第127号
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カーボン量子ドットとその性能に関する研究の進展(その2)

2017年 4月28日

史 燕妮:東華大学繊維材料改性国家重点実験室、東華大学材料科学與工程学院

カーボン量子ドットの作製およびその性能に関する研究に主に従事。

李敏, 陳師, 夏少旭:東華大学材料科学與工程学院

呉琪琳:東華大学繊維材料改性国家重点実験室、東華大学材料科学與工程学院

その1よりつづき)

3 カーボン量子ドットの生体画像における応用

 CQDsにはすばらしい蛍光性能と生体相溶性があるため、研究者たちは生物領域における各種CQDsの応用の可能性を試みている。これには、画像形成やバイオセンサー[51]、ナノ医薬作製装置[52]等がある。CQDsを利用したセンサー装置は、主に検査物質とCQDsの結合によって消光を生じさせ、蛍光信号の変化を導く。ナノ医薬品ではCQDsの表面修飾性を利用し、医薬品との結合によって薬物送達の目的を実現する。なかでも、最も広く研究されている生体画像はCQDsの応用であり、これには細胞画像と生体画像が含まれる。現時点では、文献のほとんどは画像技術による方法の模索とその効果の向上に集中しており、画像の仕組みは解決の待たれる問題の一つである。

3.1 細胞画像

 既存の重金属量子ドット材料に比べ、CQDsには安定的で調節可能な蛍光性能ばかりでなく、生体に対する無毒性と生体相溶性という優れた点において、生命および環境領域における応用で基礎を築いている。未修飾の裸のCQDsをヒトの胸腺がん細胞系MDA-MB-231とT47D細胞の画像に用いると、共焦点画像の結果において、CQDsはかなりの割合で細胞質の周囲に集中する。Chattopadhyayらは、マイクロ波アシストにより作製された表面修飾済みのCQDsを結腸がんHT29細胞のマーカーに応用したところ、紫外線により励起された結果、蛍光顕微鏡下においてHT29細胞は明るい緑および黄色の蛍光を示した[53](図5)。CQDsのナノサイズ粒子構造は、穴状の陥没により介在されるエンドサイトーシスによって細胞内部に侵入するのに有利である[54]。細胞膜上で吸着されるだけでなく、ほとんどのCQDsは細胞質内に進入可能だが、CQDsが細胞核まで進入して画像形成できることを伝える研究はわずかである[55,56]。このほか、細胞は小さいサイズのCQDsをエンドサイトーシス可能で、CQDsの表面修飾が可能であるという長所を利用すれば、CQDsの表面に一部の有効成分を、または細胞内にある種の特殊成分を接ぎ木することができ、細胞の標的認識が実現できる[57]

図5

図5 明視野、405nm、488nmで励起された、蛍光マーカーとしてのカーボン量子ドットにより処理済みのHT29細胞系のイメージ[53]

Figure 5 Cellular imaging of CQDs imaged under bright field, 405 and 488nm excitations, respectively[53]

3.2 生体画像

 生体内での用いる蛍光造影剤には発光度が高く、光安定性が良好で、無毒性で、かつ生体相溶性が高い等の長所が必要である。Gohらは、熱分解されたクエン酸により作製されたCQDsをPEGにより不活化し、かつ、ヒアルロン酸(HA)と結合させてHA-CQDsを構成し、生体画像を作製した結果、外皮を通じてCQDsの優れた蛍光性が観察された。PEGによって不活化されたカーボン量子ドットがさまざまな経路(皮下、皮内および静脈)で生体内に注入されると、造影剤の効果と役割を果たす[28]。CQDsの励起波長依存性を利用すれば、可視光から赤外線エリアまでの励起波長による画像効果が実現でき、赤外波長域で励起されたCQDsによってその体内での自家蛍光による干渉を効果的に回避できる。2014年にはAdvanced Functional Materialsにおいて、葉酸(FA)とフタロシアニン亜鉛(ZnPC)により修飾されたCQDsを光線力学的治療に用いた実例について発表された(図6)。これにより、FAを用いた修飾によってFAに対して感受性の高いがん細胞に対する標的性が高められるため、CQDsの定位に有利であることが分かった。一方、FA-CQDsを光増感剤ZnPCの効果的なキャリアとすると、注射48h後に非常に顕著な光線力学療法と生体画像が実現された。CQDsは粒径が小さいため、ただちに腎臓を通じて体外に排出される上に、成分は無毒で、動物は全体的に毒性反応を示さないことから、潜在性の非常に高い蛍光マーカーと画像試薬と言える。

