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【24-42】「親しみ感じない」73.1%に増加 日本人の中国に対する意識調査

小岩井忠道(科学記者) 2024年11月27日

 中国に親しみを感じる日本人は7.3%と昨年に比べ1ポイント減り、親しみを感じない日本人が73.1%と昨年より2.1ポイント増えていることが、笹川平和財団笹川日中友好基金の調査で明らかになった。一昨年と同じかほぼ同じ比率に戻っていることを示している。現在の日中関係を良好だと思わない日本人も、昨年、前年を5ポイント下回る70.2%に減っていたのが、今回は75.5%と一昨年を上回る比率に増えている。

<経年比較>親近感

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(「日本人の中国に対する意識調査2024」(笹川平和財団)を加工して作成)

 11日に結果が公表された「日本人の中国に対する意識調査2024」は、日本国内在住の15歳~89歳の男女3000人を対象に、今年8月19~25日にインターネット調査法で実施された。中国との付き合い方や日中関係の変化などに加え、韓国、台湾、米国に対する親近感や関心度についても調べている。

親近感台湾63.5%、米国49.3%、韓国26.4%

 それぞれの国・地域に親しみを感じるかを聞いた質問項目に対し「親しみを感じる」と「どちらかというと親しみを感じる」を合わせた答えが最も多かったのは台湾の63.5%。次いで米国49.3%、韓国26.4%と、中国7.3%の数値の低さが目立つ。「親しみを感じない」「どちらかというと親しみを感じない」を合わせた答えも韓国48.8%、米国18.5%、台湾15.5%と、こちらも中国の73.1%が突出して高い。

 それぞれの国・地域に対する関心度を尋ねた質問に対する答えにも大きな差がみられる。「とても関心がある」「どちらかというと関心がある」を合わせた答えが最も少なかったのは中国で26.4%にとどまる。「全く関心がない」「どちらかというと関心がない」を合わせた答えも51.7%と半数を超えた。最も関心が高かったのは米国で「とても関心がある」「どちらかというと関心がある」を合わせると61.5%(「全く関心がない」「どちらかというと関心がない」を合わせた答えは16.0%)。次いで台湾が56.1%(同19.9%)、韓国が37.2%(同39.1%)と、いずれも関心は中国より高いことを示している。

日中関係良好とみるは3.3%

 4カ国・地域それぞれと日本との関係を尋ねた結果からも日中関係を厳しくみる日本人の多さが目立つ。日中関係を「良好だと思う」「どちらかといえば良好だと思う」を合わせた比率はわずか3.3%。「良好だと思わない」「あまり良好だと思わない」を合わせた比率は75.5%に上る。「良好だと思う」「どちらかといえば良好だと思う」の答えが63.7%の日台関係、同じく51.9%の日米関係との差は特に著しく、「良好だと思う」「どちらかといえば良好だと思う」が19.3%、「良好だと思わない」「あまり良好だと思わない」が43.4%の日韓関係に比べてもだいぶ差がついている。

 さらに、それぞれの国・地域のメディアによる日本に対する報道をどの程度信頼しているかを聞いた質問に対する答えにも、これら3カ国・地域と中国で大きな差が見られた。中国に対しては「信頼している」「どちらかというと信頼している」を合わせた答えがわずか5.8%。「全く信頼していない」「あまり信頼していない」を合わせると77.8%に上る。台湾(「信頼している」「どちらかというと信頼している」53.4%、「全く信頼していない」「あまり信頼していない」25.1%)、米国(同じく47.4%、34.1%)、韓国(同じく17.8%、63.8%)との違いは大きい。

<経年比較>日中関係

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(「日本人の中国に対する意識調査2024」(笹川平和財団)を加工して作成)

 中国に関する数多くの調査項目に対する答えにこの2年間で見られた変化も目を引く。「日中の政府間の関係が10年前に比べて悪くなった」という調査項目に「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」を合わせた答えは、昨年の43.4%から38.4%に減った。「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」を合わせた答えも10.1%から12.5%に増えている。「10年前に比べ、中国は国際社会に対して横柄な態度をとるようになった」という調査項目に対する答えも、「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」が昨年の55.0%から54.4%とわずかとはいえ減り、「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」が7.2%から8.6%に増えている。

日中の政府間の関係は、10年前に比べて悪くなった

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(「日本人の中国に対する意識調査2024」(笹川平和財団)を加工して作成)

経済分野での中国重視も減少

 一方、「日本の経済を維持・発展させるためには、中国との付き合いはどうしても必要だ」に「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」は45.4%から42.5%に減り、「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」が13.3%から16.8%に増えている。「中国は10年前に比べて、より開放的な社会に変わった」に「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」も昨年の15.8%から14.9%に減り、「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」が42.8%から44.1%に増えている。

日本の経済を維持・発展させるためには、中国との付き合いはどうしても必要だ

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(「日本人の中国に対する意識調査2024」(笹川平和財団)を加工して作成)

