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進む5Gの商用化―5Gコネクテッドカーまであとどのくらい?

2019年10月3日 姜璇(『中国新聞週刊』記者)/江瑞(翻訳)

商用化が加速する5Gにおいて最も業界が注目するのはコネクテッドカーへの応用だ。5Gとコネクテッドカーの融合とイノベーション、当該分野における各企業のポジション争い、応用シーンやネットワーク速度などの具体的な現状まで、5G時代の到来を詳述する。

 5Gが商用化に向け加速を始めるよりも前に、中国三大キャリアは北京、上海、杭州、深圳、広州などのモデル都市で、5G技術に関する屋内及び屋外試験を完了するとともに、医療・健康、教育、都市管理などの分野で5Gの応用ソリューショントライアルを展開していた。

 なかでも業界が最も注目したのはコネクテッドカーへの応用だった。それが5Gの「キラーアプリケーション」になるか否かはさておき、各通信キャリアや、ファーウェイ〔華為技術〕、ZTE〔中興通訊〕、クアルコムをはじめとする通信設備メーカー、果てはBAT〔B=バイドゥ、A=アリババ、T=テンセント〕に至るまで、コネクテッドカー分野ではとっくにポジション争いが繰り広げられていた。中国情報通信研究院無線通信研究センター副主任の潘峰氏は、5Gとコネクテッドカーの融合・イノベーションが起こることで、中国がコネクテッドカーの管制高地〔戦況を把握できる高台〕を掌握するだけでなく、5Gの中国におけるイノベーションと応用を加速させるのにも有利に働くと分析する。

 現時点で実現しているコネクテッドカーの応用シーンにはどんなものがあるのか。5Gの営業許可証の交付はコネクテッドカーの推進にどんな役割を果たすのか。何人もの業界関係者が指摘するのは、5G営業許可証の交付は業界への刺激となり、半導体など重点分野の発展と資源集中が加速するだろうが、5G技術に基づくコネクテッドカーや自動運転といった応用シーンが真に誕生するためには、政策支援やインフラ建設など多方面からのサポートがなければならないという点だ。「5Gコネクテッドカーの実現にはまだ時間が必要だ」

利用シーン

「車両が路上を走行中、前方の信号の状態はリアルタイムでコントロールパネルに表示されます。前方で道路工事がおこなわれていたり、濡れていたり滑りやすくなっている箇所があるなど注意が必要な場合は、ルート変更するようドライバーに警告を出します。歩行者が道路を横切っているという情報がキャッチされれば、ドライバーに直ちに回避するよう警告します......」。去年9月、フォード・モーターは江蘇省無錫市にあるコネクテッドカーモデル応用基地で初の公道走行試験を実施し、C-V2Xの様々な応用シーンを披露した。

「無錫のプロジェクトで披露されたV2Xは、主に4Gネットワークを通じて政府のクラウドプラットフォームから情報をキャッチする方式で実現された他、車両間でP2P方式による直接情報交換もおこなっていた」。フォード中国コネクテッドカー・プロダクトディレクターの何志強(ホー・ジーチアン)氏によると、無錫市政府は工業情報化部、公安部、交通運輸部並びにその他の関連部門と協力し、無錫市交通情報クラウドプラットフォームを構築。テスト車両はフォードのクラウドプラットフォームと無錫市のクラウドプラットフォームをドッキングさせて交通情報を取得し、アルゴリズムと車両の他の情報を組み合わせることでドライバーに情報提供しアラートを発する仕様になっていた。

 C-V2X(Cellular Vehicle-to-Everything、セルラーV2X)は今や、自動車メーカー、通信関連企業、通信キャリアなど、コネクテッドカー関連業界の最先端技術のなかの重点項目になっている。C-V2Xとは簡単に言えば、セルラー〔携帯電話回線〕を利用してクルマとあらゆるモノの接続・相互連携を実現するもので、主にクルマとクルマ(V2V)、クルマとネットワーク(V2N)、クルマとインフラ(V2I)、クルマとヒト(V2P)の4つのシーンが想定されている。

