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【21-21】新型コロナ中国の研究力高める 英教育誌世界大学ランキング

2021年09月03日 小岩井忠道(科学記者)

 新型コロナウイルスが中国の大学の評価をさらに高めたことが、2日公表された英教育誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)の「世界大学ランキング2022」で明らかになった。上位200に入った中国本土の大学数は、昨年の7から3増えて10大学となり、米国、英国、オーストラリアに次いで多い(オランダと同数)。THEは、他の研究者から数多く引用された新型コロナウイルス関連の論文が多かったことを中国の大学の評価が高まった理由に挙げている。上位にランクされた大学も前年に比べ北京大学が7、清華大学が4それぞれ順位を上げ、そろって16位に浮上した。トップ20に中国から2大学が入ったのは初めてだ。

「世界大学ランキング2022」トップ200に入った大学数が上位12の国・地域
(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2022」「World University Rankings 2021」から作成)
国・地域 大学数(前年) 最上位大学名 最上位大学の
世界ランキング順位
米国 58(59) カリフォルニア工科大学
ハーバード大学
=2
=2
英国 28(29) オックスフォード大学 1
ドイツ 22(21) ミュンヘン大学 32
オーストラリア 12(12) メルボルン大学 33
中国 10(7) 北京大学
清華大学
=16
=16
オランダ 10(11) ワーゲニンゲン大学 53
カナダ 7(8) トロント大学 =18
スイス 7(7) スイス連邦工科大学チューリヒ校 15
韓国 6(7) ソウル大学 =54
フランス 5(5) PSL研究大学 =40
香港 5(5) 香港大学 =30
スウェーデン 5(5) カロリンスカ研究所 39

 THEの世界大学ランキングは、「教育」、「研究」、「論文引用の影響度」、「国際性」、「企業からの収入」の五つを評価指標とし、それらをさらに細分化した合計13項目を評価した合計点で世界の大学を順位付けしている。「論文引用の影響度」では発表された論文が他の研究者にどれだけ引用されているかが、重要な評価項目となっている。今回のランキングで評価対象となったのは、2016年から2020年の間に発表された研究論文と、2016年から2021年間の論文被引用に関するデータ。THEによると、新型コロナウイルスに関連する医学論文によって「論文引用の影響度」の評価が顕著に上昇した大学が19あり、このうちの11を中国本土の大学が占めた。特に首都医科大学、温州医科大学、武漢大学の3大学が目立つ。

 THEが毎年、この時期に公表する世界大学ランキングで、中国の大学の躍進ぶりは数年前から明らか。昨年公表の「世界大学ランキング2021」でも、清華大学が20位に浮上し、アジアで初めて20位内に入る大学となったほか、前年のランキングで上位100に入ったのが清華大学、北京大学、中国科学技術大学の3大学だったのに対し、復旦大学、浙江大学、上海交通大学が新たに加わり倍増したことなどが関心を呼んだ。新型コロナウイルスにより米国の大学の多くが大きな打撃を受けているのに対し、打撃を受けていない大学が多い中国が、研究力でさらにランキングの上位に多くの大学が並ぶ米国との差を詰める可能性がある。THEは昨年のランキング発表時に、このような欧米の研究者たちのコメントも紹介していた。実際に中国は新型コロナウイルス感染拡大を大学の研究力強化にしっかりつなげていたことが、今回のランキング結果からかがえる。

「論文引用の影響度」の評価が高まったことは、大学に対する評判や企業からの収入など他の評価項目の評価向上にもつながる。データ分析責任者や米国の大学の研究者のこうした声を紹介し、新型コロナウイルス関連の論文による大学ランキングに及ぼす影響は一過性ではなくしばらく続く、という見方をTHEは示している。

オーストラリアの大学も高評価

 アジア・太平洋地域では、オーストラリアの大学の評価が高いのが目を引く。33位のメルボルン大学をはじめ、上位200に入った大学は12と、10の中国を上回る。メルボルン大学は昨年より順位をわずかに下げたが、オーストラリア国立大学が前年の59位から54位、クイーンズランド大学が62位から54位、モナシュ大学が64位から57位など上位200に入った12の大学中、9大学が前年より順位を上げているのが目を引く。

「世界大学ランキング2021」トップ200内のアジア・太平洋大学
(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「World University Rankings 2022」「World University Rankings 2021」から作成)
世界順位 前年順位 前々年順位 大学名 国・地域
=16 23 24 北京大学 中国
=16 =20 23 清華大学 中国
21 25 25 シンガポール国立大学 シンガポール
=30 39 35 香港大学 香港
33 31 =32 メルボルン大学 オーストラリア
=35 36 36 東京大学 日本
46 47 =48 南洋理工大学 シンガポール
49 56 =57 香港中文大学 香港
=54 59 50 オーストラリア国立大学 オーストラリア
=54 =62 66 クイーンズランド大学 オーストラリア
=54 60 64 ソウル大学 韓国
57 =64 =75 モナシュ大学 オーストラリア
58 =51 60 シドニー大学 オーストラリア
60 70 109 復旦大学 中国
61 =54 65 京都大学 日本
66 =56 47 香港科技大学 香港
70 67 71 ニューサウスウェールズ大学 オーストラリア
=75 =94 =107 浙江大学 中国
84 100 =157 上海交通大学 中国
88 87 =80 中国科学技術大学 中国
91 =56 47 香港科技大学 香港
99 96 =110 KAIST 韓国
=105 111 144 南京大学 中国
111 =118 =120 アデレード大学 オーストラリア
=113 97 =120 国立台湾大学 台湾
=122 =101 89 成均館大学 韓国
=132 139 =131 西オーストラリア大学 オーストラリア
=137 =147 =179 オークランド大学 ニュージーランド
=143 =160 =194 シドニー工科大学 オーストラリア
=151 126 126 香港城市大学 香港
=151 =187 197 延世大学 韓国
157 301‐350 351-400 武漢大学 中国
=162 251‐300 301-350 南方科技大学 中国
=170 =184 193 キャンベラ大学 オーストラリア
=178 176 201-250 蔚山科学技術大学 韓国
181 301‐350 301-350 華中科技大学 中国
=185 151 =146 浦項工科大学 韓国
192 =195 201-250 マッコーリー大学 オーストラリア
=193 186 =179 クイーンズランド工科大学 オーストラリア

日本の低迷変わらず

 一方、日本は200位内に入ったのは、昨年同様、東京大学35位(前年36位)と京都大学61位(同54位)の2大学のみ。韓国の6大学、香港の5大学に比べても明らかに見劣る。両大学以外では東北大学201-250位(前年201-250位)、大阪大学301-350位(同351-400位)、東京工業大学301-350位(同301-350位)、名古屋大学351-400位(同351-400位)、産業医科大学401-500位(同351-400位)、横浜市立大学401-500位(同601-800位)、北海道大学501-600位(同501-600位)、九州大学501-600位(401-500位)、東京医科歯科大学501-600位(401-500位)、筑波大学501-600位(同401-500位)。前年と同順位か順位を落としている大学が大半となっている。

関連サイト

Times Higher Education (THE)「World University Rankings 2022: results announced

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