第170号
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クコ畑から牛舎まで、画期的なテクノロジーが本領発揮

2020年11月30日 王迎霞、席 娜(科技日報特派員)

18件の成果で寧夏の農業スマート化のボトルネックを解消

 標準化された牛舎では、一定の間隔を置いて牛の体格を測定しなければならない。従来の方法だと、まず牛を縛りメジャーなどの道具を使って測定したが、このような方法だと、牛はストレス行動を起こしやすく、人に怪我をさせかねない。

 この難題をどのように解消すべきだろうか。

 寧夏科学技術庁が組織した専門家が検収を行った、第13次五カ年計画自治区重点研究開発計画重点プロジェクト「寧夏スマート農業キーテクノロジー統合応用とモデルプロジェクト」のうち、18件の成果が実用化された。これにより寧夏の肉用牛繁殖とクコ栽培のスマート化における多くのボトルネックを効果的に解消した。

 同プロジェクトを担当する寧夏農業IoT工学技術研究センターの責任者である王紅艶氏は「各種成果の応用により人件費を大幅に削減し、生産管理の効率を上げた。これがテクノロジーの驚くべき力だ」と述べた。

 スマート農業プロジェクトの成果は、現在寧夏の5つの国家級開発区の企業13社で実証と実用化が進められており、一部の成果は既に自治区外での普及が推進されている。

新システムにより動きまわる牛のサイズを測定

 自由気ままに動きまわる牛と、待ち構えるカメラとパソコン。牛があちらからこちらへ走ってくるだけで、測定が直ちに完了する。

 肉用牛体重・サイズ非接触自動スピード測定システムプロジェクトの責任者は「まず牛の側頭部を撮影し、データにより背面の曲面を取得する。その特殊なポイントを選択するだけで、サイズの主要パラメータを取得できる」と話した。

 自由に活動できる環境で牛のサイズを測定し、そこから体重を推測する。これは同センターと西北農林科技大学による共同の成果で、中国国内初の発表となった。

 専門家チームによると、従来の人の手による測定と比較して、新システムで導き出したサイズの誤差は±2%以内、体重測定の誤差は±15キログラム以内に収まるという。

 肉用牛の体重とサイズの非接触自動スピード測定システムは、寧夏スマート農業キーテクノロジーの数多くの成果の一つに過ぎない。

 中国初の高スループット土壌地力ロボット検査装置、中国初のクコ畑データ採取自動巡回点検プラットフォーム、標準化牛舎牛糞スマート清掃装置、自走式肥料・農薬一体型散布機、ドローン変量施肥技術、超音波害鳥駆除設備――クコ畑から牛舎まで、さまざまな画期的なテクノロジーが本領を発揮し、寧夏の特色産業の質の高い発展に新たな原動力を注いだ。

産業チェーン全体の総合的なサービスを提供

 寧夏科学技術庁農村科学技術処の徐小涛処長は「スマート農業プロジェクトは3年間の研究と模索、数えきれない実験と実践により計4つの課題を実施した。実に大変だった」と振り返った。

 近年、寧夏は農家の増収をめぐり、優れた資源を利用し、質の高い穀物、家畜、野菜、クコ、ブドウの「1プラス4」特色有力産業を重点的に発展させている。クコの実と肉用牛の精密生産のニーズに応え、産業チェーン全体の総合的なサービス提供を目指すスマート農業プロジェクトが誕生した。

 スマートかどうかは装備にかかっている。

 スマート農業プロジェクトはスマート化装備融合技術に焦点を絞り、北方民族大学、寧夏大学および浙江大学によりクコ畑専用虫害駆除設備、自走式スマート肥料・農薬散布植物保護装備、標準化牛舎牛糞スマート清掃装置などの5大スマート装備を開発した。

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自走式スマート肥料・農薬散布植物保護設備。撮影:王迎霞

 データ収集・伝送技術もカギとなる。

 農業環境センサー、高スループット土壌地力自動検査装置、「地・空・星」三位一体の複数ルート情報取得技術、高精度ドローン測位方法などの6大IoTデータ収集設備は、低コスト、低消費電力、高信頼性及び高集積化を実現している。

 最も重要なのは、情報サービスの「クラウド」運用だ。

 肉用牛生産スマート意思決定サポートシステム、クコ全産業チェーンビッグデータ意思決定サポートシステムなどの3大データ意思決定サービスプラットフォーム、寧夏スマート農業ビッグデータ指揮管理センタープラットフォーム、西電慧農―スマート農業成果交易クラウドサービスシステムなどの4大情報サービスプラットフォームが協力し、人工知能(AI)、ビッグデータ、ブロックチェーン、インターネット、クラウドコンピューティングなど複数の現代情報技術のシンクタンクを構築した。

東部・西部の科学技術協力メカニズムの新たな躍動的な解釈

 産業を深く耕せば、必ず実を結ぶ。

 寧夏科学技術庁がプロジェクトを立ち上げた後、農業IoTセンターは自治区内外の複数の研究所、大学、企業を動員し、共同でスマート農業プロジェクトの研究開発を行い、プロジェクトを実施した。

 徐氏は「これは東部・西部科学技術協力メカニズムの新たな躍動的な解釈のひとつだ」と指摘した。

 プロジェクトには、中国科学院合肥物質科学研究院、中国農業科学院農業科学技術情報研究所、浙江大学、西北農林科技大学などの大手研究機関が参画し、さらに現地の寧夏大学、北方民族大学、寧夏豊農互聯網科技有限公司などのバックアップにより、お互いの強みを補完している。

 現在では、一部のスマート農業の画期的な技術が全面的に導入され、明らかな成果を上げている。

 クコ拠点で導入されている農業環境センサー、クコ畑専用害鳥駆除設備、自走式スマート肥料・農薬散布植物保護装備などにより、人件費が平均で15%前後、クコの損耗が10%前後削減された。肉用牛拠点で導入されている低エネルギー消費広域ネットワーク牛舎環境高集積センサー、肉用牛体重・サイズ非接触自動スピード測定システム、標準化牛舎牛糞スマート清掃装置などはパフォーマンスを4倍高め、人件費を8割以上削減した。

 最新データによると、スマート農業プロジェクトのクコモデル栽培面積は433ヘクタール以上にのぼり、また4,100頭の肉用牛を登録・追跡している。延べ500人以上に対して各種育成を行い、博士課程・修士課程の大学院生を20人育成した。

 王氏は「スマート農業プロジェクトの実施は、寧夏の養繁殖分野のスマート化発展をサポートし、自治区全体における農業の精密化・スマート化への発展を促す」と述べた。


※本稿は、科技日報「従枸杞地到養牛場,"黒科技"各顕神通」(2020年11月9日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。