第158号
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中国・ブラジル地球資源衛星―「開花」が続く共同開発事業

2019年11月28日 鄧国慶(科技日報駐ブラジル記者)

 11月13日と14日の両日、ブラジルの首都ブラジリアで新興5カ国(BRICS)の首脳による全体会議が開催された。今年のテーマは、「革新的未来のための経済成長」で、優先議題は「科学技術イノベーション協力を強化」だった。約30年にわたり中国とブラジルは、共同開発事業「中国・ブラジル地球資源衛星(CBERS)」を展開し、成果を挙げ、ハイテクの分野における発展途上国間の協力のモデルケースと称されているほか、中国の宇宙飛行改革開放により、世界進出の先駆的事例となっている。

 1988年7月6日、ブラジルの当時の大統領ジョゼ・サルネイ氏が中国を訪問。両国政府は北京で、CBERS計画の合意書に調印した。これにより、中国とブラジルの地球資源衛星分野での協力が幕を開け、CBERSは中国・ブラジル両国の政府が協力する重要な分野となった。

 1999年10月14日、中国空間技術研究院(CAST)とブラジル国立宇宙研究所(INPE)が共同開発した1号機CBERS-1が打ち上げられた。同衛星シリーズは中国初の技術の難度が最も高く、用途が最も広いリアルタイムトランスポート型のリモートセンシング衛星で、中国衛星研究開発史上で初めて発射に成功してすぐに応用が始まったケースとして記録され、「南南協力」という発展途上国間の協力におけるモデルケースと称されている。

 1999年以降、中国とブラジル両国は、地球資源衛星4基を打ち上げ、環境保護・モニタリング、国土資源調査、災害モニタリングなど多くの分野に利用されている。両国の宇宙飛行管理・技術の水準が向上すると同時に、経済・社会の発展に効果的に寄与してきた。両国の宇宙飛行の分野の協力の成果は、双方の経済と社会の発展の各分野に広く応用されているほか、衛星データを無償でアフリカの後発開発途上国に提供し、CBERSに対する国際ブランドを構築し、ハイテクの分野の「発展途上国間の協力」において、最も成功したプロジェクトの一つとなり、さらに世界的にもテクノロジー協力の模範となっている。

 過去30年あまりの協力の過程で、中国とブラジルは数多くの困難と逆境を乗り越え、長年にわたる平等な協力関係において、「尊重し合い、寛容に相互に信頼し合い、団結、協力して、困難を乗り越える」という、宇宙事業の面で協力し合う精神を築いた。すでに衛星6基を共同研究開発し、新興5カ国(BRICS)リモートセンシング衛星コンステレーションプロジェクトを展開していたり、中国・ブラジル宇宙飛行協力分科委員会を設立し、両国政府の主管当局が手を携えて宇宙技術や宇宙応用、宇宙科学、人材交流などの分野における協力を深化させるよう推進したり、「2013--22年中国国家航天局とブラジル宇宙機関宇宙飛行協力計画」を継続して積極的に実行し、科学技術イノベーションを強化することにより、CBERS-4の軌道上での順調な運行を確保し、CBERS-4Aを年内に計画通り打ち上げる準備を進め、更にCBERS-5、6などを打ち上げるための協力を加速、推進させるなど、数多くの成果を収めてきた。

 INPEのCBERSプロジェクト責任者ペレイラ氏によると、CBERS-4Aの解析度は2メートルで、中国・ブラジル地球資源衛星シリーズにおいて現時点で精度が最も高いものである。同衛星のコントロールシステムや推進システム、カメラなど70%の研究開発は中国が行い、電源システムなど残りの30%の研究開発はブラジルが行った。「同衛星の運用が始まれば、両国の経済建設、環境保護、都市計画、防災減災などの分野に寄与するようになるだろう」とペレイラ氏。

 今後の協力について、ペレイラ氏は、「ブラジルと中国は、科学、技術、イノベーションなどの分野で、協力を拡大させる余地がまだたくさんある。衛星研究開発の分野における協力のほか、今後は深宇宙探査、北斗衛星測位システムなど複数の分野で、交流、協力を強化できる。ブラジルと中国の宇宙飛行機構が今後も引き続きCBERSというブランドの国際的影響力を強化、拡大し、BRICSという協力メカニズムを活用して、双方の協力を新しい『金色の10年』に突入させ、ブラジルと中国の宇宙飛行をめぐる力をさらに発揮させることを願っている」と語る。


※本稿は、科技日報「中巴地球資源衛星合作持続"開花結果"」(2019年11月15日付2面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。