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深圳ハイテクパーク 14倍に拡張

2019年6月5日 劉伝書(科技日報記者)

 中国で最も小さな国家ハイテクパークである「深圳ハイテクパーク」が、5月1日のメーデーを前に正式に拡張― 深圳市政府が発表した「深圳国家ハイテクパークエリア拡張案」(以下、「拡張案」)に基づき、深圳ハイテクパークの計画面積は11.52平方キロメートルから、159.48平方キロメートルまで拡大された。

 華為(ファーウェイ)や中興(ZTE)、騰訊(テンセント)、比亜迪(BYD)、邁瑞(マインドレイ)など、多くの有名企業を輩出してきたこのハイテクパークはなぜ拡張されたのだろうか? 今回の拡張により、どのような目標の達成が見込まれているのだろうか?

発展におけるボトルネックを打破し、より多くのイノベーションボーナスを

 面積だけを見ると、中国の国家ハイテクパークの中では最も小さいものの、深圳ハイテクパークは、テクノロジーイノベーションの分野における極めて高い生産性を備えている。

 深圳市の面積に占める割合はわずか0.6%と、猫の額ほどのこのハイテクパークだが、約20年の発展を経て、国内総生産(GDP)が、同市の約11%を占めるようになり、深圳市の約14%の国家ハイテク企業がここで誕生し、数多くのテクノロジー型中小企業とイノベーション起業人材を輩出し、中国全土において、イノベーション資源が最も集まり、イノベーションの成果が最も顕著で、イノベーションのムードが最も高く、イノベーションの環境が最も理想的なエリアの一つとなっている。そして、上場企業数や国家ハイテク企業数、国際特許数などは、中国の多くの省を上回るほどだ。

 それでも、深圳ハイテクパークは既に飽和状態で、発展のスペース不足という深刻なボトルネックに直面していた。

 あるソフトウェア開発に携わる国家ハイテク企業の責任者である高博士は取材に対して、「ハイテクパークのソフトウェアパークに進出したいとずっと思っている。パークのソフトウェア・アウトソーシング育成プラットホームや公共技術プラットホーム、情報サービスプラットホーム、現代アウトソーシング産業促進連盟は、人材育成やソフトウェアのテスト、技術サポート、情報サービス、政府と企業の連携が一体となった総合サービス体系で、企業の発展にとってとても有利な環境が整っている。何年も前から目を付けているが、借りることのできる場所がずっとない」と肩を落とす。

 新たな発展の動向に直面し、深圳ハイテクパークは管理範囲を拡大して、発展のスペースを拡大することが急務となっていた。

「科学教育資源が集まっている南山パークやハイテク産業の今後の発展の中心となる坪山パーク、ハイテク産業の基礎が強固な龍崗パーク、ハイテク産業の関連施設が整い、インキュベーションキャリアが集まっている宝安パーク、リニューアル、アップグレードを通して産業のレベルが向上している龍華パークなど、条件が比較的整っているパークを、深圳ハイテクパークの範囲に盛り込み、『一区(深圳ハイテクパーク)・二核(南山パークと坪山パーク)・多園(多数のパーク)』からなるハイテクパーク発展の構造を形成することになる」。

 深圳テクノロジーイノベーション委員会の関係者は、「今回エリアを拡張したのは、深圳ハイテクパークと深圳国家自主創新示範区(イノベーションモデル地区)のイノベーションモデルおよび戦略的役割を十分に発揮させるため、両エリアが連動して発展するよう促進し、相乗効果が生じさせることで、改革の効果を最大限向上させ、イノベーションボーナスを最大限引き出し、世界一流のテクノロジーパークの建設を加速し、ハイテクパークを広深港澳(広州・深圳・香港・マカオ)イノベーション回廊の主要なイノベーションの結節点、産業のハイエンド化発展の重要な拠点にするのが狙いだ」と説明する。

「やたら大きいだけ」ではなく優位性も拡大へ

 今回の拡張によって、深圳ハイテクパークの面積は一気に14倍になった。これにより、同パークのハードパワーとソフトパワーが稀釈され、「やたら大きいだけ」という状態に陥ってしまうことはないのだろうか?

 この点について深圳テクノロジーイノベーション委員会の関係者は、「創設された当初から、深圳はイノベーションを大胆に行い、他のハイテクパークとは全く異なる管理体制を採用している。それは『オープン型管理』と呼ばれているが、政府各当局の従来の権限や従来の審査チェーンは変えていない。ここには専門の管理委員会はないものの、市の力を一つにして共同でハイテクパークの発展をサポートしている。また、深圳は特区立法の形式を採用し、ハイテクパークの産業用地、テナントなどのスペース資源の配置をめぐる比較的整った制度設計を行った。ハイテクパークの建設計画からプロジェクト実施、人材の誘致、資金的サポート、管理体制、政府行為の規範化まで、自主イノベーション体系の全ての過程をカバーする政策チェーンを形成している」と説明する。