平和維持関連でも変化

 「平和を維持するために、日本政府は中国政府とより緊密な関係を結ぶ必要がある」についても「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」は昨年の33.4%からわずかとはいえ33.2%に減り、「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」が昨年の16.2%から19.8%に増えている。「さまざまなリスクを考え、中国との付き合いは最低限にしておく必要がある」(39.7%から43.8%)、「中国は軍備を増強しているため、日本はこれに対抗しないといけない」(30.3%から33.1%)、「中国に忖度して台湾との交流や往来を制限する必要はない」(51.2%から53.6%)、「現在の米中対立にあって、日本はアメリカ側に就くべきである」(41.5%から43.0%)という調査項目に対し、「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」が、いずれも増えているのも目を引く。

平和を維持するために、日本政府は中国政府とより緊密な関係を結ぶ必要がある

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(「日本人の中国に対する意識調査2024」(笹川平和財団)を加工して作成)

中国に対する調査結果にみられる2022~2024年度の回答(%)
(笹川平和財団「日本人の中国に対する意識調査2024」、「日本人の中国に対する意識調査2023」、「日本人の中国に対する意識調査の結果について(2022年度)」から加工して作成)
調査項目 2024 2023 2022
親近感
「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」
「親しみを感じない」「どちらかというと親しみを感じない」
 
7.3
73.1
 
8.3
71.0
 
7.3
73.7
関心度
「とても関心がある」「どちらかというと関心がある」
「全く関心がない」「どちらかというと関心がない」
 
26.4
51.7
 
29.1
48.2
 
28.5
48.7
地域のメディアによる日本に対する報道をどの程度信頼しているか
「信頼している」「どちらかというと信頼している」
「全く信頼していない」「あまり信頼していない」
 
5.8
77.8
 
7.3
76.4
 
3.7
76.1
日中関係
「良好だと思う」「どちらかといえば良好だと思う」
「良好だと思わない」「あまり良好だと思わない」
 
3.3
75.5
 
3.4
70.2
 
1.7
75.2
中国や日中関係の変化:中国は10年前に比べて、より開放的な社会に変わった
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
14.9
44.1
 
15.8
42.8
 

中国や日中関係の変化:日中の政府間の関係は、10年前に比べて悪くなった
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
38.4
12.5
 
43.4
10.1
 

中国や日中関係の変化:10年前に比べて中国系の人との付き合いや接触が増えた
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
26.5
26.4
 
26.5
23.9
 

中国や日中関係の変化:この10年で、日本と中国の国力の違いは大きくなった
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
45.3
12.0
 
49.8
9.3
 

中国や日中関係の変化:10年前に比べ、中国は国際社会に対して横柄な態度をとるようになった
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
 
54.4
8.6
 
 
55.0
7.2
 
 

中国との付き合い方:さまざまなリスクを考え、中国との付き合いは最低限にしておく必要がある
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
 
43.8
15.9
 
 
39.7
16.0
 
 

中国との付き合い方:日本の経済を維持・発展させるためには、中国との付き合いはどうしても必要だ
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
 
42.5
16.8
 
 
45.4
13.3
 
 

中国との付き合い方:平和を維持するために、日本政府は中国政府とより緊密な関係を結ぶ必要がある
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
 
33.2
19.8
 
 
33.4
16.2
 
 

中国との付き合い方:中国は軍備を増強しているため、日本はこれに対抗しないといけない
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
 
33.1
18.7
 
 
30.3
20.2
 
 

中国との付き合い方:中国に忖度して台湾との交流や往来を制限する必要はない
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
53.6
11.8
 
51.2
11.2
 

中国との付き合い方:現在の米中対立にあって、日本はアメリカ側に就くべきである
「全くそう思う」「どちらかというとそう思う」
「全くそう思わない」「どちらかというとそう思わない」
 
43.0
8.5
 
41.5
8.6
 

日中関係の取り組み主体
「政府間の取り組みが重要な役割を担うべき」「どちらかというと政府間の取り組みが重要な役割を担うべき」
「民間の取り組みが重要な役割を担うべき」「どちらかというと民間の取り組みが重要な役割を担うべき」
「政府と民間の取り組みはどちらも重要な役割を担うべき」
 
48.1
 
15.0
 
33.8
 
45.9
 
16.4
 
34.8
 
46.4
 
15.3
 
34.5
日中間の民間交流
「十分に行われている」「どちらかと言えば十分に行われている」
「十分に行われていない」「どちらかと言えば十分に行われていない」
 
10.7
28.2
 
9.4
31.0
 
7.4
37.3

他調査でも厳しい対中国観

 日本人の中国に対する見方については、内閣府が今年1月に公表した「外交に関する世論調査」結果でも厳しい数値が示されている。全国18歳以上の日本国籍を持つ3000人を対象に昨年9~10月に郵送法で実施された調査だ。中国に「親しみを感じる」あるいは「どちらかといえば親しみを感じる」と答えた日本人は前年に比べ5.1ポイント減り12.7%となっている。毎年実施されているこの調査に主要国・地域に対する親近感を問う調査項目が入ったのは1978年からだが、12.7%はこれまでで最少。「親しみを感じない」あるいは「どちらかといえば親しみを感じない」と答えた日本人も86.7%と前年に比べ4.9ポイント増え、こちらも過去最多となった。

