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【18-004】中国医薬関連7機関、臨床研究振興を呼びかけ

JST北京事務所 2018年1月19日

 中国外商投資企業協会薬品研究製造・開発業界委員会、中国薬学会臨床評価研究専門委員会、北京大学アジア太平洋経済協力(APEC)監督管理科学卓越センター、北京大学臨床研究所、中国医薬企業管理協会、中国化学製薬工業協会、中国医薬保健品輸出入商会の7機関は、中国で臨床研究を振興し、医薬イノベーションのボトルネックを解消するよう呼びかけた。

 中国科技網によると、7機関は最近、「臨床研究システムの設計と実施を推進し、医薬イノベーションのエコシステムを築く」研究レポート(以下「レポート」)を共同で発表した。「レポート」に掲げられたデータによると、過去15~20年間、中国は医学分野に対する公的資金支援に、「基礎を重んじ、臨床を軽んずる」といった状況があった。2016年度NSFC(国家自然科学基金委員会)支援課題の例を見れば、採択された医学関連課題の95%が基礎医学であり、臨床研究への支援はわずか5%しかなかった。同様に、2016年度国家重点研究開発事業(863計画)が支援した生物医薬関連の7大分類299課題のうち、臨床研究はわずか13%しかなかった。政府系研究基金拠出の臨床研究費の比率を上げる必要がある。

 「レポート」によれば、臨床研究は医薬イノベーションエコシステムの中で最も重要な部分であり、臨床研究の能力と資源の問題を速やかに解決しなければ、中国の新薬産業の発展を少なくとも5~10年遅らせかねない。従って、国レベルで臨床研究の発展戦略を改善し、重視度を高め、臨床研究の能力向上を医療改革の目標の一つとして取り上げ、そして臨床研究発展の短期・長期目標を設けるべきだと提言している。

 「レポート」は、臨床研究の水準は民生とイノベーションに関係していると指摘している。多くの重症、慢性症の診療案作成に当たっては、臨床研究で中国人の科学データを集め、エビデンスに基づく医療を実施するための参考とし、これにより中国の診療レベルを次第に高めていく。さらに加えて、中国で多い重病(肝がん、胃がん、食道がん、B型肝炎など)に対するイノベーションが世界でも不足している中で、中国医学関係者の臨床研究手法を活かして対応策を探索していくという意味がある。

また、臨床試験は人体の中で薬の安全性と有効性を検証する唯一の方法として、新薬の開発を行うための必須な手段である。臨床研究は、中国医療のまだ満たされていないニーズを充足し、民生ニーズを満足させるための重要な取り組みであると言えるだろう。

 さらに「レポート」は、中国の臨床研究の水準を高める必要があるとも指摘している。2014~2016年間のデータ比較によれば、「ランセット」(The Lancet)誌、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(NEJM)誌および「米国医師会誌」(JAMA)に発表された中国発の論文数は米国の2.7%しかなく、国別ランキングは12カ国中、第9位だった。

 病院と医者を対象とする評価システムの設定などのために、病院や医者が臨床研究に熱意を持って取り組めない状況にある。一部の基礎研究は短い期間と少ない投資で、学術論文を発表することができる。一方、高レベルの臨床研究では、多額の支援が必要であり、試験実施に必要な時間も長く、そして研究者や補助者に対する要求も高いことが一般的である。この他、参与者が多いために、論文に署名できる機会が少なく、昇進に必要な論文発表数を達成しにくいなどの理由によって、研究者に研究へ参加する積極性があまりみられない現状がある。このため、臨床研究に取り組む医療機関と研究チームのためのインセンティブメカニズムの構築が急務となる。

 イノベーションをいっそう奨励し、臨床研究能力の向上を図るために、国の各部・委員会(省庁相当-訳注)は最近、一連の政策を打ち出し、関連の7機関も今後の戦略実施に当たる役割分担を更に明確にするよう政府に求め、共同で臨床研究のレベルアップに取り組み、中国の新薬産業発展へ協力する姿勢を示した。

 同「レポート」は、40数名のアドバイザーからの指導の下、7機関により共同作成された。


科技網 2018-1-9 http://www.stdaily.com/cxzg80/guonei/2018-01/09/content_619950.shtml