緑化が進行中―石炭採掘場には見えないエジンホロ旗の鉱区
2021年08月25日 張景陽(科技日報記者)、張暁艷(科技日報特派員)
内モンゴル自治区エジンホロ旗の鉱山企業85社はグリーン鉱山ガバナンスを実施し、鉱区とは思えない景色が広がるようになっている。(撮影・張俊英)
77億元
内モンゴル自治区のエジンホロ(伊金霍洛)旗はここ5年間で、累計77億元(約1,317億円)を投じて、2,000万本以上の高木・低木を植樹し、石炭採掘により地盤沈下したエリアや復旧エリア329平方キロの緑化を行い、土地回復率は71.87%に達した。さらに、年間5,500万トンの水を供給可能な、採炭汚水を総合的に利用するプロジェクトが完成している。「汚水」は「宝」に変わり、鉱区の緑化を進め、粉塵を抑える「生きた水」となっている。
内モンゴルオルドス(鄂爾多斯)市エジンホロ旗政府が6月18日明らかにしたところによると、今年も、4億元近くの資金を投じて、累計で450万本の木を植樹し、現地のグリーン鉱山化対策のために固い基礎を築いた。
苗木を積んだトラックや木々を丁寧に世話する人々の姿を見て、エジンホロ旗では「緑」が拡大し続けていると肌で感じることができる。グリーン鉱山化対策の実施が計画されている6万1,731ムー(約4,115ヘクタール)の土地のうち既に95%以上の計画が実施され完了している。
石炭生産量が中国全土で3番目に多く、国の重要なエネルギー戦略拠点、内モンゴル自治区の重要なクリーンエネルギー輸出拠点としてのエジンホロ旗には、鉱山企業が85社あり、うち、74社が石炭企業だ。しかし、近年、同旗の鉱区の景色が「鉱区には見えなくなった」と評価する人が増えている。
大きな経済効果:山に緑が戻り、村民が「株主」に
「今年、緑化が実施された土地が3,000ムー(約200ヘクタール)ある。どのように貸し出すか、話し合いましょう」。
「土地を貸し出すほか、村民に鉱山の緑化に参加してもらい、雇用を創出できないだろうか?」
エジンホロ旗烏蘭集団栄恒炭鉱の柴二栄炭鉱長と、炭鉱の所在地である納林陶亥鎮阿吉爾瑪村党支部の郝新明書記は、今年、企業と地域がどのように連携するかを話し合った。郝書記は、「当村は、村民の90%以上が転出してしまった。その中には鉱区移民も生態移民(遊牧生活をしている人々を移住・定住させる政策)も含まれる。この地域は乾燥して水不足で、以前は荒れ山ばかりで、羊も飼育できなかった」と振り返る。
そして、続けて村民の温祥さんが、「今では山は木や草がたくさん茂り、空気もよくなった。鉱区は、私たちの村の回復、緑化を無償でサポートしてくれ、良い状態になってから村民に返してくれた。そして、賃貸という形で、土地を借りて、植樹や養殖などに取り組んでくれている。うちは年間2万元以上の賃貸料が入ってくる。以前に農業をしていた時の収入よりも多い」と感慨深く語った。
村民の話を証明するかのように、栄恒炭鉱のオフィスエリアの外には、平らにならされた広い土地に植えるための苗木を作業員らがトラックからおろし、ウマゴヤシの種をまく作業の音が聞こえていた。
柴炭鉱長は取材に対して、「これは、新しく建設したエコロジカルパークで、今年の緑化計画はほぼ完了した。鉱区や山頂を緑化するだけでなく、産業のグリーン化にも取り組んでいる。まず、緑化を終わらせてから土地を村民に返還している。村民が山の畑で農業をしないなら、当炭鉱が土地を借り、エコな農牧業に取り組む」と説明した。
