中国における植物の干ばつ耐性に関する研究の進展
2011年 1月20日
鞏志忠(Gong Zhizhong):
国農業大学教授、教育部「長江学者奨励計画」特別招聘教授、
中国農業大学生物学院院長
1998年2月、千葉大学薬学科、博士号取得。Plant Physiology (2006年~現在)monitoring editor、Physiologia Plantarum(2005年~現在)、JIBP編集委員、『科学通報』特別招待編集スタッフ。
従事してきた主な科学研究業務:主として植物の干ばつストレス応答におけるシグナル伝達、遺伝子発現制御の分子メカニズムの研究、ならびに小RNA非依存的転写遺伝子サイレンシング分子メカニズムの研究に従事。近年、植物の干ばつストレス応答及びDNA複製を伴う表現修飾複製等の方面における研究がいくつかの進展を達成。30篇余りの論文を、Cell、Genes Dev、Plant Cell、Proc. Nat1. Acad. Sci、Plant J、Plant Physiologyなど、国際定期刊行物に発表。2003年、国家傑出青年科学基金を獲得。2003年、科学技術部により国家重点基礎研究プロジェクト(973プロジェクト)「作物高効率干ばつ耐性の分子生物学及び遺伝学基礎」首席科学者として招聘、2004年、新世紀百千万人材工程の国家級人選に入選、2005年、教育部「長江学者奨励計画」特別招聘教授。2006年、中国青年科技賞受賞。
共著者:陳 智忠(中国農業大学生物学院植物生理・生物化学国家重点実験室)
中国は典型的なひどい水不足国家の一つであり、一人当たり水資源量は世界の一人当たり水資源量の約4分の1である。中国の干ばつ・半干ばつ地区は全国の国土面積の47%を占めている。中国の乾燥地農業は全国の総耕地面積の52%を占め、そのうち灌漑条件のない乾燥地は約65%を占める。全国の毎年の干ばつ面積は3.26億ムーに達し、被災面積は1.34億ムーに上っている。干ばつ地区は主に、中国の西北、東北、華北等地域に分布しているが、ここ数年は中国の南方において干ばつが頻発し、すでに全国の食糧生産量に深刻な影響を与えている。毎年の干ばつがもたらす損失は、ほぼその他の自然災害のもたらす損失の総和に匹敵する。干ばつの影響により、中国はここ40年来、推計によれば食糧が1億トン余りの減産となっている。気象予測によれば、中国は今後長い期間にわたり大規模な水不足状態に置かれ、干ばつは中国が直面する最大の挑戦になるとみられる。干ばつは食糧の大幅な減産を招き、中国はさらに多くの食糧の輸入を余儀なくされ、世界の食糧の安全性を直接脅かす可能性がある。中国の農業用水量は総用水量の73.4%を占めており、農業の水不足は工業用水にも直接影響を及ぼすであろう。したがって、水資源の不足はすでに、中国の工業と農業の発展を制約する重要な要因となっている。作物の干ばつ耐性を高め、農業用水を減らせば、限りある水資源を大きく節約し、経済作物と工業生産の発展に用いることが可能になる。そのため、作物の干ばつ耐性メカニズムの研究は中国政府の強力な支援を受けている。2003年、中国科学技術部は専門の重点基礎研究項目「973」計画プロジェクトを設立し、そのほか例えば、中国科学技術部の「863」計画、農業部、国家自然科学基金委員会等なども大量の研究費を投入して、作物の干ばつ耐性分子メカニズムの研究を行い、遺伝子組換え、分子育種等技術を通じて、作物の干ばつ耐性を高めることにより、日増しに深刻化する干ばつ・水不足の農業生産に対する影響に対処しようとしている。現在、作物の干ばつ耐性研究に従事している中国の主な機関には、中国科学院遺伝・発育生物研究所、中国科学院植物研究所、中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所、中国農業科学院、上海市農業科学院、中国農業大学、華中農業大学、清華大学、河南大学、中国科学技術大学、復旦大学などがあり、研究分野はシグナル伝達、遺伝子発現制御、分子育種など各方面にわたり、主に水稲、シロイヌナズナ等のモデル植物を研究対象としている。