図6

図6 (a)マウス体内の腫瘍中にCD-PEG-FA/ZnPc, CD-PEG/ZnPc, and CD-PEG-FAを注射後12h経過した後のZnPc蛍光写真; (b) マウス体内にCD-PEG-FA/ZnPc注射後の時間経過ごとの蛍光写真、ならびに(c)マウスの各主要器官の体外蛍光励起写真[58]

Figure 6 (a)Fluorescence of ZnPc(excited at 660nm)in tumor was imaged after 12h injection of CD-PEG-FA/ZnPc, CD-PEG/ZnPc, and CD-PEG-FA(b)CD-PEG-FA/ZnPc suspensions were injected into tail veins of tumor-bearing mice and the fluorescent signals were obtained at various time points. (c)Ex vivo fluorescence images of major organs of mice

4 終わりに

 CQDsについては、その化学的不活性、生体相溶性、低毒性という優れた性質から、新型の炭素ナノ材料として、生体画像やドラッグデリバリー、光電子デバイス等のさまざまな領域における応用研究が関心事となってきている。本稿では、主にCQDsの蛍光性能、生体相溶性およびアップコンバージョン性能を含む基本的な物理・化学的性質を概観し、特にCQDsの蛍光性能に影響を及ぼすさまざまな要素について重点的に取りまとめた。CQDsについてはその蛍光効果に基づき、細胞画像やバイオセンサー、ドラッグデリバリーにおける応用の可能性に関して、すでに関連の報告がなされている。一方、CQDの発光原理に関しては依然として開かれた課題であり、そのメカニズムに関する問題については、実験データによるさらなる検証や裏付けが必要であることが広く認識されている。また、多くの文献において、未就職の裸のCQDsは既存の半導体量子ドットに比べ、蛍光収率は依然として低いことが報告されている。このほか、蛍光収率が高く、かつ、操作が簡便なCQDsの作製方法は、研究テーマとして依然として科学者たちの関心が高い。しかし、CQDsはその優れた性質から、さまざまな領域、特にバイオ領域において開発と応用の可能性が高いものの、CQDsの理論と実際の応用研究に関してはまだ道のりが遠いことは否定できない。

(おわり)

参考文献

[28] Goh E J, Kim K S, Kim Y R, Jung H S, Beack S, Kong W H, Scarcelli G, Yun S H, Hahn S K.Biomacromol, 2012, 13(8):2554~2561.

[51] Jin X, Sun X, Chen G, Ding L, Li Y, Liu Z, Wang Z, Pan W, Hu C, Wang J.Carbon, 2015, 81 388~395.

[52] Pandey S, Thakur M, Mewada A, Anjarlekar D, Mishra N, Sharon M.J Mater Chem B, 2013, 1(38):4972~4982.

[53] Jaiswal A, Ghosh S S, Chattopadhyay A.Chem Commun, 2012, 48(3):407~409.

[54] Liu Q, Xu S, Niu C, Li M, He D, Lu Z, Ma L, Na N, Huang F, Jiang H, Ouyang J.Biosensors Bioelectron, 2015, 64 119~125.

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[58] Choi Y, Kim S, Choi M H, Ryoo S R, Park J, Min D H, Kim B S.Adv Funct Mater, 2014, 24(37):5781~5789.

※本稿は史燕妮, 李敏, 陳師, 夏少旭, 呉琪琳「碳量子点及其性能研究進展」(『高分子通報』2016年第1期、pp.39-46)を『高分子通報』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司