第182号
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科学技術成果の評価メカニズムを整備―4つの重点を正しく認識

2021年11月22日 程燕林、代涛(中国科学院科技戦略咨詢研究院)

 科学技術成果の評価は、科学技術評価の根本である。科学技術成果の評価メカニズムの整備は大局に影響することであり、科学技術評価そのものの変化の趨勢であり、国際的な科学技術評価における発展の焦点が存在するところであり、ひいては中国がハイレベルな科学技術の自立的な発展を実現する上での必要でもある。このほど国務院弁公庁が公布した「科学技術成果の評価メカニズムの整備に関する指導的意見」により、「何を評価するのか」、「誰が評価するのか」、「どのように評価するのか」、「どのように利用するのか」という4つの面から重点的に科学技術成果評価メカニズムを整備し、質の高い成果とその応用を促すことが明確に提示された。すなわち、これら4つの重点の意味をいかに正しく認識するかが、科学技術成果評価メカニズムの整備における鍵となる。

「何を評価するのか」:形式と本質との関係の適切な処理

 科学技術成果にはさまざまな表現形式があり、論文、特許、賞などは、いずれも成果のレベルと価値を評価する重要な形式である。論文は科学の発見と革新的思想の交流の媒体であり、特許は発明・創造または技術イノベーションの成果の保護のために与えられる法的権利であり、賞は科学研究活動による成果のレベルと貢献に対する承認である。論文、特許、賞によって確かに、一定程度において科学技術成果のレベルが表現されるが、単純にそれらの「数」またはインパクトファクターを計算する方法で科学技術成果のレベルと価値を評価することは本末転倒であり、背後にある本質を表面的な形式で覆い隠すことになる。

 経済や社会の発展に果たす科学技術の役割が顕著になるにつれ、科学技術成果の価値は多元化が進み、主に科学、技術、経済、社会、文化の5つの分野に表われている。科学技術成果の最も重要な価値は、人類の世界に対する認識と世界を変えるための知識・能力を高めることであり、新たな現象を発見し、新たな原理を解明し、新たな方法を発展させ、新たな技術を育むと同時に、科学技術のたゆみない進歩を促し、科学技術成果の技術的価値を高める必要がある。

 科学技術成果の経済的価値は産業競争力の向上、産業のモデルチェンジ・レベルアップの促進、新たな産業の創出の面に表われ、科学技術のイノベーションによって経済の質の高い発展が支えられる。科学技術成果の社会的価値は、社会福祉の向上や人民の生命・健康の増進、生態環境の改善、より良い生活の創出において、さらなる貢献を果たすことに体現される。また、文化的価値とは、科学技術イノベーション活動における重要な価値のことであり、科学技術成果が応用された暁に、科学知識の普及や科学者精神の育成、イノベーション機運の創出、新たな思想の育成、新たな改革の創出などに対して果たされる貢献と影響を指す。

 科学技術成果の評価に際しては、価値そのものに回帰し、成果の形式と本質との関係を適切に処理し、科学技術成果の価値を評価の核心とし、「破四唯(四唯の打破)」(四唯:論文のみ、職位のみ、学歴のみ、表彰のみ)と「立新標(新たな基準の構築)」の同時進行を堅持し、科学技術成果のさまざまな特徴と評価の目的に応じて、「五元価値」(科学、技術、経済、社会、文化の5つの分野における価値)の評価基準と重点を細分化し、科学技術成果の価値について指向性を持って評価する必要がある。

「誰が評価するのか」:政府と市場の役割を共に発揮

 科学技術成果は科学技術イノベーション活動の全てのプロセスを貫くため、評価はイノベーションのさまざまな段階に及ぶ。そのため、さまざまな特徴や応用ニーズを持つ科学技術成果に応じて、評価にかかわる主体も異なる。科学技術成果は公共財と商品の二重の属性を同時にあわせ持ち、科学技術成果の創出は科学研究活動に属し、科学技術成果の応用と実用化は経済活動に属する。

 したがって、科学技術成果の価値に対する評価は、政府と市場の役割を共に発揮し、各種主体の積極性と自発性を喚起し、政府への貢献と市場に対する効果との関係を適切に処理し、政府、企業、金融機関・投資家、第三者団体等の多元的な主体によって構成される評価体系を構築する必要がある。科学技術資源の市場による配置という決定的な役割を充分に発揮させ、市場の需給、価格、競争等の調整メカニズムを利用し、質の高い成果の形成を導き、真に価値のある成果を識別できる必要がある。