ABAシグナル伝達経路
干ばつ等の逆境条件は、ABAのde novo合成、ABAの分解抑制、遊離ABAの結合態ABAへの転換抑制、結合態ABAの放出などの方式を誘導して、ABA含有量の蓄積をもたらす。ABAはABA受容体との識別を通じて、下流のABAシグナル経路を活性化し、それによって気孔運動、転写遺伝子の発現を制御し、水分蒸散を減らし、植物の成長に影響を与え、植物に逆境に対する適応能力が表出する。ABAシグナル経路において、H2O2とカルシウムイオンは二次シグナル分子として、下流のシグナル伝達を制御する過程で重要な役割を果たす。現在、いくつかの研究チームがそれぞれABA受容体の研究について報告を行い、多くのあり得るABA受容体を発見している。清華大学の張大鵬教授は、ソラマメ上表皮の中から一種のABA特異的結合タンパク質を単離・同定し、ABARと名付けた。タンパク質の配列分析と遺伝子クローニングによって、ABAR遺伝子が、葉緑素合成及びプラスチド‐核シグナルトランスダクションに関与しているタンパク質―マグネシウムキラターゼH-サブユニット(CHLH)をコードしていることを発見した。モデル植物シロイヌナズナにおける研究により、ABAR/CHLHがABAと特異的に結合でき、かつABAシグナルの伝達を媒介できることを明らかにし、さらにABAR分子のC-末端がABA及びABAシグナルを媒介する中核領域と結合していることを発見した。過剰発現やRNAi等の手段を通じてABARの含有量を変えると、植物に気孔運動の制御を含むさまざまなABA表現型が表出し、同時にいくつかのABA応答遺伝子の発現レベルにも影響を与えた。彼らの研究チームはまた、ABARのC-末端はABAと結合できるが、N-末端はABAと結合できないということも発見した。おもしろいのは、野生型においてC-末端を過剰発現させると、気孔運動、株の成長を含む、すべてのABA過敏感の表現型をもたらすことができるが、N-末端を過剰発現させると、過敏感な成長表現型しかもたらさず、気孔運動への影響は発見されないということである。彼らはさらに酵母ツーハイブリッドシステムを利用して、ABARと相互に作用する1個のWRKYタンパク質ファミリーをスクリーニングし、同定した。そのメンバーの一つ、WRKY40はABARの媒介するABAシグナル経路におけるネガティブレギュレーターである。ABAが蓄積している条件下で、一種の未知のメカニズムによって、ABARとWRKY40の相互作用を促し、それによって細胞核内に定位しているWRKY40の標的遺伝子に対する抑制を解除し、ABI5のようなABA応答に関わる遺伝子の発現を直接調節している。
ABARは一つの特殊なABA受容体として、ABAシグナル伝達の中で一定の役割を果たすが、主要なABA受容体だというわけではない。最近の研究が明らかにしているように、PYR1/RCAR及びその関連のタンパク質は一つの重要なABA受容体であり、その証拠は遺伝、生理・生化学、タンパク質結晶構造など多項目の実験結果から得られている。PYR1とその関連タンパク質はABAと結合した後、PP2C類タンパク質と結合し、下流のSnRK2類プロテインキナーゼに対するPP2C類タンパク質の抑制作用を解除し、それによってSnRK2.2/3/6を活性化し、NADPHオキシダーゼ、カルシウムイオンチャネル、ABI5、ABF2といった転写因子、S型陰イオンチャネルSLAC1等を含む、下流のターゲットタンパク質をリン酸化し、それによって気孔運動、植物の耐性、植物の成長発育等の過程を制御する。清華大学の顔寧研究チームは、世界のその他のいくつかのチームとほぼ同時に、ABA受容体及び、それと相互に作用するタンパク質PP2C類ホスホリラーゼ複合体についての構造解析を発表した。彼女の研究チームは、ABA拮抗薬pyrabactinとABA受容体構造の間の関係についても比較を行い、二つの重要なアミノ酸の様々な受容体の間における選択性を決定した。