「中国水素エネルギー・燃料電池産業白書」発表
2019年7月10日 操秀英(科技日報記者)
中国初の「中国水素エネルギー・燃料電池産業白書」(以下、「白書」)が26日発表された。
「2050年、中国のエネルギー構造の中で水素エネルギーは約10%と推定され、必要量が6,000万トンに迫る。その際に、全国の水素ステーションは1,000基以上に達し、10兆元を超える経済波及効果が期待される」と、中国水素エネルギー連盟専門家委員会主任で同済大学の余卓平総長補佐は記者会見で説明した。
本書では、「水素エネルギー・燃料電池産業戦略創新連盟」(以下、中国水素エネルギー連盟)が30以上の機関をメンバーとして組織し、100人以上の業界専門家が6つの執筆グループを結成し、30数回におよぶ議論の場を設け、8カ月間にわたり編集し「白書」を完成させ、中国水素エネルギーおよび燃料電池のロードマップを打ち出した。
今回の「白書」によると、中国は世界一の水素大国であり、現在、年間2,500万トンの工業用水素の生産能力を有すると見積もっており、既に一部の水素エネルギーインフラと幾つかの燃料電池関連のコア技術を把握し、また86項目の国家基準を制定し、一定の産業設備および燃料電池設備の生産能力を備えているという。
一方、中国の燃料電池車に関する技術について、長年の研究開発を経て、すでに独自の技術を蓄積し、実験的に燃料電池車の運行を始めているとしている。2018年末まで、工業情報化部の「新エネルギー車推薦リスト」に選定されている燃料電池車種は計77車種(大型車を除く)に達し、上海、広東、江蘇、河北などに小規模の産業チェーン構築し、水素の大規模な商業利用の基盤づくりを完成させている。
2018年、中国の水素生産量は約2,100万トンで、エネルギー管理に基づく換算熱量が端末のエネルギー総量に占める割合は2.7%であった。同年、中国で中国水素エネルギー連盟が設立されたが、これは、中国の水素エネルギーの大規模な商業化への応用がスタートしたことを意味している。
「白書」では、中国は水素に関する独自の技術開発、設備製造、インフラ建設などで依然として先進国との格差があると分析している。近年、中国の水素エネルギーおよび燃料電池の産業化には、エネルギー産業・製造業の大型中核企業による枠組みづくりの加速、インフラの脆弱性、重点分野でのブレイクスルーの余地、地域産業の集積効果という3つの顕著な特徴が表われている。インフラ面では、サプライチェーンに組み込まれている企業は主に燃料電池部品や応用プロセスに分布し、水素貯蔵・水素インフラの発展が弱く、この点が「急所」となっている。
中国水素エネルギー連盟の統計によると、2030年には中国の水素ガス需要量は3,500万トンに達し、末端のエネルギーシステムのうち5%を占めるものと予想される。
元中国工程院副院長で中国工程院院士の乾勇氏は、数年の発展を経て、中国の水素エネルギー・燃料電池産業が「0から1」の成長を遂げ、産業システムの発展レベルの早急な向上が求められていると指摘した。また「最近、韓国などいくつかの国で発生した爆発事故が、水素の安全対する関心を引き起こしているが、これもシステム的な問題の表れである」と乾氏は強調した。特に、この分野は価格の高さやサプライチェーンの不備などの問題に直面しているが、それらもすべてイノベーションや業界全体のシステムの推進と計画に関係している。
このため、中国水素エネルギー連盟は『中国水素エネルギー・燃料電池産業発展行動案』を提唱し、戦略的に主導権をとりながら、水素エネルギー・燃料電池産業の質の高い発展を実現するように呼びかけている。またこの案では、イノベーションの強化、水素エネルギー・燃料電池産業の独自の発展のサポート、標準システムの改善、水素エネルギー・燃料電池産業の健全な発展の保障、テストモデルの探索、水素エネルギー・燃料電池産業の秩序ある発展の推進、国際協力の強化および水素エネルギー・燃料電池の共同発展の推進などにも言及している。
※本稿は、JSTが参加する国際科学技術メディア連盟に提供された記事「《中国氫能源及燃料電池産業白皮書》発布」(科技日報、2019年6月27日付)を日本語訳/転載したものである。