第126号
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寒冷高地の砂地の人工植生回復区の地表堆積物の粒度の特徴(その2)

2017年 3月31日

田麗慧:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室

研究テーマ:砂漠化防止対策と生態回復

張登山:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室,青海省農林科学院

彭継平:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室,国家林業局防治荒漠化管理中心

呉汪洋,張佩:北京師範大学環境演変與自然災害教育部重点実験室

その1よりつづき)

4 結果・分析

4.1 地表0~60cmの堆積物の粒度の違いの特徴

4.1.1 檸条砂丘の地表風砂堆積物の粒度の特徴

 図1に示すように、沙珠玉典型流動砂丘地表風砂堆積物は、各深度層でほぼ差異はなかった。0~60cmにおける組成は細粒砂が明らかに主であり、含有量は55.02%に達した。中粒砂がこれに次ぎ(38.32%)、シルトの含有量は2.48%で、残りの粒径の顆粒の含有量はほぼ0だった。

図1

図1 沙珠玉試験エリアの流動砂丘0~60cm堆積物の粒度

Fig.1 Grain size composition of land surface depositsin depth of 0-60cm of mobile dune in Shazhuyu

 粘土防砂バリアは、風を通さない防砂バリアの一種である。飛砂は、防砂バリアの影響を受けた後、防砂バリアの風食と防砂バリア両側の流砂堆積を引き起こし、一定の程度に達した後、砂面は安定傾向を示す[5]。同地区の丘間地は粘土が広く分布しており、その場で材料を入手することができる。そのため粘土防砂バリアは、常用される砂固定方式の一種となっている。檸条は1960年代に内蒙古と陝西から同地区に導入され、両地の砂漠エリアではすでに栽培に成功した実績がある[26]。風食や砂による埋没、乾燥、痩せ地に強く、根系が発達し、適応性が強く、砂丘の各部位で生長でき、防砂バリア保護区では20~30年生長することができる。沙蒿は同地区の天然分布品種であり、種子源が豊富で、乾燥に強く、生長が迅速で、根系が発達し、4~5年後に衰退を始めるが、砂固定の優良な先駆的植物と言える[5]。流動砂丘上に粘土防砂バリアを設置し、檸条と沙蒿を播種する。長年の固定を経た後も、砂丘の砂の粒度の分布形式に明らかな変化は発生しない。細粒砂の含有量が最も多く、30年檸条砂丘ではシルトと極細粒砂の含有量が顕著に増えた(図2)。50年余りの遷移を経て、60年代に檸条を播種した砂丘上では、0~20cmの砂丘の砂が明らかに細粒化した。20cm以下は流動砂丘と比べて変化は大きくなかった。40年的にわたって固定された砂丘では、表層の粘土とシルトの含有量が大きくなり、深度が高まるにつれて顆粒が粗くなる傾向が見られた。30年檸条砂丘では表層の粘土とシルト、極細粒砂の含有量が明らかに増加し、シルトの含有量は19.05%に達した。サンプリングの深度の高まりにつれ、砂丘の砂はゆっくりと粗くなり、各層の変異はすべての標本地で最大だった。20年檸条砂丘では、檸条の分布がまばらで、優占種は沙蒿であり、砂が露出し、その他の年限の砂丘と比べると、シルトの含有量が比較的少なく、細粒砂の含有量が顕著に増加して70%にも達し、中粒砂の含有量は明らかに低く、典型的なシングルピーク状態を呈し、40~60cmで砂粒は粗くなり、極粗粒砂を含むものとなる。固定7年(2005年)の砂丘では、シルトと極細粒砂の含有量が、流動砂丘に比べていくらか増加し、その他の顆粒の含有量は流動砂丘と近い。同砂丘の檸条の生長は比較的均等で、高度はすでに70cm前後に達していた。固定3年(2009年)の砂丘の表層(0~5cm)は、粘土防砂バリアの作用を受け、表層のシルトの含有量は27.72%、粘土の含有量は19.70%に達したが、5cm以下ではほとんど粘土とシルトは含まず、砂粒の含有量と分布方式は流動砂丘と最も近い。

図2

図2 沙珠玉試験エリアの檸条回復区の0~60cm堆積物の粒度の特徴

Fig.2 Grain size composition of land surface deposits in depth of 0-60cm of sand dunes broadcasted by Caragana korshinskii in Shazhuyu

 土性と植生分布との間には明らかな相関性がある。もし植生分布が均等であれば、土壤粒度の各層間の差は比較的小さい。もし植生分布がまばらか分散していれば、各層の差は比較的大きくなる。これは植物根系の土壤改良作用と密切な関係がある可能性が高い。すでに30年以上栽培された檸条は、砂地の0~60cmの土壤の改良作用が比較的強く、粘土とシルトの含有量は増加する。20年栽培された檸条は、地表堆積物の細粒化を促進できる。栽培年限が比較的短い植物は、砂地の土壌生成作用に対する寄与は比較的小さい。砂地の土壌形成は、ゆっくりとした自然の過程であり、人工的な介入は、表層土壤環境の変化を促進し、その回復プロセスを加速できるだけである。