張大鵬研究チームは、カルシウムイオン依存性の二つのCDKP類プロテインキナーゼCPK4とCPK11の活性はABAの制御を受けており、ABAが存在している条件下では、活性化したCPK4/11は転写因子ABF1、ABF4をリン酸化することができ、それによって下流遺伝子の発現を制御するということを証明した。遺伝子をノックアウトした二重変異体cpk4cpk11はABAに対し敏感でない、脱水が比較的速いなどの表現型を表出する。中国農業大学の武維華研究チームは、CPK10とCPK23がABAシグナル経路に関与していることを発見した。CPK10は熱ショックタンパク質HSP1と相互に作用しており、CPK10及びHSP1の遺伝子ノックアウト変異体においては、ABAとカルシウムイオンによる抑制を受ける内向きカリウム電流が強まり、かつ干ばつに対する鈍感性を表出するため、変異体は脱水が比較的速い。最近の研究が示すところによれば、CPK21とCPK23はSLAC1と相互に作用し、SLAC1の活性を制御することができる。
H2O2と作物の干ばつ耐性
H2O2はABAシグナル伝達経路における重要な二次シグナル分子である。OST1プロテインキナーゼは細胞膜上のNADPHオキシダーゼAtrbohFを直接リン酸化し、H2O2の生成を制御することができる。河南大学の宋純鵬研究チームは長期にわたり、活性酸素による気孔運動の制御について研究してきた。彼らは早期の研究により、H2O2がソラマメの気孔運動制御に関与していること、シロイヌナズナGLUTATHIONE PEROXIDASE3(ATGPX3)の突然変異体は干ばつストレス下において脱水が速く、種子発芽及び幼苗発育過程においてH2O2に対し敏感で、細胞におけるH2O2の含有量増加を抑制していることを発見した。分子遺伝学、生物化学、電気生理学的方法を利用して、シロイヌナズナATGPX3の機能について詳しい分析を行い、ATGPX3とABI2のカップリングが共同でH2O2の信号伝達に関わっており、酸化還元シグナルを感受または伝達する機能を具えている可能性があるという仮説を提示した。これは、ATGPX3がABA及び干ばつストレスシグナルの伝達において、H2O2シグナルを特異的に伝えている可能性があることを示している。最近、彼らは中国農業大学の任東濤チームと協力し、H2O2がMAPK6キナーゼの活性を制御することによって、もう一つの重要なシグナル分子NOの合成に影響を与えていることを発見した。彼らの発見によれば、硝酸還元酵素NIA2はMAPK6と相互に作用し、かつMAPK6の基質とすることができ、その活性はMAPK6の制御を受けている。MAPK6遺伝子ノックアウト変異体において、H2O2処理はより多くの側根を生み出すことができる。華中農業大学の熊立仲研究チームは、干ばつに対して敏感な一つの水稲変異体dsm1を分離することができた。DSM1遺伝子は1個のMAPKKKキナーゼをコードするとともに、2個のペルオキシダーゼ(POX22.3, POX8.1)遺伝子の発現を制御している。DSM1を過剰発現させると、苗期水稲の干ばつ耐性を高めることができる。中国科学院遺伝・発育研究所の陳受宜、張勁松研究チームは最近、水稲由来のある受容体類プロテインキナーゼOsSIK遺伝子について報告を行ったが、この遺伝子の発現は干ばつ等、非生物的ストレスの誘導を受けており、当該遺伝子を過剰発現すると、遺伝子組換え水稲は比較的少ないH2O2を蓄積し、気孔の数が減少し、干ばつ耐性等の表現型を表出するが、遺伝子ノックアウト変異体は比較的多くのH2O2を蓄積し、気孔の数が増加し、干ばつ感受性などの表現型を示す。OsSIKのABAシグナル経路におけるポジションは、今のところはっきりしていない。