エジンホロ旗はここ数年、終始一貫してグリーン鉱山の建設を、グリーンなモデル転換を推進する発展プロジェクト、民生プロジェクトと見なして、ガーデニングの基準でグリーン鉱山化を推進し、各方面が共に取り組み、「グリーン」の面で優位性を生み出すよう努力し、グリーン資本を蓄積し、農家・遊牧民を「グリーン化チェーン」に溶け込ませ、土地の使用権の譲渡や利益配分などの方法で、「資源が資産に、資金が出資金に、農民が株主に変わる」ようにして、農村振興のために資産をストックしている。
ここ5年あまり、エジンホロ旗はグリーン鉱山化のために、累計で77億元を投じて、2,000万本以上の高木・低木を植樹し、石炭採掘により地盤沈下したエリアや復旧エリア329平方キロを緑化し、復旧率は71.87%に達している。あわせて年間5,500万トンの水を供給可能な、採炭汚水を総合的に利用するプロジェクトを実施している。すなわち採炭汚水は内陸西部の川8本、湖15カ所に流されて、生態補水が実施され、「汚水」は「宝」に変わり、鉱区の緑化を進め、粉塵を抑える「生きた水」となっている。また、農村・畜産エリアの灌漑条件、生態環境、人の居住環境などが、水によって生まれ変わっている。
新エネルギー:草木のない荒野が巨大な太陽光発電システムに
坂の頂上に立ち、周囲を見回すと、びっしりかつ整然とアルミの枠が設置されており、大部分の枠にソーラーパネルが取り付けられている。そして、谷間ではソーラーパネルに日光が反射してキラキラと輝き、石炭に頼らない発電が行われている。
国家能源集団の神東布爾台炭鉱・環境保護グループの高戦新グループ長は、山や野に敷き詰められたソーラーパネルを指さしながら、「これは当社が筆頭となって設置された太陽光発電プロジェクトで、5月から電力網に接続し送電を開始する計画だ。土地は、当社が緑化した後、農家・遊牧民に返還してから土地の使用権を譲渡してもらったものだ。農家・遊牧民は土地を通して、株主になり利益配分を得る。そして、そこで就職することもでき、安定した収入を得ることができる」と語った。
4.2万ムー(約2,800ヘクタール)の石炭採掘により地盤沈下した土地を、「太陽光発電所」へと華麗なる変身を遂げさせたのは、エジンホロ旗烏蘭木倫鎮巴図塔の石炭採掘により地盤沈下したエリアで実施されている天驕緑能50万キロワット(KW)太陽光発電モデルプロジェクトだ。
グリーン鉱山をどのようにしてさらに価値のあるグリーン資源に変えるのか? エジンホロ旗は、新しいアプローチを行い、「クリーンエネルギー」に焦点を当てて、グリーン鉱山をクリーンエネルギーの生産拠点にすることにした。
太陽光発電産業は、企業や農家・遊牧民に、明るい希望の「光」をもたらしているだけでなく、「エコロジー産業化、産業エコロジー化」といったアプローチにより、多くの人に益をもたらすようになっている。
蘇勒徳霍洛村・村民委員会の郝治華主任は、「当村は、グリーン鉱山化の恩恵にあずかっている。1,000ムーあまり(約66.6ヘクタール)以上の土地を無償でならしてもらい、さらに、電気も通った。多くの村民が、鉱区の草木の世話をしたり、機械を購入して植樹に参加したりして、良い収入を得ている」と話す。
高グループ長は取材に対して、「エジンホロ旗は、グリーン鉱山化において、『林が適している所には林を、草が適している所には草を植え、適地適木、高木・低木・草を組み合わせる』という原則をずっと堅持している。そして、地形復元、土壌再生、植生回復などに全力で取り組んでいる」と強調する。
そのために、エジンホロ旗は、国家林草局計画設計院に委託して策定した「山水林田湖草総合ガバナンス・グリーン発展計画」を基礎に、水利部黄河上・中流管理局西安計画設計院と国家林草局設計院という「国家レベル」の設計院に要請して、その土地の事情に合わせて、ケースバイケースの対策を講ずるべく、旗全域の全ての鉱山企業を対象に、的確な生態修復設計案を策定した。
