特集巻頭言:水資源
中国科学技術月報2009年7月号(第33号) 2009.7.1発行
はじめに
中国科学技術月報第32号の特集は「食糧の持続的生産に関す研究」でした。今回は食糧同様、一日も欠かすことのできない「水」を特集いたします。
水は飲料水のほか、生活用水、農業用水や工業用水など多方面にわたって人間の生活を支える「資源」としての側面も併せ持っています。人間のさまざまなニーズに応えうる淡水は地球全体で約2.5%しかなく、そのほとんどは南極や北極の氷や地下水として存在しています。残りの0.01%が湖沼、河川、湿地、土壌、大気、生態などに存在し、そのうちの70%が湖沼の水であると言われています。私たちが自然生態系から得るめぐみは「生態系サービス」と呼ばれており
「地球上に人間が67億人もくらす現代社会においては、こうしたサービスは生態系をきちんと保全管理することによってのみ持続的に享受し続けることができるものである」。
(高村典子「湖は、どうしたら蘇るのだろうか」『中国の水環境問題 開発のもたらす水不足』、67頁、2009 年)
とくに水資源は、食料と違って「増産」可能なものではないことから、無作為な蕩尽や汚染は私たちにとって深刻な結果をもたらします。
今回の特集では、中国と日本の水資源とそれをめぐるさまざまな問題について各分野の第一人者に論文を執筆していただきました。ここで取り上げましたさまざまな事例と解決方法が「水」と人間の未来を考える際の一助となりましたら誠に幸いです。
中国総合研究センター
記事一覧
「中国における飲用水処理の応用の現状と発展」 | 劉 文君(清華大学飲用水安全研究所所長) |
「中国の流域汚染と水体浄化」 | 付 徳剛(東南大学生物科学医学工程学部 生物電子学国家重点実験室 教授) |
「有害藻類ブルーム処理の原理、方法と応用」 | 兪 志明(中国科学院海洋生態・環境科学重点実験室主任) |
「中国汚水処理技術の研究と発展」 | 施 漢昌(清華大学 環境科学工程学部教授/環境シミュレーション汚染制御 国家重点聯合実験室主任) |
「銀川平原における主な水環境問題およびその原因と対策」 | 銭 会(長安大学水文学・水資源工学部主任) |
「中国における海水淡水化の進展」 | 馬 敬環(天津工業大学環境化学工学部教授)/共著者:劉莹・韓煦 |
「日本の水資源の現状と課題」 | 国土交通省水資源部総合水資源管理戦略室 |
「海水淡水化技術の普及状況と課題」 | 平井 光芳(財団法人造水促進センター淡水化技術部部長) |
「水不足問題の解決に貢献する膜技術」 | 松山 秀人(神戸大学大学院工学研究科 教授/先端膜工学センター センター長) |
「20年後に生き残る水資源開発を」 | 矢部 孝(東京工業大学教授、株式会社エレクトラ 代表取締役) |