4.1.2 烏柳丘間地の地表堆積物の粒度の特徴

 沙珠玉河はかつて試験モデルエリアを流れていたが、上流のダムの建設によって、現在はすでに断流している。同地区の丘間地の水分条件は良く、7月に上流で山津波が起これば、丘間地では冠水もあり得る。1960年代に最初の造林が始まってから、青海省治砂試験所は、丘間地に小葉楊(Populas simonii)と青楊(P.cathayana)、樟子松(Pinus sylvestris)、烏柳、砂柳(S.psam-mophila)、砂棘(Hippophae rhamnoides)などの実生苗を植え付けた。長年の調査を経て、烏柳や砂柳、砂棘の生長状況が最も良いことがわかっている。烏柳は種子が比較的採取しやすいことから、80年代以降、丘間地での烏柳の行列式造林が典型的な方式の一つとして広められ、今も応用されている。

 図3が示すように、封育草地の表層0~5cmは、極粗粒砂の含有量がとても少ないほかは、その他の粒級の含有量はあまり変わらなかった。5cm以下ではシルトと細粒砂の含有量がほぼ同じで、粒度の分布は明らかなダブルピークを示している。

図3

図3 沙珠玉試験エリアの封育草地の0~60cm堆積物の粒度の特徴

Fig.3 Grain size composition of land surface deposition depth of 0-60cm of lowland grassland in Shazhuyu

 図4からわかるように、50年と40年の烏柳丘間地の表層0~5cmの堆積物中のシルトと細粒砂の含有量はほぼ同じで、5cm以下になると顆粒は粗くなる。60年烏柳と比べると、50年烏柳の表層堆積物中のシルト含有量は25.24%と高く、粘土含有量も12.89%と高い。これは周辺環境の氾濫原と大きな関係を持っている。30年烏柳の40~60cmにおいては細顆粒物質が比較的多く、各層の粒径分布は似通っている。20年烏柳の表層0~5cmと深層20~40cmの粘土とシルトの含有量はそれぞれ20%と40%前後に達し、各層の砂粒の分布には明らかな差異があった。8年烏柳の丘間地の表層では粘土とシルトの含有量が比較的高かった。これは同地区の丘間地の典型的な特徴であるが、深層中の粗粒砂の含有量はその他の丘間地よりも明らかに高かった。これは堆積物に対する長稈深部植付の遮断作用が実生苗よりも低いためである可能性がある。烏柳を4年にわたって栽培した封育草地は、粘土の含有量そのものがその他の地域よりも高く、封育草地の粒径分布パターンと一致した。

図4

図4 沙珠玉試験エリアの烏柳回復区の0~60cm堆積物の粒度の特徴

Fig.4 Grain size composition of land surface deposits in depth of 0-60cm of sand inter-dunes planted for Salix microstachyain Shazhuyu

 同地域は初期において沙珠玉河の影響を大きく受け、一部の丘間地または氾濫原では河川堆積物があり、顆粒は比較的細かい(40年烏柳丘間地)。これに加えて上流でダムが建設され、夏季に山津波が起こると、ダムは排水を始め、増水の一部が試験モデルエリアの西部(40年・20年烏柳丘間地)に入り、丘間地に泥の堆積ができる。これには明らかな時間的なリズムの特徴が見られる。同地区の丘間地の土壤性質には空間的な異質性が存在する。研究過程において「空間代替法」を直接採用し、時間系列の変化を研究することには論争がある。

 「空間代替法」を利用した研究の前提は、異なる年代に樹種を植え付けた土地の条件が一致していることである。本地区の典型標本地の5cm以下の堆積物の粒度の組成を分散分析(ANOVA)した。砂丘の5cm以下の各層においては、植生回復区の違いに応じた粘土とシルト、砂粒の差異は明らかではなかった(p>0.05)。丘間地の堆積物についても、粒度の組成は類似した法則を示した。各植生回復区の堆積物の粒径の均等性の分析によると、砂丘の砂の粒径は一致性が高く(p>0.05)、丘間地堆積物の均等性にも大きな差異はなかった(p>0.05)。このため同地域における檸条を播種した砂丘の初期土壤条件は一致するものと考えられる。同様に烏柳を受け付けた丘間地の土壤環境も相似性を備えている(p>0.05)。このことからは本地区の植生回復区の地表堆積物を砂丘の砂と丘間地の堆積物に分け、「時間-空間置換法」を用いて粒度の特徴を分析することが合理的で実行可能であることがわかる。