エジンホロ旗は、鉱区や道路、街、村、パークなどのエリアの緑化を統一的に推進し、集中的かつ連続的なグリーン景観ベルトを構築し、生態を強力に守ると同時に、アテンションエコノミーを発展させ、一年を通じて緑があり、3季節に花が咲く「美しい鉱山」が、農村観光などを牽引し、第一次産業、第二次産業および第三次産業が融合した発展を実現している。
テクノロジーを駆使:グリーンな生産からスマートな採掘まで
エジンホロ旗では、世界初の完全な水によるスタンド、独自の知的財産権を有する世界初の採炭面が8.8メートルの特大高度スマート化採炭場、坑内の「5G+ドローンスマートパトロールシステム」、「三期三圈」生態環境保護技術などが採用されている。
石炭採掘の現場なのに、石炭を見ることもあまりなく、作業員の姿も見られない。エジンホロ旗の神東上湾鉱区には、モクモクと上がる煙はなく、体中が真っ黒になった作業員もいない。なぜなら、採掘から選炭、輸送に至るまで、石炭の生産のほとんどのプロセスが機械設備で行われているからだ。
特に、炭鉱坑内の「5G+ドローンスマートパトロールシステム」が採炭面8.8メートルという特大高度スマート化採炭場のベルトコンベヤにおける稼働に成功したことは注目に値する。レーザースキャンによる位置測定を通して、GPS電波や照明器具がなく、電磁気が複雑な環境下でも、ドローンは自動飛行、自動誘導、自動障害物回避、自動パトロールを実現した。
先端的テクノロジーが駆使され、神東鉱区は、効率が良く、安全で、グリーンな生産を実現しただけでなく、生態環境を最大限保護することができており、地上と地下の「ダブルグリーン」が実現している。試算によると、そのような徹底した対策が講じられている神東鉱区で深刻な砂ぼこりが発生する日数は、以前に比べて3分の1以下に減り、黄河に流れこむ土砂も毎年2,000万トン以上減少した。さらに、商品として販売される石炭に混ざる砂の量も3.74ポイント減り、石炭1トン当たり約1元の増収も実現した。年間平均生産量に基づいて計算すると、1年当たり数千万元から1億元ほどの増収となる。
エジンホロ旗の鉱山改良プロジェクトでは、テクノロジーのコンビネーションが一層絶妙になり、内部ではスマート化、外部ではグリーン化が進められている。神東布爾台炭鉱は、断層の影響で、生産がなかなか進まないなどの一連の難関を攻略し、わずか35日でスマート化掘削面を作り、基準化生産の水準が大幅に向上した。自動化率は最高97%に達し、業界で上位を走っている。
エジンホロ旗は、地上のグリーン化を進めながら、採掘、選炭、加工の新技術、新製法、新設備を大々的に採用し、地下でも全面的にスマート化を進め、採掘時のエネルギー消費を減らし、鉱山資源の開発と生態保護のバランスをうまく取っている。
エジンホロ旗は現在、企業が石炭のグリーンな採掘やスマート鉱山の建設、採炭汚水の徹底的処理、脈石の総合活用といった重点分野をめぐって、重要テクノロジープロジェクトを計画するよう全力でサポートすると同時に、オルドス現代エネルギー経済研究院が、「保安鉱柱ゼロの採掘、山跳ねゼロ」など6大課題技術の難関攻略と成果の実用化に取り組み、全国レベルの石炭分野における先端的技術の応用モデル拠点を構築するようサポートしている。
※本稿は、科技日報「緑色半径不断拡大 這里的礦区没了"礦区様児"」(2021年6月22日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。