評価と建設を結合して、さらなる建設を行う」という評価原則が強調しているのは、評価は自己評価と自己建設を主とし、評価によって建設と改革を促進し、教育活動を改善して教育の質を高めるということこそ根本としなければならないという点である。自己評価は評価過程全体の中で最も重要な段階であり、多くの学校が自己評価・自己建設・自己改革を進めるに当たって1年あるいはそれ以上の時間をかけている。これは評価の三段階の中で時間が最も長く、任務が最も重く、効果が最も大きい部分であり、建設・改革・管理の中で実行可能な活動が最も多く、得られる効果も最も大きく最も明白な部分である。学校教育活動の状況を最もよく理解しているのは学校の自己評価であり、専門家組織のそれではないのである。ゆえに、学校が真摯に自己評価を行わなければ学校教育活動の成績や状況、そして特色を正確に把握することはできず、また、学校教育活動の補強が必要な部分や問題の所在を正確に把握することもできず、適切に改善することもできない。すなわち、真摯な自己評価があってこそ、評価の診断機能が十分に発揮されるのである。

 専門家組織の現場審査も学校が十分に自己評価を行ったことを前提とし、自己評価の報告に基づいて行われる検証過程である。この検証過程が強調するのは学校教育活動の「三つの適合性」、すなわち、(1)学校の定める目標(学校の位置づけや人材育成目標)と社会の要求、学生の全的な成長、学校の実際状況との適合性、(2)学校の実際の活動状況と定められた目標との適合性、(3)学校が育成した人材の質と自ら定めた目標との適合性である。学校運営目標は学校が自ら定めるものであり、これによって三つの適合性が提出されるわけであるが、これは学校の実際から評価を始めなければならないということを意味する。三つの適合性が高ければ高いほど学部教育活動は良好なものとなり、また、学部教育活動の優秀な学校は三つの適合性が高くなることは明白である。学校はこの指導思想から出発し、全体的に過去を総括し、現在を分析し、未来を計画しなければならない。専門家組織はこの「三つの適合性」から学校の教育活動を評価することになる。専門家は学校のハード面と現在の状況を見るだけではなく、学校が社会と経済発展の要求に積極的に応じる学校運営思想、能力、枠組みを持っているか、自主的かつ良質で循環的な改革と発展の体制を作り上げたかということを全体的に見なければならない。

 最後に、共同参加について述べたい。学部教育活動評価においては特に全員参加の必要性が強調されているが、これは全学教職員および学生が自己評価活動に参加しなければならないことを意味している。評価活動と教育活動の内容は高い水準で完全に一致しなければならないからである。自己評価過程は、実際に学校運営の指導思想を整理して学校の位置づけを行うという前提の下に、全学の教員と学生が着実に教育の基本を建設し、教育改革を推進して、教育管理を標準化するという過程を伴うものである。事実、多くの学校が評価というこの得がたい機会を教育活動の加速器や促進器、そしててことみなし、平素においては解決が難しい一連の問題を解決しようと努力している。例えば、学部教育活動指導の重視、学科の専攻の連絡調整、教育条件の改善、実験室建設、教員グループの建設などを行い、本当の意味で教育活動の段階や水準を上げているのである。これは、多くの学校が切実に理解している点であり、最も豊かな収穫を得ている点でもある。

 ところで、評価指標体系における学校運営指導思想と学校運営の特色に関連する要求を満たすため、多くの学校には、日常的な学校運営活動において真摯で系統的かつ全面的な整備を行うエネルギーはあまり残っていない。そこで、学校評価に参加するには一般的に自己評価の機会を利用して膨大な教職員、特に膨大な教員や教育管理者(すでに退職した年配の指導者、教員、教育管理者を一部含む)に学校運営の歩みを真摯に回顧してもらい、学校運営の指導思想と教育活動の全体構想を総括および帰納して、学校の位置づけを探すことになる。この討論、帰納、総括を通して、全学の教職員が共通認識を形成し、思想を統一する。そして、これを基礎として一段高い水準で総括を行い、指導性と綱領性のある文書を作成し、さらにこれを膨大な教職員が伝承、掌握し、共通の行動指針として活用するのである。