 また昨年10月に日本の特定非営利活動法人「言論NPO」が公表した中国の海外向け出版発行機関である中国国際伝播集団の日中共同世論調査結果(日本側の調査は昨年9月実施)によると、中国に対しよくない印象を持つ日本人が前年の87.3%からさらに増えて92.2%に上る実態が明らかにされている。日中関係を「重要」「どちらかといえば重要」と考える日本人も65.1%と前年の74.8%から大きく減少している結果も示されていた。

経済関係強化重視の調査結果も

 では日中関係はどうあるべきか。「日本人の中国に対する意識調査2024」は日本と中国の関係を進展させるために有効な取り組みをどう考えるかについても尋ねている。選択肢の中から3つまで選んでもらうという方法をとっている。「日本と中国の経済関係の強化」の回答が2022年の24.0%から昨年は28.7%、さらに今回は29.7%と増加傾向にあるのが目を引く。「お互いの歴史認識における和解の実現」は2022年の32.5%から昨年は26.2%に減少したが今回は31.7%に増加した。一方、昨年20.7%から26.3%に増えた「国家首脳の定期的相互訪問」、同じく21.8%から28.9%に増えた「文化・芸術をはじめとするさまざまな分野の交流の促進」、15.2%から19.6%に増えた「気候変動対策や感染症対策など地球規模の問題に対する相互協力の促進」は、いずれも今回それぞれ25.6%、27.5%、17.6%に数字を落としている。

日中関係進展のための有効な取り組み(2022~2024年回答結果 %:3つまで選択可)
(「日本人の中国に対する意識調査2024」(笹川平和財団)を加工して作成)
取り組み 2024 2023 2022
日中両国間の政治・安全保障関係の強化 33.5 33.1 33.3
文化・芸術をはじめとするさまざまな分野の交流の促進 27.5 28.9 21.8
日本と中国の経済関係の強化 29.7 28.7 24.0
国家首脳の定期的相互訪問 25.6 26.3 20.7
お互いの歴史認識における和解の実現 31.7 26.2 32.5
気候変動対策や感染症対策など地球規模の問題に対する相互協力の促進 17.6 19.6 15.2
諸外国における紛争や災害発生等の相互協力の促進 12.9 14.1 14.3
その他 2.8 2.1 4.9
わからない 26.5 26.8 26.1

教育分野の交流促進望む増加

 民間交流についての質問項目に関しては「十分に行われていない」「どちらかと言えば十分に行われていない」を合わせた答えが28.2%と、「十分に行われている」「どちらかと言えば十分に行われている」を合わせた10.7%を上回っている。ただし、十分に行われていないとする答えは2022年の37.3%、2023年の28.2%と減り続け、十分に行われているとする答えは2022年の7.4%、2023年の9.4%と増え続けている。

 日中間の民間交流はどの分野で促進すれば良いと考えるか、選択肢の中から3つまで選んでもらう調査の結果は、「交換留学など教育分野における交流」2022年の17.1%、2023年の22.8%から今回は23.4%に、「文化・芸術分野の交流」も2022年27.6%、2023年34.2%から34.8%といずれも増えた。また、「訪日旅行・訪中旅行の促進」は2022年の19.6%から昨年は22.8%「スポーツ交流」は同じく11.4%から15.6%それぞれ増えたものの、今回は16.2%と14.3%にそれぞれ減少している。

促進すべき日中間の民間交流分野(2022~2024年回答結果 %:3つまで選択可)
(「日本人の中国に対する意識調査2024」(笹川平和財団)を加工して作成)
交流分野 2024 2023 2022
友好・親睦を目的とした交流 45.6 47.3 45.9
文化・芸術分野の交流 34.8 34.2 27.6
さまざまな分野の専門家間の交流 31.2 35.9 33.5
環境問題に関する交流 27.0 30.4 27.3
交換留学など教育分野における交流 23.4 22.8 17.1
訪日旅行・訪中旅行の促進 16.2 22.8 19.6
スポーツ交流 14.3 15.6 11.4
その他 1.8 1.6 2.7
わからない 14.5 9.8 15.6

関連サイト

笹川日中友好基金「日本人の中国に対する意識調査2024

笹川日中友好基金「日本人の中国に対する意識調査2023

笹川日中友好基金「日本人の中国に対する意識調査の結果について

内閣府「『外交に関する世論調査』(令和5年9月調査)概略版

言論NPO「中国人の半数を超える人が、世界で核戦争が起きると回答。その理由はロシアのウクライナへの対応 ―第19回日中共同世論調査結果を公表しました

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