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【14-04】友好の架け橋「済南ふれあいの場」活動記録(その2)

2014年10月 9日

李光貞

李光貞:山東師範大学外国語学院日本語学部長・教授

中国山東省済南生まれ。
1984年山東師範大学外国語学院日本語学部卒業学士号取得
1999年山東師範大学世界文学と比較文学修士号取得
2006年山東大学世界文学と比較文学博士号取得
2001-2002年 日本駒澤大学 客員研究員
2008‐2009年 日本東京大学 客員研究員
現在、山東師範大学外国語学院日本語学部長・教授・博士指導教官。中国日本語教学研究会山東分会会長。済南ふれあいの場の責任者。
専門分野:日本文学、日本文化、文学解読と文学教育

主な著書

『夏目漱石小説研究』外語教学与研究出版社2007年
『多元視野下の日本学研究』光明出版社2010年


賀 樹紅

山東師範大学日本語言語文学コース2013年大学院生。「済南ふれあいの場」ボランティア責任者。

その1よりつづき)

 「済南ふれあいの場」は、中日青少年間の交流をとても重視しており、桜の木の植樹イベントほど大規模ではないが、大学・中学校・小学校での折り紙体験や、新年の茶話会、日本の茶道や書道の体験活動、浴衣試着体験会、日本の食文化についてなどのイベントを実施し、大きな反響を呼んでいる。

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写真5 日本文化体験-浴衣試着体験会

 2013年12月28日の午前、「済南ふれあいの場」では、大学生と小学生を年齢別に分けた折り紙体験会が行われた。在青島日本国総領事館副領事 譜久原玲子氏が主に講師を、総領事館の苑利氏が通訳を担当した。イベントは小学生向けと大学生向けに分けて行われた。参加者は、山東師範大学日本語学科の教師と30数名の学生、また山東師範大学付属小学校の20数名の児童とその保護者であった。

 イベントはまず、譜久原副領事が折り紙の起源や折り方を紹介し、精巧かつ美しい日本の折り紙作品を参加者に見せた。参加者は、視聴覚資料を通して、日本の折り紙の背景に込められた日本文化について一歩踏み込んでの理解を深めた。そのあと、学生たちは譜久原副領事の解説と指導のもと、日本の「折鶴」「かぶと」「力士」などを各自で折った。実践的な活動を通じて、「時間と勢力を惜しまず、相手への尊敬の気持ちを表す」という日本特有の考え方を体験した。先生の心のこもった指導を受け、学生たちの手により精緻な作品が次々と誕生していった。

 今回の折り紙体験会は趣深く、参加者皆が熱中し、また活発であった。学生たちは折り紙の楽しさとともに、日本の折り紙芸術の魅力を体感した。

 4月19日に行われた茶道体験イベントには、山東大学、山東師範大学、済南大学、山東医学高等専門学校など、済南にある大学の教師や学生の他、済南に駐在する日系企業の代表、及び日本人留学生、山東師範大学付属小学校2年5クラスの7名の児童も参加した。

 山東師範大学の外国語教師 峰松規子氏が、パワーポイントを使って茶道の歴史や核となる思想、茶器の使い方や所作等について講義し、実際に皆の前でお茶をたて実演してみせた。体験の時間になると、参加者はいくつかのグループに分かれ、主人役とお客様役を交互に演じ、日本の茶道を堪能した。今回の茶道体験を通して、参加者は茶道文化についての理解を深め、身近な体験から日本茶道の心得である「一期一会」という禅の教えを悟った。

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写真6 真剣に茶道に取り組む小学生たち

 「済南ふれあいの場」は毎週5日間開放されており、その時間は常に山東師範大学日本語学科の大学院生や本科生が自主的に管理し、教師がその様子を見守り指導している。また同時に定番イベントのひとつとして、隔週土曜日の午前には日本語コーナーを開催している。

 2013年12月22日午後に開催された第一回日本語コーナーは、11月23日の「済南ふれあいの場」開設記念式典後、初めての友好交流イベントでもあった。このイベントには、山東女子学院、山東交通学院、山東青年政治学院、山東医学高等専科学校、済南外国語学校、山東師範大学から30余名の教師と学生が参加した。今回の主なテーマは「日本の新年」についてであった。

 日本語コーナーを定期的に開催することで、日本語や日本文化の多くの愛好者たちに広く交流の機会を与えた。学生にとっては語学能力の向上だけでなく、楽しみながら日本の伝統文化への理解を深める機会となり、同時に交流する機会の少ない他校の教師や学生との交流も盛んになったのである。

 2014年1月11日午後に開催された新年会では、今までとは違った交流イベントが行われた。済南在住の各大学の教師代表、外国人教師の代表、済南に駐在する日系企業の代表が新年を祝うとともに、翌年の「済南ふれあいの場」に関する活動の計画を立て、意見交換をおこない提案をまとめた。

 中日交流「ふれあいの場」は中国国内の12都市で開設されている。その内2ヶ所は市の図書館に、その他はすべて大学内に設置されており、特に大学内で開催される交流イベントには注目すべき特徴がある。

 たとえば、学院と大学が共同でシンポジウムを開催するなどである。「済南ふれあいの場」はその設立以来、「第1回山東省大学日本語科院長/学部主任ハイレベルフォーラム」、「比較言語文化学術シンポジウム」、「日本語教育における電子辞書の応用」など中~大規模のシンポジウムを5回開催しており、参加者からは「済南ふれあいの場」が実施している各種の友好交流イベントへの賛辞が絶えなかった。

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写真7 シンポジウム代表

 シンポジウムの他にも、様々なテーマでの特別講演会や講座、日本語コンテストなど、多岐にわたる催し物が用意されており、同時に趣向を凝らし来訪する団体や個人をもてなしている。

 これまでにも、和歌山県交流協定団、三菱商事(青島)有限公司 手代木和人総経理一行、山口県教育旅行促進訪中団、日本大使館•日本学術振興会(JSPS)一行、亜細亜大学、愛知産業大学、全国日本語学校連合理事長 荒木幹光氏などが「済南ふれあいの場」を訪問しており、友好交流イベントを行っている。こつこつと着実に積み上げてきた交流活動により、「済南ふれあいの場」の社会的知名度は確実に向上し、外部機関や関係者とより広く強固な信頼関係を築き、緊密に連携できる基礎ができあがったのである。

 2013年11月23日の除幕式から現在に至るまで、その多角的で示唆に富む中日交流イベントは、言葉では十分に表現しきれない程の貢献をもたらしたのである。

 今年の6月7日、日本大使館及び日本学術振興会の協力のもと、日本の大学への留学説明会には、東京大学をはじめとする12大学が参加し、各大学の代表は300名近い学生たちからの質問にも親身に答え、社会的にも大きな意義をもたらした。

 現在予定されている大規模なイベントとしては、2015年3月22日の桜の木の植樹イベント、5月17日の日本の大学への留学説明会などがある。

 今後とも、「済南ふれあいの場」は中日友好の交流を促進し、双方の関係を深めていくための架け橋として大きな役割を果たし、ますます発展していくであろう。だからこそ私たちは様々な職業や専門分野による分かれる各界との連携を強固にし、さらなる発展の機会を志すとともに、新たなことにいつでもチャレンジできるよう尽力していかなければいけない。

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写真8 会議のボランティア

(おわり)