4.2 表層0~5cmの堆積物の粒度の特徴

 トングリ砂漠の南東の縁にある包蘭(包頭-蘭州)鉄道沿線の流砂対策は、中国さらには世界の砂漠化対策史における典型的な模範と言え[27]、対策が始まってからすでに50年余りが経過している。砂坡頭における長期的な観測資料によると、50年の回復を経て、多年生草本が低木に代わって優占種となり始め、土壤クラストが育っている。深層土壤の水分含有量は減少し、表層5cmだけの土性が変化し、深層土壤の性状は変わっていなかった[11]。張登山[12]は、沙珠玉地区では、砂漠化した土地の土壤の機械的組成が正常の土壤状况に回復するには200年以上の時間が必要になると論じている。

 粘土(d<0.005mm)は、土壤有機質の主要な由来であり、植物の生長に必要な営養素を提供する[2]。本地区の砂丘におけるこの粒級の顆粒の含有量は明らかに少なく(図5A)、丘間地(氾濫原)の含有量は10%前後に達する(図5B)。2009年に作られた檸条砂丘は、粘土防砂バリアの影響を受け、表層の粘土とシルトの含有量がその他の砂丘を大きく上回るため、ここでは比較して議論することはしない。砂丘では対策が取られた後、表層の粘土の含有量が増加する傾向が見られる。50年と40年、30年の檸条砂丘の粘土含有量はその他の砂丘を大きく上回るが、回復年限の高まりにつれて、粘土の含有量は逆に低下する傾向が見られ、30年の粘土の含有量が最高となる。調査によると、30年檸条砂丘の植生の生長状況が最良で、檸条と沙蒿はまばらに分布し、頼草(Aneurolepidium dasystachys)が生い茂っている。20年檸条砂丘は活性化の傾向を示し、その表層の粘土含有量は流動砂丘に相当する。2005年に檸条と沙蒿を直接播種した砂丘では、植物の生長が比較的緩慢で、表層堆積物に対する植物の改良作用は比較的小さい。烏柳丘間地は、土壤の空間的異質性が存在することから、土壤に対する植生の改良作用は不明確である。だが図5Bからは、洪水のたまる作用を考慮しなければ、草本植物が優勢を占める部分において土性がより細かいことがわかる。

図5

図5 沙珠玉の人工植生回復区の表層0~5cmの堆積物の粒度

Fig.5 Grain size composition of land surface deposits on top 0-5cm of vegetation restoration region in Shazhuyu

 シルト(0.005~0.05mm)は、短距離浮遊物の主な由来であり[28]、植物が一定の高さまで生長すると、シルトの地表への沈降が遮断され[16]、表層の土壌生成過程の発生が促進される。図5Aからは、処理年限の違いに応じた檸条砂丘のシルト含有量と粘土含有量の変化は一致し、顕著な相関性が存在することがわかる(r=0.890、p<0.01)。50年檸条砂丘においては、檸条と沙蒿、頼草が生長しており、被度が比較的高い。40年檸条砂丘においては、檸条が主で、被度も低く、シルト含有量も比較的低い。2008年の烏柳丘間地以外の丘間地のシルト含有量と粘土含有量の変化の傾向は一致したが、両者の間には相関性はなく(p>0.05、図5B)、20年烏柳のシルト含有量が最も多かった。

 乾燥区では、砂土は、深層の水分が比較的良好で蒸発が少ないことから、植物の養分吸収速度が最も速く[2]、低木の生長が最良のマトリクスとなった[29-30]。>0.05mmの粗顆粒は、水分の下方浸透を促進し、植物は水分と養分をより良く吸収することができ、生長が促進される。図5からは、丘間地の粗顆粒物質の含有量が砂丘を明らかに下回ることがわかる。20年・7年の檸条砂丘の砂粒含有量は流動砂丘とあまり変わらなかった。30年檸条砂丘の砂粒含有量は最も低かった。砂丘の砂においては、粘土・シルトと砂粒との間には顕著な負の相関(p<0.01)が存在し、相関係数はそれぞれ-0.961と-0.982だった。図5Bからわかるように、20年烏柳丘間地では粗顆粒物質が最も少なかった。8年・4年烏柳丘間地での含有量はほぼ同じだった。封育草地と50年・40年烏柳丘間地の砂粒含有量は30年烏柳丘間地よりもわずかに低かった。丘間地の堆積物においても、粘土・シルトと砂粒との間に明らかな負の相関(p<0.01)が存在し、相関係数はそれぞれ-0.870と-0.781だった。

その3へつづく)

参考文献

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※本稿は田麗慧,張登山,彭継平,呉汪洋,張佩「高寒沙地人工植被恢復区地表沈積物粒度特征」(『中国沙漠』第35卷第1期、2015年1月、pp.32-39)を『中国沙漠』編集部の許可を得て日本語訳・転載したものである。記事提供:同方知網(北京)技術有限公司