第183号
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松山湖サイエンスシティ―世界的な影響力を持つシティへの完成予想図

2021年12月10日 竜躍梅(科技日報記者)

「世界的な影響力を持つサイエンスシティの建設を全体目標とする」「世界一流の先端基礎研究プラットフォーム、大学、科学研究機関の全体展開」―10月19日、「松山湖サイエンスシティ(科技城)発展全体計画(2021−35年)」が正式に発表された。

 松山湖サイエンスシティは2020年4月に大湾区(広州、仏山、肇慶、深圳、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門<マカオ>両特別行政区によって構成される都市圏)総合的国家科学センター先行始動エリアに指定され、国家科学技術革新戦略の実施を担う重要プラットフォームになった。同全体計画は世界的な影響力を持つサイエンスシティの建設を全体目標とし、松山湖サイエンスシティを重要なオリジナルイノベーションの発展の地、中期試験・検証と成果実用化の拠点、粤港澳(広東・香港・マカオ)協力イノベーション共同体、体制メカニズムイノベーション総合試験エリアにするために取り組む。

より多くの「0から1のブレイクスルー」を実現

 松山湖中子源路を歩くと、中国核破砕中性子源、南方光源研究試験プラットフォーム、松山湖材料実験室、香港城市大学(東莞)などが数珠つなぎになっており、松山湖サイエンスシティの未来の鮮明なビジョンが浮かび上がっている。

 中国核破砕中性子源と広東・香港の大学が共同建設するマルチフィジックス分光計が今年10月より、プロジェクト評価・審査に合格した世界の実験申請者に向けて正式に開放された。マルチフィジックス分光計は中性子全散乱分光計で、異なる規則度材料の構造の研究に用いることができる。

 中国核破砕中性子源は現在すでに大湾区総合的国家科学センターの建設を支える中核的なビッグサイエンス装置の一つになっている。国内外の登録ユーザーは2,600人を超え、複数の公共イノベーションプラットフォームを生み、複数の共通の基幹コア技術のブレイクスルーを遂げている。各種類の先端課題500件以上を完了し、累計で600本超の科学技術論文を産出している。

 説明によると、松山湖サイエンスシティは重要科学技術インフラクラスターを中核に、世界一流の先端基礎研究プラットフォーム、大学、科学研究機関を全体的に展開する。科学技術イノベーションのエコシステムの構築を加速させ、オリジナルイノベーション能力の向上に力を入れ、より多くの「0から1のブレイクスルー」の実現に取り組む。

 具体的に見ると、中国核破砕中性子源2期の建設を加速させ、松山湖材料実験室、ファーウェイスポーツ健康科学実験室、松山湖国際ロボット産業拠点などの重点科学研究プラットフォームをハイレベルで建設し、大湾区大学(松山湖キャンパス)、香港城市大学(東莞)の建設を加速させる。

科学技術成果の実用化・応用の「ラストワンマイル」を埋める

 研究チームは松山湖サイエンスシティで、中国の月土壌サンプル第1弾の研究に加わっている。

 松山湖材料実験室は今年9月、第1弾となる月土壌の約0.85グラムのサンプルを受け取った。研究チームは、月資源の現地での利用の模索や月土壌3Dプリントなどのキーテクノロジーを含む、月土壌の物性及び総合利用をめぐり一連の研究を展開し、中国のさらなる深宇宙探査、有人月着陸、月科学研究ステーションの建設に向けた技術検証を提供する。

 同全体計画によると、松山湖サイエンスシティは重点分野の基幹コア技術の研究開発を強化し、中間試験・検証および成果の実用化・応用プラットフォームを展開し、科学技術成果の実用化・応用の「ラストワンマイル」を埋める。産業のイノベーション生態を整備し、複数の新興産業クラスターの形成を推進し、未来の発展をけん引する。

 イノベーション人材の呼び込みについて、より開放的な人材政策の実施、グローバルな科学研究人材交流プラットフォームの構築などの手段を通じ、中国内外のハイレベル人材の誘致を促進する。

 同計画によると、松山湖サイエンスシティは2022年をめどに全面的に大湾区総合的国家科学センター先行始動エリアの計画・展開を完了し、複数の重要イノベーションプラットフォーム建設プロジェクトと象徴的コア技術研究開発および産業化プロジェクトを着工させる。

 また、2025年をめどに科学技術力とビジネス環境を大幅に改善し、基幹コア技術の重要なブレイクスルーを実現し、重要科学技術インフラの整備で重要な進展を遂げ、科学研究能力を急速に強化する。

 さらに2035年をめどに複数の世界トップレベルの開放・共有型の重要科学技術インフラを完成させ、複数の世界一流の大学と科学研究機関を育成する。複数の基幹コア技術の全体的なブレイクスルーを遂げ、世界的な影響力を持つオリジナルイノベーションの新たな先端地域になることを目指す。


※本稿は、科技日報「松山湖科学城発布藍図 "瞄准"具有全球影響力的科学城」(2021年10月22日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。