北京便り
トップ  > コラム&リポート 北京便り >  File No.22-042

【22-042】【大学】過去10年における大学の科学技術科学技術イノベーションの実績

JST北京事務所 2022年08月12日

 教育部は7月19日に記者会見を行い、過去10年間(2012年開催した共産党18大以降)において、中国国内の大学が科学技術イノベーション創出において遂げた実績などを紹介した。以下その要旨をまとめる。

教育部科学技術・情報化局雷朝滋局長による全体説明

 大学は国のイノベーションシステムの重要な構成として、過去10年に、中国の教育、科学技術と経済社会の発展を支えてきた。この間の大学の実績は主に以下のとおりである。

1.総合実力が顕著に高まり、科学技術イノベーションが新しい段階に邁進

 イノベーション基盤の整備において、この10年間に新設された国家重点実験室と国家工学研究センターのうちそれぞれ60%と30%が大学に設置されたほか、教育部主催の25のフロンティアサイエンスセンター、14の難関攻略プラットフォーム、38の国家級共同イノベーションセンター、及びその他研究拠点1,500超が大学に集まった。

 人材確保・育成において、中国科学院・中国工程院院士の40%超と国家傑出青年科学基金獲得者の70%近くが大学所属となっているほか、数百万人の修士・博士課程卒業者を育てた。

 イノベーション資源の集約において、大学対象のR&D経費が768.7億元/年から1,592億元/年に倍増し、10年間の総額が1兆元を超えた。企業・事業単位(政府系機関)からの受託研究費も2012年の391.8億元から2021年の847.5億元に116%増加。さらに、R&D人員のFTE換算は20.9万人年から33.4万人年に増えた。

 国際協力において、過去10年に大学から、国際科学技術共同研究参加で40万人、国際学術会議参加で174万人が派遣された。その他、国際熱核融合実験炉(ITER)、国際深海掘削計画(ODP)等への参与、Deep-time Digital Earth(DDE)の主導などを通じて海外高レベルな大学と研究機関と幅広く高度な国際協力の推進、70を超える国際共同実験を設立するなど国際協力拠点の整備にも尽力。

 研究成果の実用化において、大学出願の特許権取得は2012年6.9万件から2021年の30.8万件に、対出願の取得率は同65.1%から83.9%に、特許の譲渡・許可件数は同2,000余件から15,000超に、特許移転料は同8.2億元から88.9億元に増加。

2.イノベーション創出能力が顕著に増強し、科学技術の自立自強を支える

 ①基礎研究を強化しつつ、量子異常ホール効果の観測、キㇻルスピロ配位子骨格構造の発見、新型メソ多孔質触媒の創製、76フォトンの量子計算機プロトタイプの製造、最高精度の引力常数G値の測定、世界最軽量なマグネシウムリチウム合金の開発など重要成果の多数産出。

 ②神舟号宇宙飛行船、北斗衛星測位システム、太陽観測実験衛星、高速鉄道、C919大型旅客機、香港・珠海・マカオ大橋建設、ペブルベッドモジュール式高温ガス炉など国にとって重要なプロジェクトへの貢献。

3.民生、経済社会の発展推進に貢献

 ①医療保健において、世界初の胚胎着床前遺伝学診断法の確立、人感染H7N9インフルエンザの新規疫病発生対策における重要なブレイクスルー、新型コロナウイルスに関する検測キットや抗コロナ抗体薬、ワクチン開発などの取り組み。

 ②食糧安全・農村振興支援において、大学による農村振興に向けた科学技術イノベーションアクションを実施して、農業・農村分野における重点研究開発計画の40%を担当し、農村地域の貧困脱出へ大きく貢献。

 ③教育部と地方とのコミットに基づく、地域イノベーション駆動型発展戦略。北京における集積回路、脳科学などに関する新型研究開発機関や学科横断型プラットフォームの共創、上海における人工知能、「超限製造」などに関する重大特定プログラムの共同運営等。