 また、比較的学校運営の歴史の長い学校は、教員と学生を組織して学校運営の歴史を総括および帰納し、学校が長期にわたる学校運営の歴史のなかで作り上げてきた学校運営の特色を掘り起こし、これを大いに広めることである。こうして衆知を集め、学校運営指導思想と学校運営の特色を総括することは、学校が徐々に良質な大学文化を作り上げていくことに役立つであろう。これは学校の長期的な改革と発展において、非常に貴重な財産となるであろう。

2. 学校教育を基礎とし、全面的な審査を最優先し、人材育成活動を全面的に促進させる。

 学部教育活動評価の主旨は、教育活動は学校の中心的活動であり、学部教育はその基礎であるということを強調することにある。学校の各種の活動は教育活動をめぐって展開されなければならず、教育の質は着実に高められなければならないのである。そこで、学部教育活動を行うためには、学校はまず学校運営指導思想を明確にし、教育活動の構想を整理して教育の基本建設を強化しなければならない。そして、教育改革を推進し、教育管理を強化して教育の質を高めなければならない。そこで、評価方案においては学部教育の教育規律遵守が強調され、学部教育は正しい方向に向けられた。また、高等教育の根本任務と大学の通常的な中心活動は人材育成であることが強調され、学部教育活動の総体性と全体性が留意された。これらすべてによって、学部教育活動評価の正しい発展のために必要な良質の基礎が築かれたのである。

 さて、学校の根本的な任務は人材育成であるが、そのためには学校の各種の活動を協調的に調整しなければならない。「三つの適合性」に求められるのは、実際には学校の各種の活動について、どの程度協調的に調整するか判断することなのである。ゆえに、方案の各指標は有機的な連係を備えたものとなり、評価活動も総体的かつ全体的なものとなっている。教育活動の内容を整理すると、これはすなわち正確な学校運営指導思想の指導の下に教育の基本建設、教育改革、教育管理を行うことである。簡単に言うならば1の前提(学校運営指導思想)と6文字3つの内容(建設、改革、管理)であり、学校が実際から出発して特色を出すことを奨励することである。

 評価指標体系から考えると、学部教育活動評価の指標体系には学校運営指導思想、教員グループ、教育条件と利用、専攻建設と教育改革、教育管理、学風、教育効果の7つの一級指標と1つの特別項目がある。一級指標の下には19の二級指標があり、その中で重要指標は11であり、一般指標は8である。評価方案が直接または間接的に関連するのは、大学教育のすべての面にわたっているようである。二級指標の下には教育活動に影響を与える44の重要要素が選定され、これらが観測点(観測点は三級指標でもある)とされる。これらの観測点を通して、学校の全体的な教育活動と人材育成の各部分に総合的な分析と診断が加えられる。そして、学校全体の改革活動が促進され、学校運営の水準が全体的に高められるのである。

  • ①「学校運営指導思想」とは学校の基本設計であり、これは学校の建設と発展に特に重要な意義を持っている。また、これは「学校の位置づけ」と「学校運営構想」という2つの二級指標を重点的に考察するものである。
  • ②「教員グループ」は「教員グループの数と構成」と「講座担当教員」の2つの二級指標を重点的に考察し、教育活動において教師が主導し教師が中心であることを強調する。教員グループの建設は教育の質を高めるために重要な役割を果たし、優秀な大学には必ず質の高い教員グループが存在しているはずである。
  • ③「教育条件と利用」という指標は学校運営の基本要件を提示しており、学校運営に最も必要な条件保障である。これは資源の占有と利用の関係はうまく処理されているか、学校管理は適切であるかということを示す重要な指標である。この基準は「教育の基本の設定実施」と「教育経費」という2つの二級指標において必ず教育活動を保障することを要求している。
  • ④「専攻建設と教育改革」は学校の学部教育活動を測る重要な指標であり、主に「専攻」、「課程」、「実践教育」の3つの二級指標において現れる。評価の重点は人材育成目標の実現、専攻建設、人材育成モデルの設計、教育内容と課程体系の建設、教育方法の改革などの面で構想が明確か、施策は有効か、効果は明白かということについて学校を考察することにある。

