第100号
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中国の原発発展、環境汚染対策の有効な手段に

中国総合研究交流センター 編集部  2015年 1月27日 

 中国人民日報によると、中国国家核安全局と国家エネルギー局、国防科学技術工業局はこのほど、「核安全文化政策声明」を共同で発表した。声明は、原子力発電所の建設は再び大規模発展の軌道に乗り、原子力技術の利用事業は急速発展の新たな時期に入ったとし、原子力の安全を確保する圧力は増大していると指摘した。

原発発展、中国の環境汚染減少の有効な手段に

 中国では近年、煙霧現象が頻発しているが、大気汚染の主因は石炭の燃焼にある。原子力エネルギーは、低炭素で集中型のエネルギーであり、原子力発電による石炭発電の代替は、温室ガスの排出削減を大きく促進する可能性を持ち、中国の環境汚染を減らす現実的で有効な手段と言える。

 中国工程院の院士で放射線防護と環境保護の専門家である潘自強氏によると、単純に比較はできないが、発電方法についての系統的な比較にあたっては、発電所そのものではなく、燃料チェーンに基づいた比較を行うことが重要となる。原子力発電について言えば、原子力発電所そのものについて考えるのではなく、「採掘―湿式製錬―転換―濃縮―ユニット製造―発電処理―廃棄物処理」の全プロセスを見る必要がある。

 中国は1990年代中期、石炭発電チェーンと原子力発電チェーンによって生まれる環境被害を比較し、「大気汚染物の排出から考えると、通常の状況では、石炭燃焼発電は二酸化硫黄や窒素酸化物、粒子状物質などの汚染物を排出するが、原子力発電ではいかなる大気汚染物も排出されない。放射性排出物から考えると、石炭中には原始放射性核種が自然状態で含まれ、石炭燃焼発電所の煙塵を通じて環境中に排出される。一方、原子力発電所から環境中に排出される気体・液体排出物の放射線量は自然放射線の水準よりもはるかに低く、わずかに産出される固体廃棄物は密封処理されるため、外部には排出されない。石炭発電チェーンが外部に産出する放射線量は原子力発電所の50倍にのぼる」との結論を出した。

 国家エネルギー局元局長の張国宝氏はかつて、石炭が一次エネルギーの67%を占める中国にとっては、温室ガスを排出しない原子力発電所は現実的な選択肢だとの見方を示している。沿海に建設される原子力発電所は海水を冷却水とするため、淡水資源の節約ともなる。

 国際原子力機関の予測値によると、世界の原子力発電所の設備容量は2030年までに最大で727GW(1GWは10億W)に達し、現在の2倍となる見込みだ。

 中国国務院は2014年末、「エネルギー発展戦略行動計画(2014—2020年)」を打ち出し、世界最高の安全基準を取って安全を確保することを前提に、東部沿岸地域で新たな原子力発電所の建設を適時始動し、内陸部での原子力発電所建設についても検討・論証を進める方針を発表した。2020年までに稼働中の原子力発電所の設備容量は5800万kW、建造中の原子力発電所の設備容量は3000万kW以上に達する見込みだ。

原発の安全を確保するための「2つの1000分の1」

 日本の福島の事故が発生した後、原子力発電の絶対の安全に対する国民の要求は高まった。

 原子力発電の安全性を確保するため、原子力発電には「2つの1000分の1」という定量的な安全目標が掲げられた。第一に原子炉の事故が原子力発電所付近の個人または住民グループに与えうる急性死亡リスクは、その他の事故によって与えられうる急性死亡リスクの0.1%を超えないものとする。第二に、原子炉の事故が原子力発電所付近の個人または住民グループに与えうるガンによる死亡リスクは、その他の原因によってもたらされるガンのリスクの0.1%を超えないものとする。

 研究によると、この「2つの1000分の1」の安全目標を実現するには、原子力発電所の原子炉で一年間に炉心が重大な損傷を受ける可能性が1万分の1よりも少なく、事故初期に大量の放射性物質が放出される可能性が10万分の1である必要がある。

 「実際には、中国のすべての原子力発電所はすでにこの要求を満たしている。安全目標が立てられたことは、今後建設される新たな原子力発電所への安全要求はさらに高まった」。環境保護部(環境保護省)核・放射安全センターの副チーフエンジニアを務める陳暁秋氏によると、メカニズムから言えば、原子力発電所の設計にはすでに、重大事故を防止し被害を食い止める多くの措置が取られており、事故初期に大量の放射性物質が拡散するリスクは除去されている。事故後しばらく経ってからの放射性物質の拡散は緊急保護措置を取る時間が十分にあり、作業員や周囲の国民が事故の被害を受けるリスクは低い。

 原子力発電技術の進歩と安全要求の高まりにつれて、原子力発電所のシステムは複雑化を増している。説明によると、原子力発電所の安全には、場所の選定、設計、建造、試験、運行、廃炉などの各段階があり、各種の専門分野にかかわるものだ。原子炉のエンジニアリングだけが際立つが、地質学や気象学、水文学、構築物、機械設備、電器設備、設備鑑定、電気供給、放射線防護、固体・液体・気体の廃棄物処理、安全分析、廃炉などの各技術が欠かせない。原子力発電の各技術分野にはそれぞれ明確で厳しい法律や基準、ルールがある。多重的な事故防止によって、原子力発電所の安全性は非常に高くなっている。