 ④北京冬季五輪大会支援において、ジャンプ台、スピードスケート場の設計・運営、電気シャトルバスの耐寒対策などを強力にサポート。

4.イノベーション推進の確保に向けた学術基盤の改善

 ①科学技術体制を改革し、研究者の負担を軽減。

 ②評価制度改革を深化し、大学にて、イノベーション創出の品質、能力と寄与度を中心とする評価志向を徹底。

 ③科学者精神を発揚し、新時代のイノベーション文化を創出。

北京大学・清華大学の副学長による大学個別の取り組み・実績紹介

.北京大学:基礎研究を本として、学際研究を大いに推進、組織的な科学研究を持続的に強化するという科学技術イノベーションシステムの構築に取り組む。

1.世界科学技術最先端に向けた基礎研究、学際研究、創造的イノベーションの創出を実施。理数、化学、生物などの基礎学科への支援を強化しながら、応用・問題解決志向の基礎研究にも注力してきた。

2.国の重大な需要に向けた組織的な科学研究の強化、イノベーションシステムの持続的改善、コアとなる要素技術のブレイクスルー加速に取り組んできた。

3.世界一流基準に向けた体制制度改革の深化、研究チームの育成、イノベーション型人材集約の新拠点づくりを推進してきた。

.清華大学:科学研究の創造的成果を国の発展需要と密に合わせるよう、科学技術研究開発、人材育成、イノベーション能力増強を有機的に結び付けさせている。研究成果では、2012年以降の国家科学技術賞の受賞総数・一等賞数別に、いずれも全国大学の中でトップを占めている。

1.基礎研究では、世界トップレベル人材の引き付け、世界科学技術最先端に向けたイノベーション創出へのチャレンジ、国家重大科学技術基盤の共創に取り組んできた。

2.コアとなる要素技術のブレイクスルー実現にむけて、リーディング企業との戦略的協力事業、産学融合特定事業を精力的に実施し、重大な研究プロジェクトを企画・運営してきた。

3.民生への寄与において、新型コロナ禍発生以来、ウイルス検測、治療、予防対策の多次元から施策を取り、緊急使用許可を得た中国初の新型コロナウイルス抗体薬、45分間で完成可能な快速PCR検査移動実験室、世界初の新型コロナウイルス転写複製メカニズムの発見・再構築など多数の成果を遂げた。

地方を代表する江蘇省の実績紹介

1.人材育成において、「333プロジェクト」、「江蘇特別招へい教授プログラム」など人材事業を実施し、国・省・大学の三段人材構造体系の構築に取り組んだ。2021年末現在、

 ①省内大学に所属する科学技術人材の数は9.2万人、2012年より50.8%増加。

 ②省内大学所属の両院(中国科学院・中国工程院)院士は79人、国家ハイエンドな人材は1,800余人、全国大学の10%を占める。

 ③省内大学が過去10年に取得した省レベル以上の科学技術賞は4,612件、うち、国家科学技術賞が251件、教育部主催大学研究優秀成果賞が573件。

2.科学技術イノベーション推進において、科学技術による問題解決の能力向上にフォーカスし、大学発のイノベーション拠点・基盤整備の推進に取り組んできた。現在、

 ①省内大学に各種研究拠点(基盤)は7,000ヶ所超、うち国家級重点実験室など69ヶ所。

 ②国家大学サイエンスパークは20ヶ所、10年前より2倍近く増加。

 ③省内大学がここ10年に科学技術経費を合計1,880億元獲得し、(うち、企業・事業単位からの研究委託費が732億元、1年あたり10%増)、2021年の科技経費は285.49億元、2012年より2.4倍増。

3.経済社会への貢献において、材料科学、情報科学、製造科学などの分野における前向き研究を推進し、伝統産業のグレードアップと戦略的新興産業の振興に拍車をかけてきた。また、エネルギー科学、生態科学、環境科学、および深海・宇宙・極地などの分野における研究探索の推進を通じて、民生の改善と持続的発展に向けた重要なネック課題の解決に堅実な基礎を固めた。

4.研究成果の技術移転において、省内大学に25の国家技術移転パイロット機構、10の校内技術移転拠点、16の国家知的所有権モデル大学、そして10の大学発国家知的所有権情報サービスセンターが整備され、これらはいずれも全国で最多となった。また、大学発特許の譲渡数が2017年以降3年連続で全国1位を保ち、技術取引の成約数と実行額が2017年の18,661件と82.3億元から、2021年の27,009件と124.81億元に伸びた。

関連記事

教育部召开"教育这十年""1+1"系列发布会⑧介绍党的十八大以来高校科技创新改革发展成效】 教育部 2022-7-19