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【23-29】上海-世界といかに競うか

陳惟杉/『中国新聞週刊』記者 江瑞/翻訳 2023年05月12日

「2023年に入り、上海市全体で1月に契約締結した重点産業プロジェクトは160あまり、投資総額は1000億元。新たに着工した重点産業プロジェクトは60あまり、投資総額は700億元超に上ります」。上海市経済情報化委員会主任技師の張宏韜は1月末にこう明かした。「成り行きに任せていたり、加速が十分でなかったりすれば、恐らく経済の早期回復は望めなかったでしょう。上海16区はどこも非常に努力しており、かなりのプレッシャーを感じています」。上海市政府関連部門のとある職員は、年明けからの「経済真剣勝負」な雰囲気をこう語った。

 上海市が設定した2023年の経済成長目標は年率5.5%以上で、去年の5.5%前後と比べてやや増加した。だが上海市は、短期間で経済の好転を目指すだけでなく、多くの任務を背負ってもいる。

 上海市の目標は、中国を代表して新たな経済グローバル化を牽引する都市間競争に加わり、中国が世界トップレベルの分業に加わるための切り札となることだ。目下の世界情勢において、上海がより多くの「ボトルネック」技術のブレイクスルーを起こし、先端産業のビジネスチャンスをつかんでいくことが必要なのは間違いない。

 イノベーション駆動型の産業発展は、上海の質の高い発展という命題に欠かせない要素だ。これは、他の都市にはない、「経済真剣勝負」な上海が直面する独自の挑戦でもある。

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上海の高層ビル群。写真/IC

「上海市全体がプロジェクト受注に血眼」

 進捗状況を逐一把握すること。これが、上海市の経済政策決定部門担当者に与えられた、2023年の最優先事項だった。

 2月下旬、上海市浦東新区科学技術・経済委員会主任の李慧は、藍帆医療科創本社および産業化拠点プロジェクトの進度を注視していた。藍帆医療のプロジェクトは上海市における2023年度の191項目に及ぶ重点施工プロジェクトの1つだ。李慧はしばらく現場に足を運んでいなかったが、折につけ「工事の進捗はどうですか。作業員は増えましたか」と質問を投げかけていた。

 2月1日は旧正月の十日に当たっていたが、浦東新区ではこれまでの慣例を破り、旧暦十五日の元宵節前に2023年重大科学技術産業およびその付帯事業の集中契約兼着工式を敢行した。浦東新区科学技術・経済委員会副主任の張彤は、「浦東の科学技術産業への投資に関して、投資契約プロジェクトは早急に着工し、建設中のプロジェクトはピッチを速め、準備段階のプロジェクトは早期実現に努める」とし、「1カ月で契約を締結し、3カ月で用地供給手続きを開始し、6カ月で着工にこぎつける」との目標を掲げた。

 これが2023年の上海「経済自信強化」の取っ掛かりだった。1月末には10項目のアクション・32条の措置から成る「上海市自信強化・ニーズ拡大・安定成長・成長促進のためのアクションプラン」が公表され、重大プロジェクトの牵引作用を十二分に発揮し、調整メカニズムを整備し、重大産業プロジェクト、重大インフラプロジェクト、重大民生プロジェクトなどの早急な着工および建設を進めていくことが示された。

 市の191項目に及ぶ重点プロジェクトの投資総額は約1.7兆元で、うち科学技術産業プロジェクトが特に目を引く。上海市では、政府が投資主体となっているインフラ整備プロジェクトとは別路線の、集積回路、バイオ医薬品、ハイエンド設備などに民間投資が集まっている。

「まず投資構造が転換しなければ、経済構造の転換も進みません」。産業プロジェクトの意義について、上海市発展改革研究院副院長の馬海倩はこう話す。2023年の上海の科学技術産業イノベーション系の重大プロジェクト計画には、まさに投資構造の転換が反映されている。これらのプロジェクトの目標は、当期の「量」に留まらず、未来の産業発展の「質」、さらには持続可能な成長「エネルギー」も見据えたものになっている。

 浦東新区を例に挙げると、今年の第1弾として契約・着工した科学技術産業プロジェクトの投資総額は867億元に達する。「これらの投資は、今日のためではなく、明日、明後日の成長のためにおこなっているものです。したがって、なんとしてでもプロジェクトを実行にこぎつけることは、『経済真剣勝負』『経済自信強化』するための最重要措置だと言えます」と李慧は言う。

