第98号
トップ  > 科学技術トピック>  第98号 >  中国近海海洋生物のDNAバーコードデータベースの構築

中国近海海洋生物のDNAバーコードデータベースの構築

2014年11月27日  米山春子(中国総合研究交流センター フェロー)

 中国科学院海洋研究所は、すべての生物が固有に持つDNA配列(すなわちDNAバーコード)を種の識別タグとする、生物の種名を迅速かつ正確に客観的に特定するデータベースの構築を開始すると発表した。そ してそれは、海洋生態系の保全、海洋食品の安全性、海洋権益の保護、海洋生物の分類学と生態学、およびその保護に関する研究を支えることになると提唱した。生物種名を正確に判定するためには、も のさしで物の長さを測るのと同様、客観的な尺度が必要であるが、この尺度のひとつがDNAバーコードデータベースである。

 中国周辺の海域は、海洋生物の生物種が非常に独特で豊かであり多様なことでも知られており、このほど始動した「近海海洋生物のDNAバーコードデータベースの構築」プロジェクトでは、D NAバーコードのデータベースを構築し、貴重な海洋生物の種を特定する「尺度」を確立するとともに、海洋生物のサンプルを採取する。

 同研究所は、中国で最も権威のある海洋科学に関する総合研究機関であり、中心的存在にある。研究の範囲も基礎研究をベースに、応用から広く開発研究にまで及んでおり、ア ジア最大規模の海洋生物標本館を有し、国内唯一の海洋生物標本庫として標本78万余を収蔵している。

 同研究所は現在4隻の海洋調査船を保有し、このうち「科学号」は我が国最先端の調査船で、遠隔操作無人探査機「発見号」を搭載している。同船は、中国科学院の戦略的先導科学技術特別プロジェクト「 熱帯西太平洋システムの物質エネルギー交換及びその影響」に関連する科学調査を担うなど、大型海洋科学調査や様々な調査運航で活躍する予定である。