【24-39】中国農業科学院、危険にさらされた植物が「助けを求める」メカニズムを解明
馬愛平(科技日報記者) 2024年04月30日
中国農業科学院農業資源・農業区画研究所の農業微生物資源チームは、植物が病原菌の攻撃を受けた際に「救助シグナル」を発し、根圏のプロバイオティクスを「募集」して救助されるメカニズムを解明した。関連論文はこのほど、「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
植物は、病原菌のような外部からの脅威にさらされた際、根圏(根とその周辺環境)の有益な微生物を呼んで、保護的な「バリア」を形成する。植物にとってこのバリアは、病害から自分を守るだけでなく、生長を促すものにもなる。この現象は「助けを求める(cry for help)」反応と呼ばれている。しかし、どのようにして病原菌のシグナルを模倣して、病気の発症を防ぎながら「助けを求める」のかについては、このメカニズムを研究している科学者にとって、長年にわたる悩ましい難題だった。
論文の筆頭著者で同研究所研究員の劉雲鵬氏は「われわれのチームは、一連の改良により、病気が発症しないようにした細菌を使って病原菌の攻撃をシミュレーションした。研究では、このような害のない細菌を使っても、植物が『助けを求める』シグナルを発し、根圏に大量のプロバイオティクスを「募集」することに成功した。この誘導効果は、数周期にわたる栽培期間中もずっと続き、植物を保護し続けることが分かった」と説明した。
研究チームはさらに、植物が「助けを求める」シグナルを発した時に、Wautersiaと呼ばれる微生物が速やかに反応し、根圏で大量繁殖することで「バリア」を作って植物を保護することを解明した。また、Wautersiaの鞭毛中のペプチド成分が、植物の「助けを求める」反応をさらに促し、植物と微生物の相互作用を強化することも分かった。この相互作用は、植物の生長と健康にとって非常に重要な意義がある。
劉氏は「この発見は、植物と微生物の間の複雑な相互作用メカニズムを解明しただけでなく、新たな植物保護戦略の開発の基盤も提供している。科学者は今後、害のない細菌やその有効成分を利用して『植物用ワクチン』に類似した製品を開発し、植物が病原菌に接触していない状況下でも、根圏に強力な『微生物防御システム』を構築できるようになるかもしれない」と見解を述べた。
※本稿は、科技日報「植物遇险"呼救"机制揭秘」(2024年3月22日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。