細胞膜の生成するH2O2がABAシグナル経路に関与している以外に、細胞内ではさらに多くの代謝経路、葉緑体及びミトコンドリアなどの細胞小器官が、活性酸素を生成することができる。だが、これらの活性酸素とABAシグナル経路との関係についてはほとんどわかっていない。我々の研究チームは、シロイヌナズナ主根の成長が高濃度のABAに対し敏感であるという特性を利用し、根の成長が敏感ないくつかのシロイヌナズナ変異体をスクリーニングによって得た。そのうちの1個の遺伝子ABO5は、ミトコンドリア中に定位している1個のPPRタンパク質をコードし、ミトコンドリア遺伝子のコードしているnad2 mRNA前駆体の3番目のイントロンのcis-スプライシング過程に関与している。NAD2遺伝子は電子伝達鎖複合体Iの1個のNADHデオキシ酵素サブユニットをコードする。abo5突然変異体においてはH2O2の蓄積が増加し、ABA処理を行うと、H2O2の蓄積増加がいっそう明らかになるが、これはABO5の媒介したミトコンドリアの生成する活性酸素がABAシグナルの伝達経路において重要な役割を果たしていることを示している。中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所の林鴻宣研究チームは、水稲変異体バンクからスクリーニングにより、耐干ばつ・耐塩性の1個の突然変異体を得たが、これに対応する遺伝子は1個の新しい亜鉛フィンガータンパク質をコードする。この遺伝子は変異後、突然変異体におけるH2O2の含有量増加、気孔の開度低下、気孔数の減少をもたらし、植物を一種の持続的なストレス状態に置くが、しかし植物の成長と発育に著しい影響を及ぼすわけではない。この遺伝子は転写活性を有する1個の転写因子をコードするとともに、活性酸素のバランスと関係のあるいくつかの遺伝子、例えばペルオキシダーゼ グルタチオン-S-トランスフェラーゼ等を直接制御する。この遺伝子の突然変異により、これらの遺伝子の発現は低下し、それによってH2O2の蓄積がもたらされる。この研究は、植物中の活性酸素の含有量を適度に高めることは、水稲のバイオマスに影響を及ぼしはしないものの、水稲のストレス抵抗性を高めてしまうということを示している。したがって、この遺伝子は遺伝工学によって作物の非生物的ストレス耐性を改良するという面で、重要な応用価値を有している可能性がある。もちろん、この遺伝子が制御するH2O2の蓄積は、ABAの制御するH2O2と同一の経路に蓄積されるわけではないようである。
植物の干ばつ耐性に対する転写制御の影響
ABAシグナル伝達経路には2本の主な枝分かれがあり、1本の経路はOST1/Snrk2.2/3を通じて気孔細胞質膜上のイオンチャネルを直接リン酸化するか、またはその他のプロテインキナーゼを活性化することによって下流へと信号を伝達し、最終的にイオンチャネルの活性を制御することによって、気孔運動を制御する。この経路のスピードは比較的速く、数分間で完成することができる。もう1本の重要な経路は、OST1/Snrk2.2/3が下流のABF2、ABI5などの転写因子をリン酸化するとともに、これらの転写因子を活性化し、それにより転写を通じてターゲット遺伝子の発現を制御する。したがって、各種転写因子についての研究は、ABAによる植物の干ばつ耐性制御に関する研究の主な内容の一つである。中国科学技術大学の向成斌研究チームはシロイヌナズナの中に、根系が発達し、葉片の気孔密度が減少している1個の後天性干ばつ耐性変異体を発見したが、この遺伝子は1個の新しいhomeodomain-START転写因子EDT1(enhanced drought tolerancel)をコードしている。エンハンサーを持ったT-DNAの挿入により、当該遺伝子は発現が高まる。だが、遺伝子をノックアウトした突然変異体にはべつに明らかな表現型があるわけではない。この遺伝子はタバコ等において過剰発現しても、遺伝子組換えタバコの干ばつ耐性を著しく高めることができ、潜在的応用価値を有する1個の遺伝子である。熊立仲研究チームは水稲のストレスが誘導した遺伝子の中から、いくつかの転写因子を選択し、その機能について研究を行った。そのうちSNAC1は、干ばつ耐性の改良にとり最も潜在能力のある1個の遺伝子である。SNAC1遺伝子の過剰発現は、成株期の遺伝子組換え水稲の大規模耕作田での重度の干ばつストレス条件の下における干ばつ耐性を著しく高め(結実率が対照に比べ22%~34%高い)、しかもその農業形質と生産量には対照との明らかな相違がなかった。対照と比較して、遺伝子組換え株はABAに対しより高い感受性を表出し、より多くの気孔を閉じることで水分喪失の速度を遅くすることができ、またより低い相対含水量の下で細胞膨圧を維持することができた。