「これは本年の全区における重点業務で、中国共産党浦東新区委員会常任委員会の重点任務にもなっています」。李慧によれば、区共産党委員会および区政府はこれまで、浦東新区の投資促進業務はすべてプロジェクトを中心に展開し、節目節目でプッシュする方式で進めなければならず、プロジェクトの実行を早めることは、企業の技術成果の実用化を早めるサポートに他ならないと繰り返し強調してきたという。

 プロジェクトの着工・建設を早める取り組みの背後には、上海市が今年、投資促進において直面している課題がある。「この1年は非常事態とも言える年でした。コロナ禍は上海経済に未曾有の打撃をもたらしました」。中国共産党上海市委員会常任委員で常務副市長の呉清は今年1月の記者会見で語った。2022年、上海経済はV字回復を成し遂げることができたが、経済の持続的回復基盤はまだ不安定で、2023年に5.5%の成長目標を達成するためにはまだまだ努力が必要だ。

 直観的に言えば、成長とは、実行に移されたプロジェクトの数と資金の増加に現れるものだ。1月30日に招集された、2023年上海市投資促進指導グループ会議では、上海市長の龔正が、企業誘致成功数および投資金額の通年目標の達成に全力を尽くし、上海市全体の経済の好転に貢献しなければならないと強調した。

「投資促進とはつまり、固定資産投資という杭基礎を深く打ち込むと同時に、新たな契約プロジェクト数をどんどん増やすこと、この2つに他なりません」。上海市某区の投資促進部門担当者はそう語った。

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2022年5月18日、上海市松江区にある科大智能にて、生産ラインで用いられるロボットアームをテストする作業員。撮影/『中国新聞週刊』記者 田雨昊

 企業誘致のペースも例年に比べて速い。2023年が明けたばかりの1月9日、浦東新区では、海外へ赴き企業誘致活動をおこなっているチームが今年の初出陣を飾った。春節休暇がまだ明けやらぬ旧暦1月6日、浦東新区科学技術・経済委員会が音頭を取る別の企業誘致チームも日韓両国を訪問し、プロモーション・イベントを開催したり、企業や団体を表敬訪問したりした。対中投資への確信を深めてもらい、浦東新区にオフィスを構える日韓企業の本社が持つ対中ニーズを探ることが目的だった。

 浦東新区は2023年、95の企業誘致チームを海外に派遣し、企業誘致活動と「穏商」〔ビジネスを安定させること〕を同時進行させる計画だ。2022年は、上海に拠点を置く多国籍企業の地区本部が60カ所、外資の研究開発センターが25カ所増加した。だがその反面、外資企業の本部や研究開発部門も含め、上海を離れる企業があるのも確かだ。

 前述の投資の促進部門担当者は言う。「今年、企業や投資の誘致において注力する点は2つあります。1つは、『ゾウの群れを元いたところに移動させる』こと。大プロジェクト、大企業、それに『新たなサーキット』〔ビッグデータやメタバース、AIなど新技術によって生まれた新興産業を指す用語〕における配置です。一方で、アリの兵隊、つまり投資額がそれほど大きくない企業も逃してはなりません。現状は『ハエの足でも肉は肉』なのです」

 企業や投資の誘致のプレッシャーはいまや、市レベルから下層部へと段階的に広がり、個別の工業園区にまで至っている。「企業や投資の誘致は常に複数件を回転させながらおこなっていく必要があり、理想的なのは、10のプロジェクトで交渉をおこなう間に、10のプロジェクトを立案し、10のプロジェクトの建設を進めていくことができれば、土地や工場などの資源を最大限活用できます。なぜなら、プロジェクトを一旦中断または終了して次を立ち上げる際、土地や工場などはどうしても2~3年寝かせておくことになるからです」。新しい苗木を植え続けなければ、将来生産の元手になるものがなくなってしまうと、上海のある工業園区企業誘致部門担当者は言う。

