科学技術
トップ  > コラム&リポート 科学技術 >  File No.24-40

【24-40】AIが従来の検索エンジンに取って代わる存在に?(その1)

呉純新(科技日報記者) 2024年05月07日

image

スマートフォンで情報をチェックする利用者。

 中国湖北省武漢市に住む羅さんは、友人に勧められ、検索機能が付いた大規模言語モデルのアプリケーションをインストールして体験した。羅さんは「大規模AIモデルのアプリにも検索機能が搭載されており、質問の答えは筋道が通っているが、内容がやや画一的だ」との印象を持った。

 AI(人工知能)技術の発展に伴い、「AI+検索エンジン」が新たな競争の場となり、各大手メーカーが次々と参入している。グーグルやマイクロソフトといったテクノロジー大手が既に参入しており、スペインメディアは関連記事を掲載して、検索エンジンとAIの関係について分析している。

 では、AIが従来の検索エンジンに取って代わることがあり得るのだろうか? 技術的原理から見て、これらにはどんな違いがあり、今後「相互補完」するようになるのだろうか? あるいは「ライバル同士」になるのだろうか?

「破壊者」を迎えた検索エンジン業界

 百度(バイドゥ)の創業者である李彦宏董事長兼最高経営責任者(CEO)は「以前のように大量のリンクを提供して、利用者がその中から正しい答えを探すのではなく、現在は直接答えを提供する検索が増えている」と述べ、「検索の本質はAIの問題だ」との見方を示した。

 そして「このように言うのは、人々が文字を使って要求したり、興味を示した時に、コンピューターが利用者の意図を推測し、関連する答えを提供するのがAIの本質だからだ。つまり、コンピューターに人間を理解させ、人間に寄与してもらうということだ」と説明した。

 北京大学武漢人工智能研究院で副院長を務める馬修軍教授は「AIを活用して検索エンジンを最適化する方法はいくつかある。現時点では、ユーザーの検索体験を向上させる最適な方法は大規模言語モデルの活用で、その発展のポテンシャルは巨大だ。需要の観点から見ると、ユーザーが検索エンジンに求めるのは『真実かつ正確で網羅的』であることで、その次が『使いやすくてスピーディー』ということだ」と語った。

 百度やグーグルをはじめとする従来の検索エンジンは、全文検索システムを採用しており、インターネット上の各サイトのテキスト情報を抽出してデータバンクを構築した後、そのデータバンクから利用者が入力したキーワードにマッチする記録を検索して、その結果を一定の順序で利用者に提供する。

 全文検索システムを採用する検索エンジンには、独自の検索プログラムが搭載されており、自らのデータバンクから得た検索結果を提供している。簡単に言えば、検索エンジンは検索の要求を受け取ると、まずクローリングしてインデックスを作り、マッチする内容を順番に並べて表示した後に、利用者が必要な内容を選んでチェックする。

 馬氏によると、大規模言語モデルを活用した検索エンジンと全文検索システムを採用した検索エンジンとでは、検索の仕方や結果表示の仕方が異なる。前者は大規模言語モデルのサポートの下、検索エンジンが「質問分析-ネット上検索-回答の整理-表示」を実行する。「AI+検索エンジン」のテクノロジー・ロードマップは「ChatGPT」系のチャットボットによって質問の答えを表示するというスタイルだ。このロードマップの場合、プレトレーニングモデルとマシンが既に学習した内容をベースにしており、その一部の内容は古くなっている可能性があるため、ネット上の検索エンジン技術と組み合わせて使う必要がある。

その2 へつづく)


※本稿は、科技日報「人工智能会取代传统搜索引擎吗」(2024年4月1日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

上へ戻る