第187号
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1度に9つの作業を行う自動耕種技術でコストを6割削減

2022年04月06日 過国忠(科技日報記者) 張平 金亦富(科技日報通信員)

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自動化・デジタル化・正確化稲・麦耕種設備技術推進・拡大の現場
撮影:過国忠(科技日報記者)

 太湖西山島に位置する江蘇省蘇州市呉中区金庭鎮縹緲村は、揚州大学と現地の農業リーディングカンパニーである蘇州太美農業発展有限公司が共同で建設した、産学研推進・拡大先進農業設備技術応用モデル拠点だ。

 2021年12月29日、現地では江蘇省農業重要技術協同推進・拡大計画プロジェクト自動化・デジタル化・正確化稲・麦耕種設備技術推進・拡大現場会が開かれた。披露された260馬力の自動運転トラクターには幅3.5メートルの9工程播種機が搭載され、北斗測位による共同制御技術を利用し、1度に耕耘施肥、二軸深耕切り株処理、(境界線となる)溝掘りなど9つの工程が行われた。

 同プロジェクト首席専門家で、揚州大学機械工程学院教授の張瑞宏氏は、「この装置は9工程の高度複式作業により、以前ならばトラクターが4、5回畑に入らなければできなかった秋季播種の煩雑な労働を減らし、小麦の耕種コストの60%を削減できる。また、自動化北斗施肥・播種測位共同制御技術により、施肥・播種のデジタル化測位、正確な作業引き継ぎ、労働者の高齢化の問題を解決するばかりでなく、土地の利用率を5~10%高め、人の手による作業を70%以上削減できる」と述べた。

 揚州大学の張氏のチームは近年、稲・麦の生産過程における際立った問題に焦点を当て、国及び江蘇省の関連する特定プロジェクトの支援を受け、中国国内の農業設備生産企業と協力し、複数の基幹コア技術を確立した。二軸成層切削ロータリ耕切り株処理、ダブル鎮圧ローラー衛星測位共同制御播種といった総合的技術の開発に相次いで成功し、北斗測位共同制御技術を応用して、一軸ロータリ耕では深く耕せず、土と草の混ぜ具合にばらつきがあること、既存の設備による播種では量しか制御できず位置を制御できないことなど、様々な問題を解決した。3次元測位播種スタイルを形成し、苗がすくすくと育つように保証することにより、肥料と農薬の使用を減らし、生産量と効果の向上というグリーン化農業生産の目的を達成する。

 江蘇省農機推進・拡大ステーション長の陳新華氏によると、江蘇省が2020年に農業重要科学技術共同推進・拡大計画プロジェクトを開始してから、張氏のチームが開発した自動化、デジタル化、正確化耕種設備の総合的技術の実証実験が、揚州市江都区、泰興市、黄海農場などで行われた。いずれも大きな成果を上げた。

 同チームが新たに開発した30馬力デジタル化条間除草機はデータ共有により、正確に作物の間を移動する。作業中に苗に接触し傷つけることはなく、条間の物理的な除草を可能にし、化学除草剤の利用を6割減らせる。さらにこの除草機は条間の雑草稲と再生稲を取り除くこともできるため、人手に頼ってきた作業をなくすことができる。

 蘇州太美農業発展有限公司の范峰社長は、「長江デルタは従来型農業から近代農業にモデル転換する重要な時期を迎えている。農業先進設備・技術の推進・拡大を急ぐことは、農業のグリーンで質の高い発展の促進に対して重要な意義を持つ。当社は現在、揚州大学の科学研究資源の優位性を活かし、金庭鎮政府の力強い支援を受けながら、太湖生態島先行モデルエリアの建設を目標に、従来型農業のモデル転換と発展を急いでいる。自動化・デジタル化・正確化設備技術を導入し、農業生産の質と効果の向上、コストの削減を促進している。複製可能で推進・拡大しやすい、生態がグリーンで環境保護の効果が顕著な循環型生態自動農場スタイルを構築する」と述べた。


※本稿は、科技日報「一次性完成九道工序 無人耕種技術可節約6成成本」(2022年1月12日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。