「C-V2Xは現段階では、主にLTEの進化版であるLTE-V2X/LTE-e V2X技術を基にしており、クルマのアクティブセーフティや交通効率の向上といったニーズに対応可能だ」。中国情報通信研究院技術・標準研究所産業IoT研究部チーフエンジニアの葛雨明(ゴー・ユーミン)氏によると、C-V2X技術は目下、標準化や小規模検証試験などを完了し、都市レベルの大規模検証試験と応用のパイロットプロジェクトの実施基盤ができている状態だという。

 5Gがコネクテッドカーにもたらす実質的進化とは何だろうか。次のデータを比較してみよう。自動運転車が時速60㎞で走行しているとき、遅延が60ミリ秒なら、車両の制動距離は約1m、遅延が10ミリ秒なら、制動距離は17㎝だ。しかし、遅延が5Gの理論値である1ミリ秒まで短縮されれば、制動距離はわずか17㎜になる。

 超低遅延、超高速、高安定性という5Gの特性は、車両の周辺環境感知、方針決定、実行能力を高め、コネクテッドカーや自動運転、特に車両の安全に関わる応用により良い条件をもたらしてくれる。「超低遅延、高信頼性を必要とする、車両制御に関わるハイレベルな自動運転機能には、隊列走行や遠隔操縦などがあり、ワイドバンドを必要とする応用には、高精度地図のダウンロードや動画の返送などがある」と清華大学蘇州自動車研究院インテリジェント・コネクテッド・ビークルセンター主任の戴一凡(ダイ・イーファン)氏は解説する。

 5G商用化のタイムスケジュールが前倒しされたことで、コネクテッドカー産業のイノベーションも活発に展開され、市場の明るい未来が見える。中国自動車工程学会のデータによると、中国国内の新車販売に占めるコネクテッドカーの割合は、2025年に80%、2030年には100%に達し、市場規模は総額1兆元を超える見込みだという。また、国際的コンサルティング会社のアクセンチュアは、中国のコネクテッドカー市場の規模は2025年には世界の4分の1を占めると予測している。

「移動するIoT最大の市場はおそらくコネクテッドカーだ。自動運転車をはじめとする5G技術の応用は、最初期の応用になるだろう」。工業情報化部部長の苗圩氏は「2019ボアオ・アジアフォーラム」で、工業情報化部が現在コネクテッドカーの研究・推進に取り組んでいること、また、交通部と共同で幹線道路のデジタル化・スマート化を加速させる計画であることに言及した。

 その少し前、2018年12月に工業情報化部が下達した「インテリジェント・コネクテッド・ビークル(コネクテッドカー)産業発展行動計画」(以下、「行動計画」)では、コネクテッドカー大規模商用化のタイムスケジュールとして、2020年以降、ハイレベル自動運転機能を有するコネクテッドカーと5G-V2Xを徐々に大規模商用化していくことが示されていた。他にも、2020年までにコネクテッドカー産業の業界を超えた融合で何らかのブレークスルーを図り、ハイレベル自動運転機能を有するコネクテッドカーの特定シーンにおける大規模応用を実現し、コネクテッドカー普及率30%以上を達成することが提示されていた。

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中国国際ビッグデータ産業博覧会2018で、参観者に5Gリモート運転の説明をする出展企業。写真/新華社

協同と生態系

「5Gは業界の垣根を超えた応用イノベーションが必要。ウィン・ウィンのビジネスモデルを共に模索し、5G応用に向けた『雲-管-辺-端〔クラウドコンピューティング、ネットワーク接続、エッジコンピューティング、端末〕』の協同配置を強化していかなければならない」と潘峰氏は指摘する。5Gは技術変革が大きく、製品が成熟期に至るまでの難易度が高い。商用化の初期、キャリアと設備メーカーは短期間でネットワークの計画、構築、運営維持等に存在する不確定性を完全に取り除かなければならず、しかも5G端末とネットワーク間の適合性は、商用化の過程で徐々に最適化し完全化していく必要がある。