 この担当者は、年明け以降、企業や投資の誘致活動のため、頻繁に国内出張に出ている。「区指導部は『ムチ』を片手に誘致の成果を監視し、かなり無理な指標を提示してきます。いまや上海市全体がプロジェクト受注に血眼になっている状態です。さらに各指標にはそれぞれ、完成を確保するという最低ライン・中間値・努力目標という3つの数字が付帯しています」

「上海の求心力」問題解決に取り組む

 外資誘致の要衝である上海にとって、ビジネス環境の最適化は、単なるスローガンではない。ビジネス環境の最適化をテーマに掲げた、1月28日開催の2023上海市ビジネス環境最適化建設大会では、中央政治局委員で上海市党委員会書記の陳吉寧が、「新しい道のり」においてビジネス環境の最適化を図ることは、国家戦略任務の重要な内容を十分認識することであり、世界におけるコアコンピタンスの内的需要を拡大することであり、当面、期待を安定させ、自信を強化するための鍵となる措置であるゆえ、市場化を鮮明な主旋律とし、法治化を基礎的な保障とし、国際化を重要な基準とし、ビジネス環境の最適化を各業務において確実に着実に実現させなければならない、と訴えた。

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上海市にある国家集積回路材料技術イノベーションセンターの結晶成長ラインで働く作業員。写真/新華社

 その後、「上海市がイノベーションを統合・強化することによる持続的なビジネス環境最適化アクションプラン」が公布された。上海市では2018年以降、ビジネス環境の最適化アクションプランが毎年発表されており、今回のバージョン6.0では、世界銀行の新たな指標体系を、ビジネス環境の最適化において重視していくことが打ち出されている。

 年明けすぐにプロジェクトの着工・建設速度を速めるためには、投資をめぐるソフト環境の最適化、つまり、建設工事プロジェクトの審査制度改革も関係してくる。上海市発展改革委員会副主任の阮青によれば、現在、建設工事プロジェクトの全審査日程は100営業日以下に短縮されており、社会投資プロジェクトに至っては、用地確保から着工までの平均審査期間が30営業日以下にまで短縮されている。

「企業側としては、行政審査はやはり気になる要素ですが、いまでは、プロジェクトの土地使用権を取得する前に各部門に予備審査を申請し、用地を確保した後は、予備審査を本審査に切り替える手続きをするだけでよいので、効率がアップしました」と、華勤技術股份有限公司副総裁の王志剛は言う。同社は上海市浦東新区の「グローバル研究開発センター」に、2024年の完成を目指してプロジェクトを建設中だ。

 現在、上海市では、市を挙げて「用地確保後即着工」を普及させている。以前は、企業が用地を確保した後、さらに一連の審査を経なければ着工できなかったが、いまは審査が前倒しになり、企業側は一旦公開入札を通じて用地を確保できれば、翌日にでも施工許可証が得られるようになった。

「用地確保後即着工」は、元々は重点プロジェクトのみに適用される制度だったが、いまでは正規のプロセスに取り入れられ、適用範囲も拡大している。「これは『注文型』サービス、即ち企業が必要とする場合に関連サービスが適用されるもので、強制ではありません」と金山区発展改革委員会の担当者は説明する。

「注文型」サービスは、以前に比べたら、ある種のイノベーションと言ってもいい。「地方が企業や投資を誘致する過程で、単純な優遇政策競争をする時代は終わりました。私たちは企業によりよいサービスを提供したいと願っています」。前述の金山区発展改革委員会担当者によれば、プロジェクト交渉の過程中、発展改革委員会をはじめとする政府部門は政策サービスチームを結成し、進出後に企業が受けられる優遇政策について、事前に細かく説明をおこなっているという。

 企業や投資の誘致は本来、工業園区や投資促進弁公室の担当で、発展改革委員会のような政府部門は、「後ろ盾」として企業の進出可否を決定する基準を設け、審査をおこなってきた。だがいまは、企業や投資の誘致の段階で政府部門が介入し、サービスを提供する。上記の担当者の説明によれば、「企業進出のハードルを設ける役割だったのが、いまは優良プロジェクトに対しては、複数部門で『注文型』サービスを提供している」ということだ。