「拡張案」によると、今回のハイテクパークの拡張は、ハイテクパークの管理モデルをそのまま採用して推進し、ブランド的優位性を活用し、市全体を一体とみなし、産業構造とテクノロジーイノベーション資源を統一的に計画し、状況に合わせた対策を講じ、高水準かつ特色あるハイテクパークを建設し、ハイテクパークを中心として、イノベーションモデル地区を誘導することで、深圳ハイテクパークとハイテク産業の高い品質の発展を促進し、国際テクノロジーイノベーションセンターを建設するための重要なサポートを提供するというのが全体的な構想だ。

 深圳テクノロジーイノベーション委員会の関係者は取材に対して、「『拡張案』は、6つの対策を講じることでハイテクパークを拡張しながら、質も向上させる計画を立てている。対策の一つは、発展計画と政策体系を制定、整備し、スタート時からハイレベルな計画を立て、高い基準で世界一流のテクノロジーパークを建設することだ。深圳ハイテクパークの各区の産業基礎と優位性に基づいて、それぞれが異なる得意分野を備えつつ、連動しながら発展することを原則として、深圳ハイテクパークの各パークが協調しながら発展するよう促進し、企業が集まり、要素が整い、密接に協力し合う新興産業群を構築し、各パークがそれぞれ特色を持ち、際立つ専門分野があり、高い競争能力を備え、産業の分業と協力の新たな構造を構築する」と説明した。

 また、深圳は今後、政府の各関連当局のイノベーション資源を統合し、産業計画に基づいて各パークに的を絞り、調和ある配置を実施し、イノベーション資源が、各産業パークの特色ある産業の発展を十分サポートできるようにする。そして、深圳ハイテクパークの各パークは、大学、テクノロジー基盤施設、応用基礎研究機構、ノーベル賞を受賞した科学者が率いる実験室、新型研究開発機構、重点実験室、プロジェクト実験室、プロジェクト技術研究センターなどのイノベーションのためのインフラ、テクノロジーイノベーションサービスプラットホームを優先的に配置し、テクノロジーイノベーション資源が深圳ハイテクパークに集まるよう促していく。

短期・中期・長期の目標を定めて段階的に世界一流のパーク構築へ

 深圳科学技術協会主席や科学技術管理当局の重要ポストを歴任し、深圳ハイテクパークの発展を数十年見守ってきた中国源頭創新百人会の秘書長を務める深圳源創力離岸イノベーションセンターの周路明総裁は、「ハイテクパークのエリア拡張と、深圳の粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深圳、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、マカオ両特別行政区によって構成される都市クラスター)の協同イノベーションに参加するという目標は一致している。大湾区のハイテク産業界のリーダーとして、深圳は産業規模と多様性あるエコシステムを擁するイノベーションの担い手となり大湾区の産業発展を牽引していかなければならない」との見方を示す。

 産業の発展のスペースが不足しているという問題に対応して拡張を実施すれば、それで計画は終わりなのだろうか? 深圳ハイテクパークは拡張後も、高い品質の発展を遂げることができるよう、どのような計画を立てているのだろうか?

 深圳テクノロジーイノベーション委員会の関係者によると、「拡張案」に基づき、深圳ハイテクパークは、短期、中期、長期の三大発展目標を設定している。短期目標は、2020年までに、深圳ハイテクパークの管理体制、メカニズムをスムーズにし、発展のスペースを大々的に拡大させ、テクノロジーイノベーション能力、産業イノベーション能力、国際的な競争力、持続可能な発展の能力などを継続的に向上させ、1千億元規模の産業群を3-5ヶ所で形成し、国家ハイテクパークの総合ランキングの2位の地位を固めることだ。

 中期目標は、2025年までに、深圳ハイテクパークの「一区二核多園」の空間構造をさらに最適化し、地域の発展の質と費用対効果を安定して向上させ、各経済指標が急速かつ健全に伸びていく状態を保つほか、インターネットやバイオ医薬、生命健康、人工知能などの新興産業を育成・発展させ、1千億元級の産業群を5-8ヶ所で形成させ、重大テクノロジーインフラを構築し、世界の先頭を歩むリーディングカンパニーを育て、ハイテクパーク内の特許協力条約(PCT)に基づく特許の国際出願件数が市全体の70%以上、国家ハイテク企業が市全体の60%以上、社会全体の研究開発への出資が市全体の60%以上を占めるようにすることだ。さらに、深圳ハイテクパークが中心となって周囲に放射線状に発展をもたらし、イノベーションの分野で牽引的役割を全面的に発揮して、同市において知識、技術、産業の分野のイノベーションの強大な原動力となり、広深港澳イノベーション回廊において重要な位置を占めるようになることも目標に掲げている。

 長期目標は2035年までに、世界的な影響力を有する世界一流のテクノロジーパーク、産業のハイエンド化発展の重要拠点、広深港澳イノベーション回廊の主要なイノベーションの結節点、深圳国際テクノロジーイノベーションセンターの中心的原動力かつカギとなる地域、持続可能な発展の世界的なイノベーション・クリエイティブの都としての重要な担い手になること、としている。


※本稿は、科技日報「拡容14倍 深圳高新区"強身壮体"謀未来」(2019年5月7日第7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。