 実際、国内三大キャリアは、コネクテッドカーの発展において主導権を握るべく、10年前からコネクテッドカー事業への布石を打っていた。また、2018年にはこぞって自動車業務を独立させ、コネクテッドカーまたはIoTの子会社を設立したり、コネクテッドカー業務をめぐり自動車分野と業務提携をおこなったりした。中国移動〔チャイナモバイル〕は2018年に、コネクテッドカー会社「中移智行網絡科技有限公司」(以下、「中移智行」)を設立。中国聯通〔チャイナユニコム〕も今年4月、傘下のコネクテッドカー会社「聯通智網科技有限公司」に戦略的投資家9社からの投資を受け入れた。その中には、一汽、東風自動車、広汽などの従来型自転車メーカーの名も複数あった。

 時を同じくして、ファーウェイなどの通信設備メーカーもコネクテッドカー分野への参入を加速させていた。「クルマづくり」をするらしいと盛んに噂されていたファーウェイは、5月27日、スマートカーソリューションの業務ユニットを設立し、その自動車業務を一部門に昇格させた。「コネクテッドカー、AI、エッジコンピューティングはファーウェイの未来を切り開く三大分野」。任正非氏はその少し前、ファーウェイコネクテッドカーを1つの業務グループに格上げし、自動運転などへの戦略的投資を拡大する意向を示していた。

 ファーウェイに関して言えば、三大主力業務である通信キャリア、法人向け事業、コンシューマ事業が相対的に成熟しており、自動車分野は新たなビジネスチャンスだと言える。ファーウェイは2013年の時点でコネクテッドカー業務部を設立し、同年、車載モジュールME909Tを発売。車載ネットワークを核に、コネクテッドカー及び自動運転分野で事業を拡大していた。

 ファーウェイとは対照的に、BATをはじめとするIT大手は、基本的にソフトウェアを切り口にコネクテッドカー分野に参入し、コネクテッドカーに「総合ソリューション」を提供する存在と、自社を位置づけている。例えば、テンセント〔騰訊〕は車載システム「AI IN CAR」、バイドゥ〔百度〕は「小度車載OSシステム」を武器に自動車分野に参入した。

 2019年に入り、BATはコネクテッドカー分野での動きを活発化させてきた。1月27日、バイドゥはプラットフォームの枠を超えたコネクテッドカーソリューションCarLifeを発表。これは去年の北京モーターショーで披露したCarNetに次ぐ、コネクテッドカー分野におけるバイドゥの2度目のアクションだ。バイドゥは2017年に「Apollo計画」を発表し、自動運転関連のプラットフォームを開放すると宣言。一度は自動運転ブームの中で、最も世評に上るIT企業となった。

 コネクテッドカー分野では相対的に動きの鈍かったテンセントも、5月22日に「エコ・コネクテッドカー」ソリューションを発表。テンセント系列及び第三者のコンテンツサービス体系を有機的にクルマに融合させることで、乗車前・乗車中・乗車後をつなぎ、AIのユースケースに基づき、スマートな状況対応化が誘導する「千人千面〔個人の履歴に基づくサービスの提示〕+服務找人〔サービスが必要な人に情報を提供〕」を実現させるという。

 アリババも引き続きコネクテッドカー分野に力を注いでいる。5月26日、アリババクラウドコンピューティング有限公司は千方科技と「協力枠組合意書」を締結。同時に、アリババドットコムは千方科技の株式2億2,300万株を36億元で取得し、千方科技の株式の15%を保有する同社第2の大株主となった。

 産業としての成熟度が上がるにつれ、コネクテッドカーと自動車のセキュリティやビッグデータとの関連性が非常に重視されるようになり、データの所有権も自動車メーカーのコア資産とみなされるようになってきた。中国コネクテッドカー産業技術イノベーション戦略連盟副事務局長の劉剛(リウ・ガン)氏は言う。「完成車メーカーの大部分は、自社データの安全性を保証し、将来的に自動運転分野で主導権を握るため、自前のプラットフォームを構築し、子会社を設立したり外部に深い関係の戦略提携パートナーを見つけたりして、デジタル化を実現するだろう」