遺伝子組み換え水稲の栄養繁殖期における干ばつ耐性及び耐塩性も著しく強まった(対照より80%高い生存率を有する)。SNAC1は多くの遺伝子の発現を制御しており、水稲の干ばつ耐性の改善にとり比較的潜在能力をもった候補遺伝子である。水稲のbZIP23遺伝子がさまざまなストレスの誘導を受けて、当該遺伝子を過剰発現した遺伝子組換え植物は、ABAに対し敏感で、脱水が比較的遅く、一方、遺伝子ノックアウト変異体はABAに対し敏感でなく、脱水が比較的速い。この遺伝子はストレスと関連のある多くの遺伝子の発現を制御する。我々のチームは、1個のABO3遺伝子が1個のAtWRKY63転写因子をコードしており、abo3突然変異体はABA培養基において発芽緑化率が低下し、成長が抑制を受けることを発見したが、さらなる研究により、それが干ばつに敏感な表現型を具えていることに気付いた。これはABO3がABAのシグナル伝達に関与している可能性があることを示しており、そこでnorthern法を活用して、ABO3がどのような形式によってその他の遺伝子の発現に影響を与えているのかをさらに探ってみた。その結果、ABO3遺伝子の突然変異は植物体内のABA合成に関わる遺伝子の発現を変えてはおらず、ABO3は内生ABA含有量に影響を与えることによってではなく、一部のシグナル遺伝子の発現に影響を与えることによって、シロイヌナズナのストレスに対する応答を制御している可能性があるということが明らかになった。大量のnorthern実験でわかったのは、ABO3の欠損はストレス応答性重要遺伝子ABF2の発現を特異的に低下させる可能性があり、しかもこのような影響はABA誘導の早期に表れるということである。ABF2プロモーター領域においてWRKYタンパク質のあり得る結合部位W-boxを発見し、体外ゲル遅延試験法により、ABO3タンパク質は特異的にABF2プロモーター領域のW-boxと結合することができることを証明した。これは、転写因子ABO3はABF2遺伝子の発現を調節することによって、ABAシグナル経路に影響を及ぼしている可能性があり、しかもABO3タンパク質自身も、転写因子ABF2と類似したリン酸化またはその他の修飾の制御を受けている可能性があることを示している。
ABO1、ELP2、ELP4、ELP6遺伝子はそれぞれ、1個のヒストン アセチルトランスフェラーゼ複合体の4個のサブユニットをコードしている。このヒストン アセチルトランスフェラーゼ複合体は転写過程における伸長因子で、7個のサブユニットによって構成され、この7個のサブユニットは真核生物酵母、ヒト、シロイヌナズナにおいて高度に保存されている。この4個のシロイヌナズナ伸長因子サブユニットの単一変異体はすべて、狭くて長い葉片、短い根、ABAに対する感受性、アントシアニン合成の増加という表現型を表出する。また、この4個の単一変異体のさまざまな組み合せである二重変異体も、ABA感受性及び単一変異体に似た成長表現型を表出する。これらの結果は遺伝という角度から、シロイヌナズナにおける伸長因子の各サブユニットがABA感受性及び植物の成長発育を調節するという面で、複合体という形で共に役割を果たしていることを証明した。興味深いのは、シロイヌナズナにおいては、伸長因子複合体の中心サブ複合体に属するELP1/ABO1及びELP2の突然変異後にのみ、植物がABAの誘導する気孔閉鎖に対しいっそう敏感になるという結果を招き、一方、伸長因子複合体の付属サブ複合体に属するELP4とELP6の突然変異後にはそうならないということである。同時に、この4個の突然変異体はMV(methyl viologen)とCsC1が引き起こす酸化ストレスに対し非常に強い耐性を表出する。4個の突然変異体の遺伝子発現についての分析の結果、正常な成長状況の下では、4個の突然変異体のCAT3の発現量は野生型よりも高いが、しかし、ABA処理の状況下では、4個の突然変異体におけるZAT10の発現量が高くなるということを発見した。4個の突然変異体ではMYBL2の発現は低下しており、MYBL2は1個の単一反復配列のMYBタンパク質をコードしているが、これはアントシアニン合成におけるネガティブレギュレーターであり、そのため4個の突然変異体は強光処理の下において野生型よりも多いアントシアニンを合成することになる。研究結果が示しているように、シロイヌナズナにおける伸長因子はABA反応の調節、酸化ストレス、アントシアニンの合成において、いずれも中枢的な役割を果たしている。
