取材リポート
トップ  > コラム&リポート 取材リポート >  File No.20-29

【20-29】コロナ禍で高まるロボット、AI評価 11カ国メンタルヘルス影響調査で判明

2020年11月06日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 これまでのどの年よりも2020年は職場でストレスと不安を感じた、と回答した人が70%に上ることが、主要11カ国を対象に新型コロナウイルス感染拡大の影響を調べた米国のソフトウェア企業「オラクル」と人事関連リサーチ企業「ワークプレイスインテリジェンス」の共同調査で明らかになった。人間よりもロボットの方がメンタルヘルス面で頼りになると考える人が5人に4人に上る。3人に2人は仕事のストレスや不安について上司よりロボットに話したいと考えており、4人に3人がメンタルヘルスの改善にAI(人工知能)が役立ったと答えている。

78%がメンタルヘルスに悪影響

 この調査は、2020年7月16日から8月4日に主要11カ国の企業の経営層と従業員約1万2,000人に対し、職場でのメンタルヘルス、AI技術、ロボットなどについての見方、行動を調べた。調査対象となった人々の年齢は22~74歳。新型コロナウイルス感染拡大がメンタルヘルスにマイナスの影響を与えていると回答した人が78%に上った。最も多かったのはアラブ首長国連邦(UAE)の89%で、韓国86%、中国84%、米国83%、インド81%、フランス75%、英国74%、ブラジル73%、日本70%、ドイツ68%、イタリア65%と続く。これまでのどの年よりも2020年は職場でストレスと不安を感じた、と回答した人も11カ国平均で70%に上る。

image

(オラクル・コーポレーション、ワークプレイスインテリジェンス社調査レポートから)

 メンタルヘルスへの具体的な影響については、ストレスの増加が38%、ワーク・ライフ・バランスの喪失が35%、極度の疲労(燃え尽き症候群)が25%、社交がないことによる気力減退が25%、孤独感が14%となっている。

家庭生活に悪影響も89%に

 さらに、85%の人々が、ストレス、不安、極度の疲労といった職場でのメンタルヘルスの問題が家庭生活にも影響していると答えた。国別ではインドが93%と最も多く、次いでUAE(91%)、ブラジル(90%)、中国(89%)、韓国(89%)、フランス(86%)、米国(83%)、英国(81%)、イタリア(78%)、ドイツ(77%)で、最も少なかった日本でも76%に上る。具体的な影響としては、睡眠不足(40%)、体調不要(35%)、家庭での幸福感の減少(33%)、家族関係の悪化(30%)、友人からの孤立(28%)の順に多かった。

 コロナ禍での大きな変化であるリモートワークについては功罪両方の影響がみられている。公私の境界がよりあいまいになったことで以前に比べ、毎月40時間以上多く働いているという人が35%、また、過剰労働による極度の疲労に陥っていると答えた人が25%いた。一方、62%の人々はコロナ禍以前の仕事内容よりもリモートワークに魅力を感じ、家族との時間が増えた(51%)、睡眠時間の増加(31%)、作業スピードが上がった(30%)と回答している。

人よりロボットの支援望む人82%

 企業による従業員のメンタルヘルスを守るための取り組みがもっと必要だと回答している人が76%に上ることが分かった。メンタルヘルスのサポートのために企業がテクノロジーを提供することを望む人が83%おり 、特にメンタルヘルスのサポートを人よりもロボットに頼りたいという回答が82%に上るという興味深い結果も得られている。国別では、インド(92%)、中国(89%)、韓国(87%)、UAE(86%)、ブラジル(86%)、日本(82%)、米国(75%)、イタリア(71%)、ドイツ(70%)、英国(69%)、フランス(68%)となっている。その理由としては、ロボットは「『ジャッジメント・フリー・ゾーン(無批判区域、決めつけのない環境)』を与えてくれる」という理由が34%、「問題を共有する上での先入観のない感情のはけ口を提供してくれる」が30%、「医療に関する質問に迅速に回答してくれる」が29%だった。

 仕事上のストレスや不安を上司よりもロボットに話したいと回答した人が68%に上り、実際にロボットをセラピストまたはカウンセラーとして利用することを受け入れている人も80%いる。

 AIに対する期待と評価も高まっていることが分かる。75%が、仕事でのメンタルヘルスの改善にAIが役立ったと回答している。主な利点として「仕事の効率化に必要な情報の提供」を挙げた人が31%、「作業の自動化と仕事量の削減による極度の疲労の防止」と「仕事の優先順位付けによるストレスの軽減」を挙げた人がそれぞれ27%いた。

 こうした調査結果についてオラクル社の幹部は「世界的な新型コロナウイルス感染拡大によって、メンタルヘルスは広範な社会的問題のみならず、従業員の最大の課題となった。迅速な対応が必要だ」と言っている。また、ワークプレイスインテリジェンス社の幹部も「今後10年間続く問題になる」と重大視している。

関連サイト

日本オラクルプレスリリース「日本の「職場におけるAI」調査:AI利用は世界11カ国で最下位も、87%が不安やストレスを相談する相手としてロボット・AIを受け入れると回答

日本オラクルプレスリリース「日本を含む11カ国、12,000人調査:82%が、人よりロボットがメンタルヘルスを上手く支援と回答

オラクル、ワークプレイスインテリジェンス調査報告「先が読めない不安とストレスを 乗り越える転換期

関連記事

2020年5月01日 SPC取材リポート「たくましい中国人の姿浮き彫りに 博報堂が新型コロナの影響調査

2020年4月21日 青樹明子の中国ヒューマンウォッチ「新型コロナでも前向き