 上海交通大学先進産業技術研究院戦略研究部主任で、上海零号湾創業投資有限公司総経理の張志剛は、サービス提供という観点から見ると、上海市の各階層政府はかなりよくやっている方だが、さらにピンポイントで高効率な企業ニーズとのマッチングが必要だと指摘する。「高効率な協力メカニズムは、一見雑然としているように見えますが、その実、常に成長を続ける1つのエコシステムなのです」。張志剛曰く、上海市にとって、ビジネス環境の最適化で最も重要なのは、効率の向上だ。それは協力効率に留まらず、上海進出を望む企業がより早く決定を下せるようサポートすることも含む。そしてそれは、求心力に直結する問題でもある。

 上海市は中国を牽引する都市であることから、世代交代のサイクルは早いほうが望ましい。「開拓時代はもはや過ぎ去り、人材を引き付けるには、都市環境を居住面でも仕事面でも快適にしていく必要があります。それはまた、ビジネス環境を最適化していくプロセスでもあるのです」

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2022年9月開館の張江科学会堂。写真提供/浦東新区

上海の危機感は「明後日」からきている

 ビジネス環境を最適化すると同時に、上海市は持続的に、産業エコロジーにおける優位性の確立に取り組んでいる。

 用地確保の過程で、劉文静はシビアな競争にさらされた。浦東新区は企業の進出を歓迎しているが、同じ区画を争うライバル企業は多い。主管部門の幹部に医学博士がおり、3度の口頭試問を経てようやく藍帆医療に土地が供給されることが決まったが、まるで「科挙」でも受けているかのようなプレッシャーがあった。

「上海では、マクロ戦略計画が設定されてからというもの、ミクロ面の執行も非常に厳格になり、それはプロジェクトの選定にも現れています。例えば、企業のニッチ産業における先駆性に注目するなどといったような基準が導入されています。これも上海のビジネス環境が市場化、法治化していることの現れでしょう。真に価値創造を軸にルールを制定、執行しているため、選定の過程で落とされた企業であっても、その姿勢は尊重するでしょう」と劉文静は語る。

「上海市は社会主義現代化建設のリーディングエリアとして、まず経済面でリードし、効果的な質の向上と合理的な量の増加を実現しなければなりません」。李慧によれば、昨年、浦東新区の一定規模以上の工業企業の総生産額は1兆3990億元だったが、浦東新区の産業用地や空間は限られている。そこで浦東新区は、イノベーションの発信源となり、世界のイノベーションセンターという優位性を十分に発揮して、産業ピラミッド全体のレベルを向上させる一方で、産業の空間配置に手を入れ、残存する産業空間を活性化・供給する制度を強化し、特に「新たなサーキット」や未来産業に焦点を当てて、特色ある産業園区を整備し、限りある産業空間をより質の高い産業に割り当てていく戦略を取ることにした。

「浦東新区では、優良プロジェクトである限り土地にも産業空間にも困ることはありません。優良プロジェクトに対しては、浦東新区はいま現在も今後もハードルを設けませんし、企業は成功がすぐそこにあると感じることでしょう」。李慧は、質の高い発展というものは、企業の数の他、産業の高度さにも現れると考えている。

 浦東新区の戦略は「第13次五カ年計画」の頃からすでに明確化しており、段階的に現在の「三大主導産業」「六大ハードコアテクノロジー」を理念とする現代化・開放型の産業体系を形成してきた。「第14次五カ年計画」期には、「新たなサーキット」と未来産業の比率を拡大する計画だ。これらの産業の発展を支援するため、科学技術・経済委員会は、電子情報産業処、AI・情報サービス業処、バイオ医薬品・新材料処などを下部組織として設置した。「専門家を専門の業務に配置しました。例えば、バイオ医薬品・新材料処には、医学や生物学の博士が大勢所属しています」と李慧は説明する。

 2021年9月に公布された「上海市先進製造業発展『第14次五カ年計画』」では、「三大主導産業」を、集積回路、バイオ医薬品、AIと明示した。また、電子情報、ヘルスケア、自動車、ハイエンド設備、先進材料、ファッション・消費財が「六大重点産業」に指定された。

 上海市長の龔正は、今年1月初頭に開かれた投資促進指導グループ会議の席で、企業誘致と投資拡大の的確性、実効性をさらに強化し、産業体系の現代化レベルの引き上げをさらに重視し、「かごを持って自ら野菜を選びに行き」〔=受け身の姿勢ではなく、地方政府自ら基準を設け進出企業を選抜すること〕、イノベーションの新動向を緊密に追い、上海の産業発展方向に合致する優良プロジェクトをよりピンポイントで引きつけ、新たなコアコンピタンスを形成するよう強調した。

