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【20-028】中国科学技術協会、緊急事態に備える科学普及体制の構築を検討

JST北京事務所 2020年5月18日

 新型コロナウイルス感染拡大が世界的に広がるに際し、科学普及事業を司る中国科学技術協会(CAST)は、このほど、国務院緊急管理専門家グループ長、清華大学公共安全研究院長をはじめとした中国の緊急管理分野の有識者を招いて緊急事態に備え科学普及に関する座談会を開き、国家緊急科学普及体制の整備等をめぐる議論を行った。中国科学報が伝えた。以下にその概要をまとめる。

 参加者らは、科学普及はウイルス感染拡大予防に関する科学知識の普及、社会の安定促進等に積極的に役割を果たしたと評価した一方、国の緊急管理体系に科学普及が欠如したり、緊急科学普及プラットフォームの権威性と実効性に欠けたり、一般国民の科学素養低下によるデマへの信用及びそれによって恐慌の引き起こし等の課題について指摘された。

 これらを背景に、専門家らは議論し、中国科学普及事業に対して以下3つの取り組みを講じるべきであると提案した。

1. 国家緊急科学普及体制を充実させる。「科学普及中国」や「デマを打ち消す」プラットフォーム[1]のアップグレード、権威性と専門性を有する第三者運営の緊急科学普及ポータルの構築、中央系メディアや主流となるニューメディア等との連動による緊急事態に備えた科学普及グリーンチャンネル(注)設立等が取り上げられる。
注:科学普及グリーンチャンネル:今回の新型コロナウイルス感染拡大のような緊急事態が発生した場合、デマや不確かな情報の見分けに有用な知識等を迅速に一般国民に伝わるよう、中央メディアや主流となるニューメディア等にスムーズに掲載するための経路。

2. 新時代における国民を対象とする科学素養育成のトップダウン設計を強化する。これから15年間にわたる国の発展戦略に基づく「全国民科学素養行動計画要綱(2021~2035年)」の策定およびその行動の推進、科学普及の理念、制度、内容と方法の改革改善、新時代に適えた科学素養の観測指標システムの確立、また健康素養、安全素養、緊急素養を科学素養への盛り込み等が含まれる。

3. 科学普及事業を確保するための制度を強化する。「科学普及法」の修訂と実施徹底、科学技術プログラムへ科学普及使命の盛り込み、科学普及の基盤整備等が含まれる。

 このほか、科学普及専門家データベースの構築、サイエンスコミュニティによる情報発信メカニズムの強化、研究者と一般社会人とのインタラクティブの促進、社会化した科学普及エコシステムの構築等も提案された。

[1] 新型コロナウイルス感染拡大に際して、中国の様々なメディアがデマ等について、正誤を判定したり、関連情報を整理して伝えたりする等の試みが行われてきた。
例:人民日報アプリ「疫情辟谣」
丁香园·丁香医生「新型冠状病毒肺炎 疫情实时动态