     

  • ⑤「教育管理」とは、管理者が一定の手段によって教育活動を学校既定の人材育成目標に到達させる過程である。「管理グループ」と「品質管理」という2つの二級指標は教育品質監視制御体系の主な部分を構成し、教育管理が学校管理において占める重要な地位を決定する。
  • ⑥「学風」とは、学校精神が集中的に反映されたものであり、校風の重要な体現である。これは主に「教師の態度」と「学習の気風」という2つの二級指標に反映される。
  • ⑦「教育効果」とは、教育の質を直接反映するものであり、学生の理論学習と実践教育効果が最終的に現れるものである。これは「基本理論と基本技能」、「卒業論文または卒業設計」、「思想道徳の修養」、「体育」、「社会的名誉」、「就業」など6つの二級指標から審査される。
  • ⑧「特色」とは、学校が長期にわたる学校運営の過程の中で形成してきた特有の、または他校より優れた独特で優良な様相のことである。特色は、人材育成過程を優れたものとし、教育の質を高めることに効果が明白でなければならない。特色には一定の安定性がなければならず、社会に一定の影響を与えてこれが認められていなければならない。

3.中国高等教育評価が直面する主な問題と発展の方向

 先に述べたように中国の高等教育評価はすでに25年の歴史を持っているが、「5年1期」制度が行われるようになってから評価業務はまだ一巡しただけである。そのため、実践においていまだ数多くの問題点と不十分な点が残っており、社会世論の反応も強烈である。これらの問題は発展の過程において引き続き改善と整備を進めて行かなければならない。

 まず、評価の方案が画一的であり、多様性と妥当性を欠いている。現行の普通大学学部教育業務水準評価の指標体系は単一的であり、分類指導やさまざまな学校の特徴の反映に不適当である。一つの評価方案ですべての学校を評価することは、明らかに妥当性を欠くという問題を抱えているのである。国務院の《〈中国教育改革および発展綱要〉の実施に関する意見》は「さまざまな類型、さまざまなレベルの大学はその発展目標と重点において多様でなければならず、各自が特色を出すようにしなければならない。」と明確に指摘している。また、評価標準には、自覚のあるなしを問わず一流を求めブランド校を手本とする志向性がある。そして、ある評価指標は差異を操作可能に設定しているため、専門家が評価過程で正確に把握することが困難となってしまう。千差万別の大学を区別して扱うことは非常に困難であるが、このことは大学が個性的な学校運営を追及する際に一定程度影響を与え、大学に特色を出しにくくしているのである。

 次に、評価の結論において過度に「優秀」を求めるため、これが盲目的な評価につながっている。すなわち、評価は水平評価であるので、評価の結論は優秀、良好、合格、不合格の4等級に分かれるものである。しかし、前期に評価に参加した学校の条件は比較的よかったので評価の結論の基準点は比較的高く、後に評価を受けた学校も数年の建設を経て大きく進歩していたため、多くの学校が期待度を高めた。その結果、すべての学校がみな優秀を得ることを望んだのである。これは不可避的に形式主義と虚偽という問題を生み出し、ある学校では教員と学生が評価のために大動員されるという過剰反応を示した。社会世論は正常な教育秩序を乱し、評価専門家を度を超えて接待し、虚偽を弄して材料を準備するなどの行為を強く批判した。