中国科学院遺伝・発育生物学研究所の謝旗研究チームは、ユビキチンの媒介するタンパク質修飾及び植物のストレスシグナル伝達の分子メカニズムについて深く検討を行った。彼らはE3リガーゼをコードしている1個の遺伝子SDIR1が、アブシジン酸(ABA)に関連したストレスシグナル伝達経路に関与していることを発見した。SDIR1遺伝子の植物体内における発現は干ばつ及び塩ストレスによる調節を受けるが、ABAの影響は受けない。さらなる研究により、干ばつストレスの下においてSDIR1遺伝子は主に気孔及び葉肉細胞の細胞質膜中に発現すること、SDIR1遺伝子を過剰発現させると植物の成長を引き起こし、ABA処理の下での気孔のすばやい閉鎖、干ばつ耐性の増強等といった、ABAに対する過度な敏感反応と表現型を表出することができることを発見した。SDIR1遺伝子の過剰発現した遺伝子組換え株及びsdir1突然変異体において、ABAとストレスに関連したいくつかの重要遺伝子にはすべて変化が発生した。このことは、E3リガーゼのSDIR1はABAのシグナル伝達経路において、重要な調節作用を果たしていることを示している。だが現在、SDIR1の作用するターゲットタンパク質ははっきりしているわけではない。この遺伝子は水稲等の作物中に過剰発現すると、遺伝子組換え水稲の干ばつ耐性を著しく高めることができる。
復旦大学の王学路教授のテーマチームは、植物ホルモン・ブラシノステロイドのシグナル伝達経路及び、そのABAなど他のホルモンシグナル経路との相互作用ネットワークにおいて、植物ホルモン・ブラシノステロイドとABAの相互作用が、数百個の遺伝子の発現と生物学的プロセスを調節していることを発見し、ブラシノステロイドシグナル伝達経路の生化学・分子マーカー及びABA生合成変異体などの手段を利用して研究を行い、外生ABAがBSE1のリン酸化状態及びブラシノステロイド応答遺伝子の発現を調節することにより、ブラシノステロイドシグナルの出力をすばやく阻止することができることを発見した。さらなる研究の結果、ABAはブラシノステロイドの初期シグナル経路においては、ABAの早期シグナル伝達成分ABI1とABI2に依存して役割を果たすということがわかったが、これは植物ホルモン・ABAとブラシノステロイドの相互作用はブラシノステロイドシグナルの感受後に発生し、転写活性化の前ではないということを示している。
タンパク質グリコシル化修飾と干ばつ耐性
我々はモデル植物シロイヌナズナの葉片萎凋干ばつ関連変異体と、根系湾曲ABA関連変異体の一組のスクリーニング体系をそれぞれ確立し、それぞれスクリーニングによって、一群のlew(leaf wiltng)シリーズとabo(ABA overly-sensitive)シリーズの突然変異体を得、その中の干ばつ、ABAに関連した多くの重要な遺伝子をクローニングし、解析した。我々は日本のToshiya Muranaka先生及びその他の研究チームと協力し、LEW1の生物学的機能を研究した。LEW1遺伝子は、C55ポリイソペンテニルピロリン酸合成酵素ファミリーに属する、1個の新しいcis -イソペンテニルトランスフェラーゼをコードしており、in vitro実験により、LEW1はcis -イソペンテニルトランスフェラーゼ活性を具え、C80前後の鎖長のドリコールの合成を促すことができることを証明した。LEW1は部分的に酵母相同遺伝子変異体rer2を補い合っており、in vivoによっても、LEW1がポリイソペンテニルピロリン酸合成酵素の活性を具えていることが実証された。LEW1の突然変異は植物体内のC80、C85ドリコールの含有量を著しく低下させ、タンパク質グリコシル化のレベルを低下させた。