第150号
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中関村ハードテクノロジーインキュベーター

2019年3月28日 華 凌(科技日報記者)/閻 欣(特派員)

 中国電子科技集団公司情報科学研究院(以下「中国電科」)と北京創客幇科技孵化器有限公司(以下「創客公司」)はこのほど北京市で、科学技術成果転化協同革新センター(以下「同センター」)を設立した。

 中関村管理委員会が重点的に支援するハードテクノロジーインキュベーターの中国電科ハードテクノロジーインキュベーターと創客本部実験室技術インキュベーターによる「ハードとハードがぶつかる」初の事業提携は、どのような火花を散らすだろうか。

融通発展の革新モデルを構築

 いわゆるハードテクノロジーとは、新エネ、人工知能(AI)、ビッグデータ、IoTなど、一定の技術力と独創性を持つ技術のことだ。

 創客公司の陳栄根パートナーは、科技日報の取材に対し、「同センターは一種の革新モデルだ」と述べた。

 さらに、「科学技術成果の形成と実用化には長い過程を踏まえる必要がある。人材と資源が関わり、一企業だけでそのすべてを揃えるのは難しい。そこで外部の人材や技術など革新資源を導入する必要が出てくる。長期的な視野を持つ機関は開放型革新モデルを採用し、内部と外部の資源を統合し、成果の形成を加速し実用化の質を高めることが多い」と説明した。

 中関村管理委員会党組メンバー、副主任の翁啓文氏は、「中国電科と創客公司は『相互補完、共同推進、ウィンウィン発展』を原則とし、各自のリソースの強みを利用し同センターを共同設立した。中関村ハードテクノロジーインキュベーター間の初の事業提携を実現し、その他のサービス機関の事業提携に理想的な見本を提供するとともに、大企業に向け革新を開放し、新型の革新・起業プラットフォームを構築することで、大中小企業融通発展の新たな道を切り開いた」と指摘した。

革新の成果と産業の結びつきを推進

 翁氏は「中関村の革新・起業の重点は近年、ハードテクノロジーの取り組みとなっており、そして科学技術成果の実用化の加速を重視している。中関村は北京科創センターの主要な場であり、さまざまな革新・起業の要素が揃ったエコシステムを構築しており、今後の任務は革新・起業のアップグレードで、そのうち特に重要なのは、革新の成果と産業の結びつきの推進だ」と指摘する。

 ハードテクノロジーインキュベーション協力プラットフォーム(インキュベーター)の強みはどこにあるのだろうか、その他のインキュベーターが参考にできる点はあるのだろうか。

 中国電科は科学技術成果と多くの産業があり、自身は一つの大手企業である。さらにその産業を基礎とし、科学技術成果の実用化を方針としているが、これは革新の成果と産業を結びつけるビジョンと合致している。

 陳氏は取材に対し、「当社がインキュベーションに重点的に投資している分野にはAIが含まれる。これには先端技術と応用技術が含まれる。大学と関連の研究機関はこれに関して、長年にわたり人材と技術を蓄積してきた。大学や研究機関との協力において、当社は科学技術成果の実用化に対し積極的にバックアップを行い、科学技術成果の企業との連結に協力し、企業が新技術を積極的に応用するよう促した。新技術の応用は、企業のアップグレードを促進した。企業は内部リソースにこだわらず、外部リソースの発掘に取り組むことで、開放型の革新を形成する。このような革新は今後のトレンドになる」と語った。

 中国電科の関係責任者は、「当社は革新駆動型発展の強化を堅持している。今回の協同センターの共同設立により、さらに多くのハイテクの研究開発と革新の成果の実用化を促し、中関村地域電子情報産業の発展に自らの価値で貢献したい」と述べた。

全面的な成果インキュベーションサービスを提供

 中関村ハードテクノロジーインキュベーションプラットフォームは、中関村モデルエリアで登録されている。専門的な技術プラットフォームとインキュベーションサービスリソースにより、関連のテクノロジー型起業プロジェクト及び企業に対して技術の研究開発、コンセプトの検証、中間試験、検査・測定などの関連条件を提供する。同時に事務スペース、起業指導、投融資、産業マッチングなどのインキュベーションサービスを提供し、科学技術成果の実用化を加速させる。

 今回の両社による事業提携は、成果の実用化により適した環境を構築するものである。

 説明によると、中国電科は自社が把握する豊富な人材リソース、各分野の研究成果を集め、関連リソースを統合することで、同センターに高価値の応用成果及び製品を提供できる。双方は市場化の方法に基づき、大学の人材・技術を導入し、コンテスト、会議・フォーラム、投融資、説明会などのイベントを開催する。

 陳氏は「AI、ビッグデータ、IoTは双方が協力し優先的に発展させる分野だ。我々は長年蓄積してきた経験を結びつけ、ターゲットを絞って科学技術成果の実用化に手段とルートを提供する。市場の需要を出発点とし、科学研究成果と市場の需要のマッチングを促す。さらに市場の検証とフィードバックにより、製品化や産業化などを進める」と話した。

 中国電科の関係責任者によると、同社の内部には大量の革新技術、実験設備、科学研究者があり、成果実用化プロジェクトを持続的に支援できる。

 陳氏は「双方は今後、ハイテク産業分野の科学技術成果の育成、人材育成、技術研究、実用化の実行などの面で各自の長所を発揮する。多様・多次元・多分野の協力を掘り下げ、成果プロジェクトに全面的なインキュベーションサービスを提供する。中関村ハードテクノロジーのインキュベーション水準を高め、中関村ハードテクノロジー革新成果の順調な実用化を進めていく」と述べた。


※本稿は、科技日報「"硬碰硬",撞出成果転化的別様火花」(2019年3月14日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。