 第三に、評価の主体が単一的であり、社会の参加が不足している。中国の大学学部の教育活動評価は主に政府が行っており、具体的な取り扱いにおいては教育関連部門の「自作自演」となっているため、社会、特に雇用側の参加は非常に少ない。そのため、社会各界の意見と要望を評価過程に完全に反映することは困難となり、評価はわずかに政府部門と大学との遊戯のようなものに堕してしまっている。単一の評価主体、単一の基準から単一の評価結論が導き出されるという結果について、社会各界は当然ながらこれを認めず、教育界内部もこれを認めていない。

 第四に、評価過程が定式化し、形式主義を助長している。多くの指標に区分が欠けているために評価の診断機能が発揮されにくく、さらに傾向として同じ結論が求められやすいために専門家の現場審査は皮相的なものとなる。このため、学校の形式主義はさらに助長されることとなるのである。

 第五に、外部評価が氾濫し、学校がその負担の重さに耐えられないということがある。中国の高等教育評価体系においては、学部の教育活動評価は多くの評価のうちの一つに過ぎず、大学は政府のさまざまな部門の検査や評価を受けなければならないのである。例えば、発展計画司は大学設置の評議を、高等教育司は学部の教育活動評価を、社会科学司は大学人文社会科学の重点研究基地評価を、科学技術司は重点実験室評価を、学位委員会事務局は「211工程」と「985工程」の評価を、学位管理および大学院生教育司は学科と大学院生の教育評価などを担当している。そして、各部門の業務の性質が多様であるため、それぞれの強調するところもまた多様なものとなり、評価を行う際に評価活動の多発および乱発現象が生じるのである。政府の機能の変化にともない行政の審査認可も徐々に減少してきているにもかかわらず、各種の評価はますます増加してきている。学校は毎年さまざまな類型の評価を受けなければならず、このことが学校教育活動の正常な展開をひどく妨害しているのである。

 これらの問題に対して、教育部は過去数年間の評価の実践においてすでに一連の措置を取り、絶えず評価活動の改善と整備を進めることによって一定の効果を収めてきた。以下の評価に対する方案の研究制定活動も進行中である。評価活動は今後全体的な構想を改善し、「政府の主導と多方面の参加、基準としての科学と柔軟多様な対応、診断第一による結論追及志向の弱化」という原則を堅持しなければならない。政府は模範的評価と基準の制定など外的品質保障体系を主導して、大学が内的品質監視制御体系の建設を強化するよう導き、社会各界の力量が評価に参加するように調整しなければならない。外が内を促し、内と外が結びついた開放的、総合的、立体的高等教育品質保障体系を作り上げるのである。

 そのためには、第一に多様な高等教育の評価モデルと基準を作り上げ、さまざまな類型の大学運営の需要を満たさなければならない。さまざまな大学が自らの特徴に基づいて長所と特色を発揮することを奨励するのである。

 第二に、評価の開放度を拡大し、政府主導という前提を堅持した上で地方政府の機能をさらに発揮させなければならない。また、評価の仲介組織が機能を果たすように留意し、社会、特に雇用側の参加を拡大して社会のさまざまな集団の意見や要望にさらに耳を傾けなければならない。人民が心から満足する教育を作り出すよう努力するのである。

 第三に、評価モデルを改善し、結論追及志向を弱めて評価の診断機能を強調し、品質管理と品質監視制御の体系設立を促進しなければならない。大学教育の品質を持続的、安定的に高める良質のメカニズムを構築するのである。

 第四に、高等教育評価の立法化を急がなければならない。合理的に統合して評価類型を減らし、評価の種類を法定することによって、学校教育活動に対する衝撃と影響を減らすのである。

 第五に、評価の国際交流と合作を強化し、評価方法と技術の国際比較研究を進めなければならない。積極的に海外の先進的な経験と手順を参考にして、評価の科学性と有効性を高めるのである。

 その他に、各級政府は高等教育の品質を高めることを十分に重視し、経費の投入にさらに力を入れなければならない。科学はすべての学校運営コストを等しくするが、これは経費の教育への投入の基本論拠である。周期的な評価制度を堅持および整備して、中国高等教育の品質保障体系構築のために、よりよい制度的環境を作るのである。