干ばつ条件の下では、突然変異体lew1中の分子シャペロンBiP2及び上流転写因子AtZIP60の発現量は野生型よりもずっと高い。同時に、突然変異体lew1には高温、暗闇、無糖の条件下で、より早く黄化枯死現象が現れ、一方、一定の浸透圧ストレスは突然変異体のこれらの枯死過程を緩やかにすることができる。これらの結果はすべて、一定の浸透圧ストレスがタンパク質の正確な折り畳みにとって有益であることを示している。さらに重要なのは、干ばつ、高塩、高浸透圧の誘導の下で、突然変異体lew1中のRD29A、COR47、RD22の発現量が急速に上昇することであり、これはLEW1の突然変異が一種の浸透圧ストレスの早期応答メカニズムを活性化し、それによって正常な水分条件の下で水分欠乏の葉片萎凋表現型が出現し、植物をより早く干ばつストレスに適応させるようにしたのではないかと推測される。研究結果が示しているように、LEW1は1個の新しいポリイソペンテニルピロリン酸合成酵素をコードし、C80、C85ドリコールの合成を促し、タンパク質グリコシル化のプロセスに関与し、その突然変異はある種の浸透圧ストレスの早期応答メカニズムを活性化する。これらの結果は、タンパク質のグリコシル化は浸透圧ストレスにおいて重要な役割を果たし、しかも一定の浸透圧ストレスはタンパク質の正確な折り畳みにとって助けとなり、タンパク質グリコシル化が損なわれることによってもたらされる植物のストレスに対する感受性を軽減するということを示している。
LEW3遺伝子のコードするタンパク質はɑ-1, 2-マンノース転移酵素活性を具え、酵母中のALG11と32%の相同性を有している。酵母において、ALG11はN-結合型オリゴ糖鎖Man5G1cNAc2の合成に関与し、当該オリゴ糖鎖の組立過程における最後の1個のマンノース残基の加入を促し、そのあとリン酸ドリコール担体上のMan5G1cNAc2オリゴ糖鎖に結合すると、小胞体膜の細胞質側から小胞体膜腔内側へと方向を変え、さらに糖鎖の合成と修飾を行う。LEW3もALG11と同じく小胞体に定位し、シロイヌナズナの各組織器官の中に発現している。lew3突然変異体中には少量のMan3G1cNAc2及びMan4G1cNAc2の不正常なオリゴ糖鎖の蓄積があり、しかも高マンノース型糖鎖の含有量が低下し、複雑な糖鎖の含有量が増える。lew3突然変異体は発育が正常でなく、稔性が低く、セルロース合成も影響を受けて細胞壁が薄くなり、木質部が萎陥し、同時に突然変異体は浸透圧ストレス、ABAに対しても敏感な表現型を表出する。突然変異体における糖タンパク質のN-グリコシル化の欠損により、浸透圧ストレス、干ばつストレス及びABA処理に際し、UPR経路は強烈に活性化される。これらの結果はいずれも、糖タンパク質のN-グリコシル化プロセスが植物の成長発育及びストレス応答において、非常に重要な役割を持っていることを物語っている。
もう1つの細胞壁が薄くなり、木質部が萎陥した突然変異体LEW2・LEW2遺伝子はセルロース合成酵素複合体の1個のサブユニットをコードする、AtCesA8/IRX1遺伝子の1個の新しい対立遺伝子であり、当該遺伝子は植物体内の二次細胞壁セルロースの合成をコードし、制御している。以前に発見したシロイヌナズナ中のいくつかの部位の劣性突然変異は木質部の萎陥した表現型をもたらしたが、水分輸送の欠損は観察されなかった。研究の結果、lew2突然変異体の葉は高蒸散の条件下で萎凋が出現するが、同様の条件下で、野生型株はいかなる影響も受けないということがわかった。検査測定により、lew2株の茎から流出する樹液量は野生型の半分でしかないことを発見したが、そのことはlew2株においては木質部の萎陥により水分輸送が阻まれていることを暗示していた。植物を正常な条件の下で一種の干ばつストレス状態に置くと、それは一種のシグナル誘導植物に転換し、形態、生理、分子のレベルから応急措置を講じ、こうした干ばつストレスに適応することができるようになる。