自動運転の未来

 通信技術が世代交代するたび、アップグレードの重点となるのはネットワークの速度だ。向上した速度は、様々なバーティカル産業で応用される。5Gで定義されている三大要件は、eMBB(超高速)、mMTC(多数同時接続)、uRLLC(超低遅延・高信頼)だ。

 具体的に言うと、eMBBは主として3Dや超高精細映像などの高トラフィックモバイルブロードバンドを想定している。4Gネットワークの増強版と考えてよく、ユーザー体感速度は0.1~1Gbps、ピーク値は10Gbpsだ。また、mMTCの想定シーンはIoTなど多数のものが接続する応用で、関連の標準によれば、1㎢あたり100万個の端末・設備が接続可能であるという。そして、uRLLCの高信頼・超低遅延(1ミリ秒未満)という特徴は、自動運転やオートメーション化といった利用シーンに適合する。

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 5Gネットワークの構築及び配置の枠組みについて、3GPPはノンスタンドアローン(NSA)とスタンドアローン(SA)という2つの標準を設けている。5G商用化を進めるにあたってまずしなければならないことは、そのどちらかを選択することだ。

 中国電子科技集団公司第七研究所教授級シニアエンジニアで通信関係のベテラン専門家の李進良(リー・ジンリアン)氏は先ごろ論文で、NSA即ちeMBBは、高速・ワイドバンドの導入という面で4Gネットワークの増強版と考えてよく、長所は産業の進化が速いこと、短所はuRLLC及びmMTCに対応しないことだと指摘した。しかしこの短所が、まさにNSAの最大の欠陥なのだという。

 eMBB にしか対応しないNSAを導入すれば、5Gのバーティカル産業への応用及びイノベーションがある程度遅れてしまうことは避けられない。4GネットワークをベースにするNSAの遅延は数十ミリ秒から数百ミリ秒。これではコネクテッドカーなどのニーズを満たすことは難しい。それゆえ李進良氏は、「その意味では、NSAでなくSAこそが『真の5G』だ」と説く。

 SAはNSAに半年遅れ、2018年6月に発表されたばかりだ。だが、それ以前から、SA標準のネットワークモデルを選択するということは、中国の通信界、特に三大キャリアの共通認識だった。5GにおけるSA標準制定の過程で、中国移動は5Gの最初のネットワーク枠組標準の制定を主導するとともに、ファーウェイ、エリクソン、ノキア、インテルなどのグローバルパートナーと共同で、2018年2月に「5G SAブレークスルーアクション」、6月に「5G SAテイクオフアクション」を提起し、SA標準の実現を促した。

 しかし、今年2月に開かれたGTIサミット2019において、中国移動が2019年にNSAの大規模配置を宣言したことで、三大キャリアはこぞってNSAに鞍替えした。

 日程を前倒しして5Gの営業許可証を交付したことは、5Gの第1段階(NSA)技術ストックがある程度成熟したことの表れであり、また、超高速要件(eMBB)のみを一部先行で実現させることを意味してもいる。だが、自動運転やコネクテッドカーなど、大規模接続と超低遅延性を必要とする核心的応用については、やはり5G SAでのネットワーク構築が必要だ。

 これについて、中移智行総経理の黄剛(ホアン・ガン)氏は次のように語る。「第1段階では予想以上の超高速シーンが実現し、そのコンテンツ群だけでも新たなユーザー体験を十分にもたらすことができるだろう。また、超低遅延・高信頼要件も、現在大量の試験を実施中だ」。5G標準の成熟、ハードウェアの段取り、ソフトウェアプラットフォームの試験には、ある程度の時間が必要だ。「だが、5G時代は既に到来しており、その幕は既に上がっているのだ」


※本稿は『月刊中国ニュース』2019年10月号(Vol.92)より転載したものである。