 産業の方向性を明確にし、長期にわたる蓄積により産業エコロジーを形成していくというやり方は、企業に対する求心力という点では、優遇政策を講じるよりはるかに遠回りに思える。

 劉文静はこれについて、上海に優良な産業エコロジーが形成されていなければ、多くの企業を引きつけることもないだろうと話す。ハイエンド人材に対するアピール力以外にも、エコロジーには臨床資源の豊富さや管理者の専門性といった要素が含まれるが、こうした要素を集積するにはある程度の時間が必要であり、短期的に企業や投資の誘致の優遇政策を打ったからといって実現できるものではない。

 集積回路やバイオ医薬品などの業界では、すでに産業エコロジーの優位性が顕在化しているものの、上海市は依然として危機感を抱いている。「上海の強みは持続的なイノベーションですが、ある産業が成熟し、イノベーション力に対するニーズが低下すれば、上海を離れてしまう可能性があります。ゆえに上海では、大量の企業が進出すると同時に、成熟した産業においては、大量の企業が撤退しているという事実があります。それを踏まえて考えると、上海が中国全体の産業体系の中で担っている使命は、イノベーションとその技術移転、そして再び新たなイノベーションの方向性を探ることなのかなと思います」。張志剛は、上海市は何度もイノベーションを起こせる発信地となるべきだと考えている。

 上海はイノベーションを通じ、持続的に産業体系の頂点を制覇し続けていくことが必要だ。

「陳吉寧書記は着任後、イノベーションと産業発展に対し、それぞれ異なる要求を提示しました。陳書記は科学者であり、世界の最高学府で学び、研究し、指導した経験があります。イノベーションと産業発展に対する判断は正確かつ専門的で、上海市の官僚たちは、知識面でのパニックに陥りました」と、上海市のある科学技術畑の官僚は打ち明ける。

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張江AI産業集積区。写真提供/浦東新区

 昨年11月、上海市人民政府は、「上海市が創る未来の産業イノベーション高地と、壮大な未来産業グループ発展のアクションプラン」(以下、「アクションプラン」)を発表した。その記者会見の席で上海市は、国の「第14次五カ年計画」を実行し世界の先端技術動向をベンチマークし、市独自の産業的特色を掘り起こし奨励するため、立体的な政策を掲げ、未来産業の発展に全力を尽くしていくと述べた。「『3+6』新型産業体系が上海の産業の『今日』だとすれば、デジタル経済、低炭素、メタバース、スマートデバイスといった『新たなサーキット』の分野は『明日』、未来産業は『明後日』に当たります」と上海市経済情報化委員会主任の呉金城は説明する。

「アクションプラン」では主に、ヘルスケア産業、スマート産業、エネルギー産業、宇宙産業、材料産業の五大未来産業がフォーカスされており、2030年までに生産額約5000億元達成を目標にしている。新興産業分野の融合が進めば、上海の現代化産業体系建設がさらに一歩近づくと呉金城は言う。

「2022年発表の『5つの未来産業の方向性』では、現段階で重点的に注目すべき分野が示されただけでしたが、本当の意味での未来は定義できませんでした。しかしそれは、上海の果たすべき任務が追随から牽引に変わったことを意味しており、その過程で上海に与えられた役割に疑いの余地はありません」。上海はこれまで一貫して、中国国内産業の先鋒隊であり続けてきたため、産業発展の位置づけは他の地方とは異なるものにする必要があり、しかもより重要な責任を負う必要がある。昔のように、外資の資本を受け入れているだけではだめなのだ、と張志剛は言う。

「産業集積は自然に形成されるもので、多分野が融合・交差してこそ未来産業が生まれます。我々は行政計画の調整や投資などを含めた政策を利用することで、特定分野の産業集積区を設けることはできますが、そうしたやり方ではオープンなイノベーションは成し遂げられません」。追従から牽引へ移行したからには、ビジネス環境に支援と模索の力を持たせることが不可欠だと張志剛は指摘する。


※本稿は『月刊中国ニュース』2023年6月号(Vol.134)より転載したものである。