同時に、植物体内のセルロース合成のプロセスが妨げられることによって、上流のショ糖など可溶性糖の蓄積のフィードバック調節が行われ、糖誘導を受けたABA生合成遺伝子ABA2/SDR1が発現するようになり、ひいてはABAの合成が増加する。ABAは一種のストレスシグナルとして植物体内の浸透圧調節メカニズムの活性化を誘導することができ、植物の浸透圧調節能力を高めることによって、この種の水分(干ばつ)ストレスに適応する。研究結果が示しているように、LEW2/AtCesA8遺伝子の機能は、木質部の萎陥を防いで植物体内の適度な水分輸送を保ち、セルロースと可溶性糖の合成比率を調節して植物の浸透圧調節能力を高めることにある。同時に、木質部の萎陥が引き起こす水分輸送の阻害が一種のシグナルに転換できるせいで、植物の細胞防衛運動と細胞の浸透圧調節能力がコントロールされているということは、セルロース合成、細胞壁構造が植物の干ばつ・浸透圧ストレス応答にとり、一つの重要なファクターであるということも示している。
DNA複製とABA
根の成長がABAに対して敏感な突然変異体をスクリーニングする中で、我々は1個のABO4突然変異体を得た。ABO4遺伝子はDNAポリメラーゼεの触媒サブユニットをコードする、At1g08260/POL2a/TIL1遺伝子の1個の新しい対立遺伝子であり、DNAの複製、損傷修復、DNA組換えなどのプロセスに関与している。abo4-1突然変異体の種子発芽と幼苗成長はMMSに対して過敏感であり、幼苗成長は紫外線UV-Bに対しても敏感である。DNA損傷が誘導する遺伝子GR1、RAD51、MRE11、BRCA1、KU70はabo4-1突然変異体内で組成型が高発現し、MMS処理は野生型及びabo4-1突然変異体におけるこれら遺伝子の発現を増やし、しかも突然変異体における増加幅は野生型よりも大きい。細胞周期関連遺伝子H4bとCYCB1;1の発現が高まることは、abo4-1突然変異体細胞周期のS期とG2/M期が延びたことを示している。abo4-1突然変異体の相同組換え頻度の明らかな増加は、ABO4遺伝子がDNAの相同組換えプロセスに関与していることを物語っている。ABA処理は野生型及びabo4-1突然変異体相同組換えの頻度を増やし、結果としてabo4-1突然変異体内のDNA断裂の増加を招くが、ABA処理がGR1及びMRE11遺伝子の発現を増強し、RAD51、BRCA1、KU70遺伝子の発現を抑制するということは、MMS、ABA処理のこれら遺伝子に対する発現調節のメカニズムが同じではないことを示している。我々は同時にDNA複製と関連のあるその他の突然変異体を検査測定し、ror1/rpa2a、fas1もABAに対し敏感だが、DNA polymerase A1pha突然変異体にはABA感受性の表現型がないということを発見した。これは決してすべてのDNA複製関連タンパク質がABAシグナル経路に関与しているわけではないことを物語っている。最近、タンパク質リン酸化修飾に対するABAの影響についてのある研究報告は、ABA処理を行ったシロイヌナズナはDNA複製因子Cのリン酸化の程度を下げることができることを明らかにしたが、これはDNA複製に対するABAの影響が、リン酸化シグナルを通じて実現されている可能性のあることを示している。
その他の干ばつ耐性関連研究
華中農業大学の張啓発研究チーム、上海市農業科学院の羅利軍研究チーム、中国農業科学院の黎志康研究チーム等は、長期にわたって水稲遺伝資源の基礎及び応用基礎研究に従事し、節水干ばつ耐性稲の研究方面において、干ばつ耐性と密接な関連のある一群の量的形質遺伝子を定位した。彼らのいくつかの研究はすでに生産に応用されている。例えば、羅利軍チームは中国南方で初の節水干ばつ耐性稲「中旱3号」、節水干ばつ耐性交雑稲「旱優3号」を選育し、すでに生産面で大面積にわたって普及させている。トウモロコシ研究の方面では、中国農業科学院の王国英研究チームは、いくつかのトウモロコシの全長cDNAをクローニングするとともに、いくつかの遺伝子の機能について初歩的な干ばつ耐性検証を行った。
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