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【19-31】中国、韓国の高齢化日本を急迫 OECD報告書で明らかに

2019年11月20日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 最も短期間に高齢化が進んだ最長寿国、日本を中国、韓国が急速に追いかけている状況が、7日に公表された経済協力開発機構(OECD)の報告書「図表で見る医療2019」から読み取れる。報告書は日本、韓国などOECD加盟国に加え、中国など一部の非加盟国の医療をめぐる実情と30年後の見通しをさまざまなデータで示している。中国は日本の高齢化対応に関心が高い。既に日中間では民間も含めた介護サービス協力の動きが出ているが、今後、中国や韓国と高齢化に対応した協力の動きがさらに活発になりそうだ。

東アジアが高齢化著しい地域に

 報告書は、65歳以上と80歳以上の高齢者が総人口に占める割合が、2017年から2050年にどのように変化するかを国別で比較したグラフを示している。2017年時点で65歳以上の高齢者比率が最も大きいのは日本で、27.7%。2050年には約37%に高まると推定されている。80歳以上の割合は2017年には8.5%だったのが、2050年には約16%とトップは変わらない。

 一方、中国は、2017年に65歳以上は10.6%だったのが、2050年には26.3%と倍以上に増えると推定されている。80歳以上になるとその伸びはもっと激しい。2017年の1.8%から2050年には8.1%と4倍以上の増加が見込まれている。

 韓国の状況も、中国以上に変化が激しい。2050年に向けた高齢化のスピードは、日本をはるかにしのぐ。2017年時点で65歳以上の占める割合は13.8%だが、2050年には約37%の日本をわずかに上回り、OECD加盟国中トップになると見込まれている。80歳以上の割合は、さらに伸びが激しい。2017年には日本の8.5%よりはるかに低く、3.0%とOECD平均の4.6%も下回っていたのが、2050年には15.1%と日本(約16%)に次ぐOECD加盟国中2位に急上昇すると推定されている。

65歳以上                     80歳以上

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65歳以上、80歳以上の総人口に占める割合(%、白い○2017年、橙色の○2050年)

Source: OECD Health Statistics 2019, OECD Historical Population Data and Projections Database, 2019.

 認知症にかかっている人の割合も日本が1位を続けるとされている。2019年は1,000人当たり約25人だが、2050年には43.1人に増える。中国は2019年の1,000人当たり約8人が、2050年には現在の日本に近い24.3人に急増する。2019年に1,000人当たり約10人の韓国も、2050年には38.9人に急増すると見込まれている。

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人口千人当たり認知症の有病率推計(橙色棒グラフ2019年、橙色△2050年)

Source: OECD analysis of data from the World Alzheimer Report 2015 and the United Nations.

 日本の医療費については、高齢化と労働力の減少により財政圧迫に直面する可能性がある、と指摘されている。2018年または直近年で比較したGDP(国民総生産)比、国民一人当たりの医療支出のいずれも日本は、OECD平均を上回る。特にGDP比は10.9%とOECD加盟国中、6番目に高い(OECD平均は8.8%)。中国は、GDP比5.0%と日本の半分以下。国民1人当たりの医療支出も、日本の4,766ドルに対して688ドル(いずれも購買力平価)とだいぶ少ない。韓国も、GDP比8.1%、国民一人当たり医療支出3,192ドルと、中国よりは多いがいずれも日本、OECD平均以下だ。

医療費の家計支出に占める割合大きい中国、韓国

 ただし、日本の場合、医療支出のうち84%は公的財源によるものであるのに対し、中国は58%で、残りの42%が任意・自己負担となっている。医療支出の自己負担額が家計支出に占める割合にも、日本と中国の違いが見られる。日本の場合、2.6%であるのに対し、中国は4.5%だ。韓国も、医療支出に公的財源が占める割合は57%と中国とほぼ同じ。医療支出の自己負担額が家計支出に占める割合は、中国よりも大きく5.6%となっている。公的財源の割合が大きい日本が財政圧迫という問題を指摘されているのに対し、中国、韓国は医療費の個人負担が日本より大きいという問題を抱えていることが読み取れる。

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1人当たり医療費支出(2018年または直近年、米ドル購買力平価換算、濃い青色は公的財源、薄い青色は任意・自己負担)

Source: OECD Health Statistics 2019, WHO Global Health Expenditure Database.

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医療費支出GDP比(2018年または直近年、%、濃い青色は公的財源、薄い青色は任意・自己負担)

Source: OECD Health Statistics 2019, WHO Global Health Expenditure Database.

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医療の自己負担額の家計最終消費支出に占める割合(2017年または直近年、%)

Source: OECD Health Statistics 2019, OECD Accounts Database.

介護サービスで進む日中協力

 医療支出について、中国ではさまざまな動きが見られる。7月に科学技術振興機構中国総合研究・さくらサイエンスセンター主催の研究会で講演した澤田ゆかり東京外国語大学総合国際学研究院教授によると、中国で医療保険をはじめとする社会保障制度改革が本格化したのは胡錦濤政権(2002~2012年)時代になってから。医療保険では都市で働く企業就労者と自営業者を対象にした企業従業員基礎医療保険は黒字だが、農村住民などを対象にした住民基礎医療保険は赤字といった問題を抱えているという。

 一方、改革の特徴である「商業保険との共存」「社会保障事業の民間委託」「民間からの資金調達」を目指す動きも活発になっている。2012年に民間の保険会社を想定した介護保険の実験が青島市で行われ、2016年からは15の都市でモデル実験が進んでいる、といった試みだ。

 介護に関しては、9月26日に東京で経済産業省と中国国家発展改革委員会共催の「第2回日中介護サービス協力フォーラム」が開かれている。日本の企業を含む多くの関係者が集まった。日中両国は既に昨年10月に北京で1回目の日中介護サービス協力フォーラムを開催している。きっかけは、昨年5月に東京で行われた安倍晋三首相と中国の李克強首相との首脳会談。両首相は、急速な少子高齢化への対応の中での新たな協力分野を開拓することで一致した。この首脳会談では世耕弘成経産相(当時)と何立峰中国国家発展改革委員会主任が「サービス産業協力の発展に関する覚書」に署名している。この時、日中介護サービス協力フォーラムの開催が世耕経産相から提案され、北京での第1回フォーラム開催につながった。

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第2回日中介護サービス協力フォーラム(9月26日、東京国際展示場)

 9月に東京で行われた2回目のフォーラムでは、郝福慶中国国家発展改革委員会社会司副司長が講演し、中国が対応を急がざるをえない状況にあることを詳しく紹介している。郝氏によると、2000年に1億2,600万人だった60歳以上の人口が2018年には2億4,900万人に増加した。総人口に占める比率も10.2%から17.9%に増え、この増加率は世界平均の倍以上。2017年時点で60歳以上の総人口に占める割合が世界一高いのは日本(33.4%)だが、30年後には中国も今の日本と同様の高齢化社会になる、という。

 昨年の第1回フォーラムでも、介護サービス・福祉用具にかかわる協力について11の覚書が日中間で取り交わされている。第2回フォーラムでは、新たに11の覚書が新たに取り交わされた。この中には、日立(中国)研究開発有限公司と清華大学が、健康養老分野での日中の比較研究を行い、中国の認知症に関する課題解決策を共同開発することなどが含まれている。

関連サイト

OECD「Health at a Glance 2019 OECD INDICATORS

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