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【20-15】新型コロナ経済損失5.8~8.8兆ドル アジア開発銀行が予測修正

2020年5月25日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 アジア開発銀行(ADB)は、新型コロナウイルスによる世界の経済損失が何の対策もとらなければ5.8~8.8兆ドルに上るという新たな予測を5月15日に公表した。4月3日に公表済みの予測に比べ、損失額は倍以上に増えている。一方、個人所得や企業収益を補てんするなどの各国政府対応により損失額が30~40%削減され、4.1~5.4兆ドルまで引き下げられる、との見通しも示された。予測は4月3日に公表した予測と同様、パンデミックが3~6カ月で封じ込めるという前提にたっている。21日に記者会見した澤田康幸アジア開発銀行チーフエコノミストは、感染の第2波、第3波が来ても損失額が今回の予測値の2倍以上に膨れ上がることはない、との見通しを明らかにした。

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(ビデオ会議システムを利用した日本記者クラブ主催の記者会見で日本国内の自宅から新型コロナウイルス経済的影響について語る澤田康幸アジア開発銀行チーフエコノミスト)

 アジア開発銀行の予測は、4月3日の予測手法に国際貿易、生産、労働者移動、輸送面での悪影響などを加味した新しい手法によっている。発生が激化してから国が国内発生を制御下に置くのに必要な想定期間(封じ込め期間)を最低で3カ月、最大で6カ月とみて、それぞれ影響を予測し、経済損失などを算出している。3カ月で封じ込めた場合の経済損失は世界全体で5.8兆ドル(4月3日の予測は2.0兆ドル)。これは世界の国内総生産(GDP)の6.4%(同2.3%)に相当する。封じ込め期間が6カ月の場合は、8.8兆ドル(同4.1兆ドル)で、世界のGDPの9.7%(同4.8%)に相当する、としている。

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(澤田康幸アジア開発銀行チーフエコノミスト記者会見資料から)

 中国についてみると、封じ込め期間が3カ月の場合、経済損失は1兆830億ドル(GDPで7.5%減)、6カ月の場合、1兆6,234億ドル(同11.2%減)。これは米国よりは小さいがアジア太平洋地域の中では突出した額だ。米国は封じ込め期間が3カ月の場合、経済損失は1兆4,853ドル(GDPで7.1%減)、6カ月の場合、2兆2,264ドル(同10.7%減)と予測されている。

 感染者が多いイタリアやスペインを抱える欧州連合(EU)と英国を合わせた経済損失は米国、中国のいずれも上回ると予測されている。封じ込め期間が3カ月の場合、1兆7,190億ドル(GDPで7.7%減)、6カ月の場合、2兆6,104億ドル(同11.7%減)。日本は封じ込め期間が3カ月の場合、3,245億ドル(GDPで5.9%減)、6カ月の場合、4,910億ドル(同8.9%減)となっており、EUプラス英国、米国、中国に比べるとだいぶ少ない。

 これらの数字は、政府が何の対応もとらなかったと仮定した場合の予測値。アジア開発銀行は、各国で進められている新型コロナ対応についても調べデータベース化している。このデータベースを基に、個人所得や企業収益の損失を補てんする各国政府の直接支援策の影響がそれぞれの国の経済損失額をどれだけ軽減し得るかについても予測している。世界全体では封じ込め期間が3カ月の場合1兆7,011億ドル(GDPで1.9%)、6カ月の場合、3兆4,021億ドル(同3.7%)軽減が可能としている。結局、こうした政策効果を見込んだ経済損失は世界全体で封じ込め期間が3カ月の場合、4兆958億ドル(GDPで4.5%減)、6カ月の場合、5兆3,878億ドル(同5.9%減)となり、何の対応策もとらなかった場合に比べると30~40%圧縮できると予測している。

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(澤田康幸アジア開発銀行チーフエコノミスト記者会見資料から)

 中国の場合、政策により見込まれる損失軽減額は、封じ込め期間が3カ月の場合、2,493億ドル(GDPで1,7%)、6カ月の場合、4,966億ドル(同3.4%)。結局、政策効果を考慮した実質経済損失は、封じ込め期間が3カ月の場合、8.338億ドル(GDPで5.8%減)、6カ月の場合、1兆1,268億ドル(同7.8%減)に圧縮される。米国、EUプラス英国もそれぞれGDPで2.5~5.0%程度の政策効果による損失額の圧縮が予測された

 日本は、中国、米国、EUプラス英国のいずれよりも政策による損失軽減が見込まれるという予測が示されている。何の対策もとらなかった場合、封じ込め期間が3カ月の場合、3,245億ドル(GDPで5.9%減)になるところが1,274億ドル(同2.3%減)に減り、6カ月の場合も4,910億ドル(同8.9%減)から952億ドル(同1.7%減)に圧縮されるとされた。日本の政策効果が大きいとみなされた理由について澤田氏は、「政策の規模が大きく、かつ個人所得と企業収益の補てんにあてられる額が全体の70%と手厚いため」と説明した。

 各国の今後の取り組みについて澤田氏は、迅速なパンデミックの封じ込めが最重要だが、それが困難な場合、長引く経済封鎖などが金融危機につながり、経済の回復も長引く可能性があることも指摘した。所得補償や雇用保護が長期の悪影響を避けるために不可欠であることも強調している。

関連サイト

日本記者クラブ会見リポート「『新型コロナウイルス』澤田康幸・アジア開発銀行(ADB)チーフエコノミスト

同「YouTube会見動画

アジア開発銀行ニュースリリース「COVID-19の経済的影響は世界で8.8兆ドルに達する可能性--新しいADBレポート

アジア開発銀行「An Updated Assessment of the Economic Impact of COVID-191

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