 また、その一方で、政府的による指導的役割をより良く発揮し、「有限」であるとともに「貢献」を果たし、「簡政放権」(行政のスリム化と権限委譲)を通じて、科学研究機関と科学研究者に充分な自主権を付与し、政府主導による評価を減らし、民間資本と市場資本による介入を重視し、業界基準の構築を支持し、第三者評価と市場化評価の体系的な発展を導く必要がある。

「どのように評価するのか」:方法の限界性と成果の複雑性を考慮

 科学技術活動の複雑化と学際化に伴い、科学技術成果の価値も多元化と差別化が進み、評価方法の限界性が顕著になってきている。

 科学技術成果の評価方法も、かつての専門家主体の同業内評議から、データ主体の定量的評価と定量・定性的評価を合わせた総合評価へと発展しており、科学技術成果の科学的かつ客観的な評価の実施に向けて有力なツールが提供されてきている。しかしながら、これらの方法には、具体的な評価プロセスにおいてさまざまな問題が不可避的に存在する。

 たとえば、同業内評議には人間関係による私情や主観的憶測等の弊害があり、定量的評価には量の重視・質の軽視、「打包拆分」(一括評価、分割評価)の問題があり、学術不正の問題すら存在する。科学技術成果の複雑性、専門性、段階性とその影響のタイムラグや予測不能性等の特徴によって、科学技術成果の評価は依然として世界的な難題であることが決定づけられ、理論・方法研究と実践での摸索を通じて絶えず改善する必要が生じている。したがって、科学技術成果の多元的な価値と多様な形式に応じて、科学技術成果の評価における理論・方法研究を強化し、特にビッグデータや人工知能等の技術的手段を利用して、新たな評価方法を発展させる必要がある。

 また、その一方で、科学技術活動のさまざまな段階や異なるタイプによって生み出される科学技術成果および成果の属性、形態、価値等に応じて、科学の法則に合致する多元的・多層的な分類評価メカニズムの形成を模索する必要がある。同時に、中長期的評価、事後評価および成果の振り返り評価を強化し、科学技術成果の評価の正確性、信頼性と可用性を高め、さまざまな科学研究者による成果への実質的貢献を合理的に決定しなければならない。

「どのように利用するのか」:評価のツール性と機能性の関係を認識

 科学技術成果の評価は科学技術管理の一種の手段であり、ツールとしての属性がある。

 科学技術成果の評価が指揮棒としての役割をいかに発揮するかは、評価結果使用、意思決定の管理レベルの向上、科学技術イノベーションの発展の促進にかかっている。評価結果の正確な使用は、評価の指向性、インセンティブ、意思決定支援等の機能を効果的に発揮するための前提であり、科学技術成果評価改革の成否を決める鍵である。評価結果の正確な使用においては、その使用範囲の盲目的な拡大や濫用、誤用をしてはならず、評価結果を棚上げにしたり放置したりしてもならない。評価の指導的役割を充分に発揮するには、需要側から着手して質の高い成果の形成を導き、正確な価値観を構築し、良好な学問機運や科学研究のエコシステムを形成する必要がある。評価によるインセンティブの役割を充分に発揮するには、真に貢献のあった個人やチーム、機関を奨励し、科学研究者や科学研究機関の積極性を喚起し、科学研究者によるハイレベルな科学技術イノベーションと成果の実用化活動の主体的実施を導く必要がある。

 また、評価による意思決定支援の役割を充分に発揮するには、科学技術評価の結果を科学技術の資源配置、科学技術成果の移転・実用化等の重要な根拠とし、意思決定の科学性を高め、科学技術イノベーション活動の有効性を保障する必要がある。

「科学技術成果の評価メカニズムの整備に関する指導的意見」の要求を実現し、科学技術成果の評価メカニズムという「青写真」を「設計図」に変えるには、関連の任務をさらに細分化・具体化し、各主体の責任を固めなければならない。それには、政府、科学技術界、産業界等の各分野による共同の努力によって、評価の指揮棒という役割を充分に発揮し、科学技術イノベーションの質と成果、貢献を核心とする評価の指向性を堅持し、科学技術評価ひいては科学技術体制の改革へのたゆみない深化を導き、質の高い科学技術成果がたゆみなく現れるよう促し、質の高い発展とハイレベルな科学技術の自立的な発展に向けて有力な支援を提供しなければならない。


※本稿は、科技日報「完善科技成果評価機制,正確認識這四個着力点」(2021年10月11日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。